〜前回のあらすじ〜
小さい悪魔に転生させられました。チートスキルを添えて
俺が引きこもったのは、高校生になって1日目からだった。
日々ネトゲに熱中し、外出してはラノベを抱えて家に帰る。そんな日々が続いていた。
典型的な陰キャの姿、そんなやつが虐められないはずもなく、高校1年生で最初の被害者になってしまったのだ。
机には罵詈雑言の嵐、下駄箱に靴がないなんてことは多々あった。そんな日々がドミノ倒しのように続けられるものならば、不登校にもなってしまう。
自宅警備はホワイトだった。好きな時に寝れるし、好きな時に起きれる。その幸福感の裏には、「このままでいいのか」と思う自分がいた。いいはずがない、そんなこと分かりきっていたが自分から何かを変えようとは思えないし、できるわけがなかった。そこで至った結論…
来世で頑張ろう。
ダイエットは明日から的な意味で。変わるのは来世でいいと思った。
まあ来世と言っても、自分から死ぬ勇気がないため自殺はできないししない。
普通の人は明日から、遅くても来週から頑張れよと思うかもしれないが、そんな事ができるなら俺はこんな姿に変わり果てることはなかっただろう。
と言うわけで、俺は転生というものに憧れていた。子供がヒーローに憧れる中、俺はずっと次の人生について考えていた。
出来れば人間に、なんなら勇者的な存在になって異世界を救うくらいの逸材にでもなってやりたかった。
でも、異世界には俺が入る空きスペースがあるのだろうか。
ドラゴンが自由に空を謳歌し、海には身を任せてのらりくらりの人魚でもいるんだろう。
それを汚してしまうくらいなら、俺は世界の歯車から外された方がいいだろう。
だが、ヒーローは存在しないとわかっても憧れてしまうもの…俺は空を謳歌し地を跳ねる、そんな異世界ライフを夢見ていたのだ。
引きこもって、早1年。
特に変わる努力もせず、今まで通りの引きこもり生活が続いていた。
親に甘え、友に甘え、生涯性のない日々を送っていた。あの職員が言っていたスネかじりというのも間違っていなかったかもしれない。
1日、また1日すぎても。
まさか本当に異世界に来て救われるなんて、思っていなかったんだから。
……………朝?
しばらく感じていなかった、陽の光に肌を刺激される感覚がそろそろ起きろと言っているかのように、目覚まし代わりとなっていた。
だが断る。引きこもり生活を送った俺には朝や昼、夜の感覚なんか残っちゃいない。
そしていつも通り二度寝をしようと、そのまま目を開けることなくまどろみに身を委ねていると…
ムニ…ムニ…
誰かに起こされているのだろうか、弾力性のあるスルスルな手で頬をつつかれた。人の肌と比べると少しひんやりした大きい手…
その感触が心地よくて、しばらく続けてもらおうと無視して寝たフリをした。
気持ちい…気持ちいけど、なんかデカくない?指…じゃないし、手のひらでもないよな?
「いい加減起きるっき!!」
「ひゃぃあ!!」
聞き覚えのない甲高い声に起こされたかと思えば、頭に強い衝撃を受けた。
とても痛い…今まで外に出なかったから余計に…
とても母親のすることとは思えない。
痛みほど効果的な目覚ましはない。その一発で、はっきり目が覚めた。
目を開いて一番最初に見えたのは、赤い帽子に白い斑点模様の入った…大きなキノコ。
ん?キノコ?
慌てて距離を取り、全体像を眺める。
すごいキノコ。某有名ゲームに出てくる喋るキノコ人間そっくりで、今にもプリンセスを助けろと要求してきそうだ。
どうやら、俺を叩き起したのは母親ではなく、こいつだったらしい。
周囲を見ると、人の手が一切入っていなそうなありのままの自然が広がっていた。木の実を吊るした大きな木、木、木。
その全てが新鮮で、見たことがない。ここは見慣れた汚部屋ではないことに、疑いの余地はない。
………そうだ、思い出した…
ああ、思い出してしまった。俺は…本当に来ちゃったんだな…異世界に__
うん。でもね。でもでもでも!
