テラーノベル
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湖の帰り道、夕方の光が森を染めている。
ダイスケは城へ向かって歩いていた。
まだこの城に来て数週間。
広い廊下もたくさんの人もまだ慣れない。
少し早足になる。
すると後ろから声。
🖤ダイスケ
振り返る。
レン。
剣の稽古帰りらしく髪が少し乱れている。
レンは言う。
🖤お前、また一人で湖行っただろ
ダイスケは少し驚く。
どうして分かったんだろう。
黙っているとレンは少し怒った顔になる。
🖤危ないって言っただろ。城の外は安全じゃない
ダイスケは視線を落とす。
怒られるのは、まだ少し怖い。
レンはため息をつく。
🖤…怒ってるわけじゃない
少し黙る。
そして、ぽつりと言う。
🖤心配した
ダイスケは顔を上げる。
レンは少し照れくさそうに目を逸らす。
🖤 急にいなくなるから…戻ってこないかと思った
ダイスケの胸が少し痛くなる。
あの日、母と別れた記憶。
ダイスケは小さく首を振る。
🩷…もう逃げない。ここにいる
すると突然、レンが近づく。
ぐいっと腕を引かれる。
そしてそのまま抱きしめられる。
ダイスケは固まる。
レンの腕は強い。
剣の稽古をしている腕。
でも、抱き方は優しい。
レンが言う。
🖤いいか
少し低い声。
🖤お前は、俺の婚約者なんだから
ダイスケの心臓が跳ねる。
レンは続ける。
🖤だから勝手にいなくなるな…俺が困る
少し沈黙。
ダイスケはレンの服をそっと掴む。
怖くない。
むしろ安心する。
こんなふうに抱きしめられたのは、母と別れてから初めて。
ダイスケは小さく頷く。
レンはそれに気づき少し笑う。
🖤約束だ
夕日が沈む。
湖の方から風が吹く。
その時
レンはまだ知らない。
この少年をこれから先一生手放せなくなることを。
そしてダイスケもまだ知らない。
この腕が自分の世界になることを。
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