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🇯🇵夢/嘘つけ!
OLパロ
書きたいものだけ書いてるので全てがおかしいです、不思議ですね
「私、貴方の事結構好きですよ」
と。軟派者は、開き直った細面でそう告げた。
それを(夢主)は対して気にせず、いつものことね⋯と聞き流した。
今月、3回目の飲み会である。
1度目は(夢主)からの誘いかけだった。少し酔いたいから、久しぶりにあのバーの燻製ピーナッツが食べたいから。涙声でやっと口に出した強がりを、彼は。菊は、それ以上深堀せずに酒盛りに付き合ってくれた。
こんなしんみりして、優しい夜のような言い方をしたが⋯その後は地獄絵図だった。愚痴が飛び交うカウンター席、バーテンダーの冷たい視線。
閉店時間まで飲み明かし、フラフラの千鳥足で会計合戦。店員さんの青筋が今でも思い浮かぶ。
店を出ても、「なんだか飲み足りないれすね🎶🎶」と彼が言うので、コンビニでツマミと缶チューハイを買い込んで、公園のベンチにて二次会をセッティングした。 余談だが、その時チャレンジした燻製チーズが凄く美味しかったので、今でも自宅の冷蔵庫にセッティングしてある。
翌日は凄い頭痛と吐き気に押しのけられ、花壇の1歩手前でぶっ倒れたのは思い出したくもない悪夢だ。
2度目は彼からだった。
貴方との飲みは、余計に気を回さなくて楽だった。とても楽しかったし、良かったらもう一度。今度は節度を持って⋯飲み直さないか、と。
しかし羽目は外れた。そういう天性の才能を持っているのかもしれない、と言うくらいには彼らは飲兵衛だったし、運が良かった。
簡潔に言えば、全てチンチロハイボールのせいだった。
感じの良い、ヤケ酒に至らなさそうな⋯こう、兎に角品が良くて、あくまで嗜みです、というような店を探した2人だったが、「華金限定!ヒフミ出せばハイボール1杯無料!連続挑戦も可能!」の外看板に目を奪われ、すたこら居酒屋の店内に入ってしまったのだ。
全く、流されやすいことこの上ないが、結果は上場、勝ちまくり。
ゲーム内のカジノで全負けした(夢主)でさえ、ヒフミ祭りを興していた。
「本田さん、私、FXやったら食べて行けるかもしれないです⋯ふふ」
「ちょ、株買います、株。任※堂買います、買っちゃいますからね、えー。ウン、そうだな⋯100株行きます100株」
「そこはホ※ダじゃないんですか」
「今Sw※tch2の予告動画出てるでしょ、見ました?あれで多分上がりますよ、今後。期待値MAXですから」
FXも株も、カジノやチンチロとは全く違うもんだが⋯彼らは楽しそうに投資について語り明かした。
よくよく考えれば、ヒフミなんか出せば即負け最弱決定戦のようなものなのだが。とことん運の無いふたりが揃ったことで、こう⋯嫌な奇跡が起こったようだった。
しかし、調子に乗らなければよかったのかもしれない。
ふたりは交互に投じていた。逆不運のせいで出まくり⋯というのは先程にも記した話だが、「ハイボールなんて自分であんまり選ばないから新鮮です」「もう飲めるだけ飲みましょう」「カラカラ⋯ふふ、おいじいがも⋯」等の会話で意味無く盛り上がり、結局菊4杯に(夢主)3杯の暴挙にまで至った。
折角買った株も、売った翌日に上値を追ったので、当時の菊は「死にてぇ⋯」としか言えなかったらしい。
そして今回。
これも菊からの案内であった。
会社の喫煙所で、虚ろな目でボックス内の北側の角をじっと見つめながらのお話である。
(夢主)は南側に居た。視線も合わない、声もどこか上擦っているので、噫(あぁ)この人は無理をしているのね、と早合点して、怪しい会話を終わらせた。
どうせ上司さんに人より仕事を多く任されたんでしょう、貴方がよく働くから、頼りに思ってくれてるのよ⋯と。
確か前々回に言った言葉だった。
しかし、菊の部署はとてもクリーンだし、裏話の隙が無い立派な上司が点在している。 なので彼女は同情でも上司への憤激でもなく、励ましの言葉を与えるのが1番だとわかっていた。
マァ、なんの言葉をかけても、結局酔っ払えば全て忘れるので、深く傷付け過ぎなければ何でも穏便に済むものなのだ。
ちなみに、彼が四隅を覗いていたのは、「仕合わせを下さる小さなオジ様がいらっしゃるかもしれないので⋯」との事だった。
彼には、こじんまりしていて床がヌメっている居酒屋よりも、清潔で大きい病院を紹介した方がいいらしい。
という経過点があって、冒頭の会話が始まった。
「私、貴方の事結構好きですよ」
と。軟派者は、開き直った細面でそう告げた。
それを(夢主)は対して気にせず、いつものことね⋯と聞き流した。
どうせ、話を聞いてくれる都合良いヤツという意味なんだろう。少し冷めた心を自覚して、(夢主)は誤魔化すようにウーロンハイを一気に煽った。
しかしそんな彼女を見ても、菊はあまり感情を乱さずに何処吹く風と言う顔をした。
おかしい。いつもなら、「何でそんなに萎えてるんですかぁ!もっとテンション上げてきましょうよ、私たちほら、ズッ友じゃないですか。ゥチら永久マブダチ⋯ですよね!」とダル絡みしてくるはずだが。
暫く充満した気まずい空気を吸った(夢主)は、仕方無しにとグラスから手を離し、ツマミの皿に囲まれながら丸テーブルの上で頬杖をついた。
「また酔ってらっしゃるのね、今度本田さんと会う時はお酒が出ないところがいいわ」
ほら見たことか、スグ冗談ばかり言うんですから⋯と、図らずに愚痴を零す。その呆れた仕草のままお絞りで口元を拭い、この会話を終わらせようという丁寧な姿勢を取り繕った。
彼女は動揺していた。勿論、赤ら顔を隠す為にお手拭きを手に取ったのだから。
しかしそんな彼女を見ても、菊は風に揺れる花のように凪いだ笑みを絶やさなかった。
「これ、ノンアルですよ」
「あら、え、そう⋯あら?」
手から濡れ布が滑り落ちた。その周りに(夢主)の額から汗が数滴垂れ、彼女の手に小さく跳ねた。
(夢主)はとても困った。困ったし、恥ずかしかった。
人の頼んだものを把握出来ない、関心を持っていない態度を見せたことをまず恥じた。社会人としてこれ式の気遣いができないのは致命的だと思ったから。
それと、アレは酔った勢いの戯言ではなかったから。彼は嘘を言わない。素面では素敵な男で居続けたし、誠実で真面目というところが定評だった。
だから、
「貴方を好いている私の事は、お嫌いでしたか?」