え、何?このキノコ。確かに異世界だよ。
異世界だからこういうこともあるのかもしれないけどさ…
というか、こいつ話してたよな?日本語で…
ま、まあ…話してみたら案外普通の人間だったり?俺の気が動転してて、実は人間だけどキノコに見えてるとか?
そして俺は、恐る恐る自分予想が正解か否かを確かめる。
「……ぁ…あの、キノコさん?」
「なんだっき?」
え、待って…待って待って待って!?
何今の声…ここ俺とこのキノコ以外何も居ないよね!?もしかして、この世界はキノコ以外の植物も喋って来たりするのか?
それとも…俺の…
いや、いやいやいやありえんでしょ!
信じられん…信じたくないけど!一応…ね。
俺はゴクリと唾を飲み、枯れた喉を湿らした。そして、キノコとの会話を繋げる。
「…僕…ぉ… 小浦糸渚、って言います……」
んんんんんんんんんんんーーー!!!
俺じゃん!俺の声じゃん!!俺の名前言ったんだから疑いようないじゃん!!!
さっきの頭の衝撃も相まって、羞恥心で頭がどうかなりそうだった。
こんな可愛らしい声が自分から出てくるなんて、とにかく不気味で、気持ち悪くて、鳥になってしまいそうだった。
いる。いるよこういう声のキャラ。
ちょっと落ち着いた感じがあって、負けヒロインっぽい立場で可愛い図書委員代表のキャラ!
他人の声として聞くのは好きだ。なんならASMRにして1時間耐久の動画でも作りたいくらいに。
でも…自分の声で耐久動画を作ろうとは思わないだろ!!可愛くないし聞く度に悶絶するわ!
ないわぁ…これはないわ職員さんよぉ……
何故か、心の中で嘆き悲しむ声出さえ可愛らしい声に変わっていた。どうやら俺の心は俺を置き去りにして適応してしまったらしい。
「おい!聞いてるっきか?」
「えっ!?ああ…すみませんボーッとしてて…」
どうやら俺が弱音を吐いている間も、頑張って喋っていてくれたらしい。
ほとんど聞いてなかったけど。
「はあ…なんでこんなところに女の子が1人で寝てるっきかねぇ…」
やめてぇ…無視した俺が悪かったから追い討ちかけないでくれ…
ん?ああそうか…声が女の子なら見た目も女の子だよな…当然。
そう思い自分の手を見る。握ったり、触ったり、足元に生えた草を触って確認してみても、それは自分の知ってる手ではないのに、自分の手だった。ゴツゴツした男らしい腕ではなく、細く白い腕、完全に別物だ。
なんとなしに、二の腕を触ってみる。
ムニッムニのムッチムチだ。
俺は、俊一みたいな男らしいniceBuddyを目指していた。
腹は食パンのように6つに割れており、腕は筋肉質で硬い。でもボディビルダーみたいなガチムチじゃなくて、スラリと整った引き締まった体に。
だから俺は無駄に健康的だった。引きこもりのくせに筋トレを日課にし、腹筋や腕立ては欠かさなかった。
そんな努力を嘲笑するかのような見事な柔肌に変わり果て、残ったのは健康そうな部分だけだ。
そりゃねぇぜ…
心に深刻なダメージを受けながらも、何とかか弱い足で立ち上がる。そう、当然ながら足も少女体型になっているのだ。
だが、もうそんなことを考える気力は残っていない。
…キノコが、思ったよりもでかい。
これだけ体変わってしまっているのだから、身長が低くなっていても不思議ではない。
現に、そこら辺にある椅子くらいの身長のキノコが自分のへその辺まで届いている。
「せめて…身長だけは残していて欲しかった……」
筋肉は努力だ。日々の積み重ねや環境が重要であり、誰でも頑張ればつけれるのだ。
だが、身長は…環境と遺伝にシワが寄っているため、努力でどうにかなるものじゃない。
