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しゃιϯ 𓂃🫧
53
tomato
103
# 綺麗 に 腐った 罰
37
side:💛
新しい家に来てから、あっという間に数週間が経っていた。
お義父さんはすごく優しくて、毎日おいしい朝ごはんとお弁当を作ってくれる。
今までで一番優しく温かい父ができて幸せなはずなのに、俺には悩みがあった。
お母さんが、お義父さんのいないところで急に癇癪を起こしていつものように当たってくるのだ。
あの日々から、今回こそは変わると思ってたんやけどな。
それに、あの義理のお兄さん――すちさんだって恐ろしい。
でも!俺にはらん兄ちゃんやいる兄ちゃん、なつ兄ちゃんがついてるし、こさめちゃんだってそばに居てくれる。
お母さんやお兄さんの刺々しい空気から、いつも守ってくれる兄弟。
みんなの存在が心の支えだった。
とある週末の午後。
両親も上のお兄ちゃんたちもみんなそれぞれの用事で出かけていた日のこと。
家の中には俺とこさめちゃん、そして自室に引きこもっているすちさんしかいなかった。
普段はお兄ちゃんたちに「危ないから」って止められているけれど今日だけは解放感があって、俺とこさめちゃんは久しぶりに広い居間で遊んでいた。
遊んでいるうちに喉が乾いて、俺は台所へ向かった。
コップを取ろうと手を伸ばす。
けれど、一番上の高い棚に置いてあるそれは、少し背伸びをしないと届かない位置にあった。
💛「…んっ、あとちょっと……」
指先で無理にコップを引き寄せようとした、その時だった。
グラッと、棚全体のバランスが崩れる。
コップだけじゃない。
その奥にあった重たいガラスの大皿や陶器の器が、一気に滑り落ちてきた。
💛「あっ――!」
頭上を覆う影。
ガチャガチャと耳を劈く嫌な金属とガラスの擦れ合う音。
逃げられない。
終わった、痛い、怖い。
俺はその場にすくみ上り、ギュッと両目を瞑って頭を抱え込んだ。
ガツンという大きな音を覚悟して、全身の筋肉を硬く強張らせる。
……けれど、
どれだけ待っても、激痛はやってこなかった。
? 「くっ………」
代わりに聞こえたのは、鈍い重音と低く押し殺した呻き声だった。
恐る恐る、薄目をあける。
視界に飛び込んできたのは、流れるように美しい緑髪と、俺の上に覆いかぶさる大きな影だった。
頭上から降ってきたはずの重い器は、すべて彼の背中や腕に当たって床へと転がり、砕け散っていた。
💛「………え…?」
すちさんだった。
あんなにも嫌煙されていると思っていたのに、俺を庇って助けてくれた。
息を呑む俺を見下ろす彼の顔は、心底困惑したような、呆然とした目をしていた。
💛「………だいじょうぶ、ですか?」
震える声で尋ねると、彼はハッとしたように体を起こし、気まずそうに視線をそらした。
💚「……あ、うん。」
ぽつりと投げ出された、消え入りそうな空返事。
そのとき、一部始終を見ていたこさめちゃんが、ボロボロと大きな涙をこぼしながら駆け寄ってきた。
🩵「みこちゃん……! 大丈夫……!?怪我は無い…?………あの、す、すちさんも……大丈夫ですか、?」
💛「俺は、なんともないよ…。あの、ありがとう、ございます。」
💚「………。」
ガタガタと震える俺と泣きじゃくるこさめちゃんを、すちさんは冷めた目で見下ろしていた。
そして、割れた陶器の破片を素手で拾い集めながら、普段通りの雰囲気に戻して言い放った。
💚「……なに泣いてんの。怪我ないなら、さっさと部屋に出てって。邪魔だから。」
威嚇するような、追い払うための冷たい言葉。
でも――その手は、俺たちが破片で怪我をしないように、そっと俺たちを破片から遠ざけるように動いていた。
……この人、全然怖くないやん。
義父さん達の前で見せる綺麗な笑顔とも、いつも廊下で投げてくる尖った言葉とも違う。
そこにあったのは無器用で、今にも消えてしまいそうな優しさだった。
💛「……片付け、俺たちも手伝います。」
💚「いらないって言ってんじゃん。」
💛「でも、すちさん一人じゃ大変です!」
🩵「こさめも手伝う!」
すちさんは深いため息をつき、「勝手にして」と呟いてまた口を閉ざした。
三人で黙々とガラスの破片を拾い集める。
沈黙が流れていたけれど、さっきまでの氷のような冷たさはもうどこにもなかった。
片付けが終わるとすちさんは何も言わずにそそくさと自室へ戻っていった。
パタン、と重いドアが閉まる音が聞こえる。
静かになった居間で、俺とこさめちゃんは顔を見合わせた。
💛「なぁ、こさめちゃん……、」
🩵「うん…お兄さん、本当は……もっと違う人なのかも。」
💛「………そうやね。」
部屋の奥へと消えていった背中を思い出しながら、俺は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。
ご愛読いただきありがとうございます!
皆様、そろそろお気付きかと思いますが、この作品とにかく進行が遅い上に長いです。あれもこれもと欲張った末路です。
今は全体の20%くらいでしょうか。その割に、なかなか幸せ展開にならないです。
幾度暮らせど重たい病み描写が続きますが、きちんとハピエンです。
これからも、是非とも宜しくお願いいたします🙇🏻♀️
コメント
1件
ああ、もうこの回……胸いっぱいになりました。 すちさんが黙って体を張って庇ってくれたところ、すごく好きです。「邪魔だから」って冷たく言い放ちながら、手はそっと破片から遠ざけてる。そのギャップにやられました。💛くんが「この人、全然怖くないやん」って気づく瞬間、じんわり来ましたね。こさめちゃんが一緒に片付けを申し出る優しさもあたたかかったです。 えまさんが進行が遅いと書かれてましたけど、私はこの丁寧な積み重ねが好きですよ。すちさんの心の氷が解けていくのをじっくり見守りたいです。次回も楽しみにしています🌷