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山中side
身動きが取れない。
自分の心拍数がみるみる上昇しているのが手に取るようにわかる。
心臓の音が相手にも聞こえているのではないかとも思ってしまう。
こうなったのには少なくとも自分に原因があるわけで、お気に入りのシャツにカレーをこぼしてしまったのが事の発端だった。
ショックを受ける自分に優しくウェットティッシュを差し出した貴方は王子様と錯覚するほどカッコよくて、僕は冷静を装ってすぐに視線をシミに向けて集中してシミ取りをはじめた。
そんな時に頭の上から降ってきた言葉に自分は驚かされた。
🩷「その服お気に入りだもんな」
覚えてくれてたんだ。
何年か前のリリースイベントで訪れたとあるショッピングモールで出番終わりに買い物をした際、あなたが似合いそうと言ってくれたシャツだ。
そんな事を思い出して頬が緩む。
🩷「ん?なんか言った?」
ヤベッ
声に漏れていたらしい。
🤍「なんでもないっ」
食い気味に言い放ち、恥ずかしさのあまり慌てて俯く。
唐突な沈黙が気まずい。
さっきまでの甘い時間が名残惜しく思う。
🩷「あ、」
🤍「なにっ!?」
唐突な声に大袈裟に返事をしてしまう。
急に指をさされて視線をやると袖口にも同じシミがついていた。
慌てた俺は袖口目掛けて手を伸ばすが、位置が悪く、叩こうとすると空振りしてしまった。
🤍「お気に入りだったのにな、コレ」
空振りした恥ずかしさもあって、必要以上にしょげてしまう。
あーあ、クリーニング行きかな。
🩷「貸してみ」
ウェットティッシュを手から取り上げられて、ビックリして顔を上げると、はやちゃんの顔のどアップが目の前にあった。
🤍「いや、大丈夫だからっ」
顔の近さにびっくりして、反抗してしまう。
別にカレーのシミ取りくらいクリーニングでなんとかなるし。
🩷「遠慮すんなよ」
少し温もりを含んだその声が脳に反響する。
この優しさは今、自分のために向けられているものなんだと。
それだけで心が温かくなる。
🤍「!?」
そう思った矢先、はやちゃんは俺の腕を掴んでいた。
心臓が口から飛び出るような思いだ。
コレが女子が世にいう、胸キュンなんだろう。
それを男の、ましてやメンバーに対して行われている行為であるという現実に驚きが隠せない。
言葉にならない何かが口から漏れ出る。
その漏れ出た幸せを徐々に噛み締める自分がいた。
目の前のはやちゃんは所謂王子様のような立ち姿で、自分がお姫様にでもなったのではないかと錯覚する。
鼓動が大きく、速くなっているのがわかる。
この音がはやちゃんにも届いてしまうのではないだろうか。
🩷「ま、こんなもんだろ」
丁寧に拭き取ってくれたはやちゃんが俺を見上げる。
🤍「ありがと」
シミ取りは終わっているのにはやちゃんは自分の前から立ち上がらない。
ましてや腕は掴まれたままだ。
どうしていいかもわからず、口をついて出た言葉は自分の想像を遥かに超えた一言だった。
🤍「なんか、はやちゃん王子様みたい」
突然すみません、作者です
この章もうちょっと続きます
お付き合いください…
次回は3人組が帰ってきます
あの子達はこんな時に何をしてたのか
コメント
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最高です。続きお願いします