そして、この体には母体が存在しない。
俺は、終わったんだ…
「おい!さっきからいちいちボーッとしてなんだっき!自分の体をベタベタ触り始めたかと思えば急にうるうるしだすし…もしかして変態っきか?」
「ちがうよ!!こっちにも色々あって大変なんだよ気遣ってくれよ慰めてくれよぉ(泣)」
突然弱音を吐いて縋られて戸惑ったのか、キノコは迷惑そうな顔をひながらも背中を摩ってくれた。
おいおい、元気出せよ兄弟。とでも言ってくれてる感じがする。
「お前…良い奴だな…俺は色々縮んじまって__」
俺は、気づいてしまった。
顔を埋めて当然ながら下を見る。そこには、それがあった。
服装はちゃんと用意してくれたらしい。肩丸出しのノースリーブで、ワンピースみたいな感じだ。靴は履いてなくて…この感じ、多分下着も履いてない。
まあ、裸で放り出されるよりはマシだと思っておこう。
そして、問題の箇所。
白い無地のワンピースを装飾するように2つの盛り上がった部分。綺麗な曲線を描き、先っちょと思われる部分は、服の上からでも分かるくらい尖っていた。
これが、全世界の男が必死になって追い求めて来た存在…
「胸、なのか……」
男の時と比べればちょっと大きいな。って感じだ。つま先は…よく見える。
女の子の胸の大きさに詳しい訳ではないが、人並みにということは分かる。
学校に通っていた女子はこれくらいだった気がする。あんまり行ってないから知らんけど。
目の前に触れる胸があれば、男は欲望に逆らえなくなる。当然俺もだ。
恐る恐る、自分の胸部にある2つの膨らみに手を伸ばし、優しく赤子を抱き上げるようにそれを持ち上げてみた。
「うへぇ…」
触れた瞬間、ビクッと体が跳ねた。
触れてみてわかったことは、やはりこれは自分の胸であったこと、そして…思ったよりも幸福感というものが感じられなかったこと。
むしろ逆だ。不快感や嫌悪感で、初めて胸を触った幸福感は消え去っていた。
引きこもり生活中、薄い本を読むことは当然あった。
異世界ものでゆうと、エルフとかサキュバス系のは結構すきだった。
胸の大きいお姉さんキャラにそういうことをされるのには憧れがあったし、好きな時に揉める胸なんかがあればいいなと思っていた。
そしてその願いが今、想像の斜め上の叶い方をしていた。
自分の体の中心に手を伸ばせば、いつでもどこでも何度でも揉み放題の女子の胸。
でも、でもさ…
「初めての胸が、自前って……」
手料理のご飯を食べたいなら自炊して…
何か欲しいなら自腹で払うこの時代…
でも、さすがに女の子胸位は他人のものを触りたかった…
同じなんだよ、声の時と。
いくら可愛い声でも大きい胸でも、自分のって分かった瞬間嬉しさなんかすぐに消え去るものなんだよ。
「うぅ…柔らけぇ…柔らけぇよクソッ…」
キノコに冷たい視線を送られていることなど気に停めず、俺は自分の胸を揉みながら嘆いていた。
本気で泣きそう…てか泣いた。
女になって涙腺が緩んだのだろうか、かなり泣き虫になってしまった。
髪も伸びたようだ。ミルクのような白い髪が腰まで伸びていた。どうやら、男だけではなく日本人でも無くなったらしい。
どこまで変えれば気が済むんだあのロリっ子…まぁ、俺もロリっ子になってる訳だが…
「…ほんとにさっきから何してるっきか…」
まて、まてまてまて…そうだ。
今の俺はロリっ子なんだ…つまり、当然ながら…
………ない…
俺、立ち直れるかな…
ちなみに、俺は自分のだろうが揉めるなら揉むタイプです。
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