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「こうやって実物を見ていると、とてもではないですが……同じ人物とは思えない光景ですねぇ」
『先生、集中して下さい。そろそろシックスが到着しますよ』
此方のサポーターの声を聞きながら、白いプラスチック製のライフルを構えた。
今回私が、secondとして運営側に依頼した“ゲームならでは”の装備。
単純明快、弾を当てた相手を回復させるという代物。
とはいえ私だけどこまでもゲーム要素を盛り込む訳にもいかず、かなり色々と手間を増やされてしまったが。
コチラの銃は薬品の入ったアンプルを発射できるという代物。
薬や回復方法は完全にファンタジーだが、それ以外の所で現実的な要素をガンガン追加されたという結果になった。
まず、発射する機構が火薬ではない。
圧縮したCo2のボンベを銃に装備して、コレの噴射によって注射器の様なアンプルを打ち出すというシステム。
なのでマズルフラッシュが発生しないのはありがたいが、マガジンの他にボンベの交換が必要になって来るのはもちろん。
発射するのが小さな鉛玉ではない上、威力は格段に落ちる。
つまり、かなりの放物線を描く仕様になっているのだ。
元々“当たらないゲーム”と言われているガンサバで、更に当たり辛い装備を作ってしまった事になるのだが……コレを可能にしてくれる、追加装備。
まるで一昔前のVRゴーグルの様なソレを付け、弾道や着弾地点を視覚化してくれるという代物。
つまり、私のドロップを狙うとしたら。
この銃を十分に活用したいとすれば、此方を少なくとも二度殺さなければいけないと言う事だ。
銃その物と、追加装備のゴーグル。
コレはまた、なかなか狙われる要素が増えてしまったのかもしれない。
そもそも防弾仕様の服を着ている相手にどうやって注射器を差すんだ、とか。
そんな勢いで飛んで行った注射器が刺さったら、普通は大事故だぞ、とか。
ハッキリ言って、こんな物を撃ち出したところで真っすぐ飛ぶわけがない、とか。
色々思う所はあるが、こういう事は突っ込んではいけないと釘を刺されてしまった。
「なんだか私だけ、別の高難易度ゲームに挑戦している気分です」
『攻撃は完全にシックスに任せちゃいましたからね、仕方ないです。向こうも今頃大忙しですけど。そろそろ相手のサポーターから連絡が入ると思います、準備を』
私の役目は指定されたポイントに潜み、順次移動。
あらかじめ決めておいた“シックスが立ち止まるポイント”に対して、要請があれば誤差なく回復薬を撃ち込むと言うもの。
簡単に言ってくれるが、現実的に考えれば普通に無理だ。
こちらはスナイパーではない上に、今回私の元へ襲撃者が来れば瞬く間にやられてしまうだろう。
だがコレを支えてくれているのが、新装備と……。
『報告、シックスが被弾しています。次のポイントで回復をお願いします。発射のタイミングは此方で指示しますので、距離と弾着予測時間を教えてください。正確に』
『了解です、白川さん。現在secondのポイントが、A3地点。弾着予定時間が――』
今回に限り、サポーター同士でも連絡を取り合える様にしてもらったのだ。
もしかしたら、私達のチーム限定の措置なのかもしれない。
他の面々からしたら、それがどうした? とか。
いつもやっている事なんじゃないの? とか言われてしまいそうだが。
サポーターとしての“観察役”。
これの実力によって、戦果は大きく左右されると言って良いだろう。
実際ウチのサポーターの実力が無ければ、私はもう何度クビになっていてもおかしくない程のキルログを残していた事だろう。
彼の補助があるからこそ、私はこれまで何度も救われて来た。
それは重々に理解しているのだが……シックスのサポーター。
彼は、正直“次元が違う”と言っても良い。
『了解しました。second、私の合図と共に引き金を引いて下さい。当たるかどうかなど、確認しなくて大丈夫です。例え当たらなくとも、此方でなんとかします。そしてなにより、貴方なら大丈夫です。タイミングだけに集中して下さい』
「分かりました、シックスのサポーター。ここまで自信満々だと、意地でも当ててやるという気持ちになりますね」
『当然です、俺達は貴方方賞金首が“全力で戦える”環境を作るのが仕事ですから。現場に立っている貴方達同様、責任が伴います。だからこそ、“仕事”をするだけです』
本当にもう、頼もしいと言う他無いだろう。
なので此方は、指示された通り予定地点に銃を構え、弾着地点を確認。
そして、静かに息を整えシックスの到着を待っていると。
『来ます、予定よりもその場に留まれる時間が少ない。良いですね?』
「了解しました」
『5、4、3、2、1、今』
相手の指示通り発射した結果、此方の撃ったアンプルは夜空を舞い。
放物線を描いて街中へと落ちて行く。
普通ここからでは、向こうの様子は見えないが……しかし、そこは新装備に担当がオマケ機能を追加してくれて。
「は、ははは……嘘でしょ。こんなに綺麗に当たるものなんですか」
『向こうの合わせ方が半端じゃないですね……というか、賞金首本人もサポーターもヤバ過ぎますって』
街中の監視映像がゴーグル内に表示され、そこには現在進行形で戦っているシックスの姿が。
予定していた“回復ポイント”に到着した瞬間、相手に向かって派手に威嚇射撃。
マグチェンジを行いながら、スッと身体を逸らす様にして……此方のアンプルを、その身に受けた。
いやいやいや、何ですか今の。
飛来物に対して一切視線を向けていなかったと言う事は、サポーターからの指示?
これに応え、相手は此方の回復を丁寧に受け取ってみせたのだ。
いくら回復弾とは言え、物体としては物凄く小さい。
元々当たらないとされているゲームだからこそ、銃弾より大きなコレだってヒットさせるのは難しい筈。
だというのに綺麗にシックスの腕に回復弾は命中し、その後彼は再び暴れ始める。
本来なら、待機している相手やダウンしている人物を治療する代物だというのに。
あんなにも動き続ける相手に、しっかりとヒットしてしまった。
この事実だけでも、背筋がゾッとする程。
『これよりポイントCに移動します。そろそろシックスの周回ルートにプレイヤーが気付いた頃でしょうから、そちらも移動をお願いします』
「え、えぇ……わかりました」
相も変わらず淡々と仲介指示を送って来るシックスのサポーター。
これに従って、次の予定地点へと移動していく訳だが。
『やっば、白川さんマジでヤバイ。向こうの通信まで聞いてたら、絶対頭パンクする程の指示出してますよ。どうしたらそこまで環境を支配出来るんだか……』
「これにしっかりと応えている妹さんの方も、かなりのモノですね。正直、私には理解出来ない領域に達していますよ。まさに“天才”というヤツですね……さっきから鳥肌が止まりません」
ウチのサポーターとそんな会話をしつつ。
こちらは次の狙撃ポイントへと、そそくさと移動していくのであった。
様々な分野から“プロ”を集めた、ガンサバイブオンラインの賞金首達。
そんな中、過去の実績を一つも残していない人物。
それが、6keyだったのだ。
私も最初は“ゲームの上手い新規”を育てるのかな? 程度に思っていた。
だからこそ周りとのレベルの違いに、本人が追い込まれてしまうのでは?
なんて……リストを見た段階から心配していた筈なのに。
蓋を開けてみれば、どうだ。
飛び出して来たのは、他の面々すら凌駕する様な化け物。
しかもサポーターを含め、二人で一つの完全なる単独生き残り特化。
これまで何故、世間は彼女というプレイヤーにスポットライトを当てなかったのか。
同時に何故、こんなにも指揮能力が高いサポーターを野放しにしておいたのか。
本当に疑問に思ってしまう程、あの二人の戦闘は……内側から見ている者をゾッとさせる。
人間とは、自らに近いモノを参考にしようとする。
そして同時に、自らが踏み込めない領域に居る相手だからこそ“憧れる”。
この二つをあわせ持ち、更には全て実績で証明するプレイヤー。
それが、賞金首の六番目。
今もなお成長を続ける、ガンサバイブオンラインに登場したキラー。
「ハ、ハハハ。今の彼女……いえ、現状は“彼”ですか。シックスに対して、私はどんなメンタルサポートをしたら良いのか、全く想像が出来ませんよ」
『私も“そっち”と、サポート能力特化って事で結構社内では評価されてた筈なんですけどねぇ……正直、自信無くなりますよ。あの二人、異次元過ぎです』
「居るものですねぇ……紛れも無い、“天才”ってヤツは」
そんな会話をウチのサポーターと交わしつつ、此方はなるべく身を隠しながら次のポイントへと急ぐのであった。
シックスが派手に目立ってくれている為、此方には全くと言って良い程敵が来ないが。
これはこれは……もしかして私、今回のイベントでは一度も黒星を上げずに生還できるのでは?
私としては、大金星になりそうですね。
くろぬか
2,082
柘榴とAI

441
柘榴とAI

391
「囧」
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コメント
1件
いやあ、第102話、めちゃくちゃ面白かったです…!タイトル回収の仕方が見事で、「内側からしか見えない6の怖さ」がセカンド視点でこれでもかと描かれていて、背筋がゾッとしました。特に、飛来する回復弾を意図せず受け止めるシックスと、それを指示するサポーターの連携が異次元すぎて、同じチームの人間が鳥肌立てる描写がリアル。設定マニアとして、回復銃のCo2ボンベ式機構とか弾道予測ゴーグルみたいなガジェット解説にも滾りました。次回が待ち遠しいです!