痛む足で扉を押し開ける四季。足で扉を閉じそうな扉を押さえて、生徒達を中に入れる。白いタイルには四季の足から流れている血が点々と垂れていた。
「屏風ヶ浦、芽衣いるか?」
「一ノ瀬さん!お疲れ様です」
「屏風ヶ浦達もお疲れさん、朽森と花魁坂が1番重症」
「淀川は腕が折れてる」
マットに朽森を置きながらも、状況を2人に伝え始める。花魁坂を支えていた紐を解く。
「顔色はさっきよりも良いけど、まだ不安だな…」
「寝転がれるか?」
「う、ん」
「良し、足上に上げるからな」
近くに置いてあったパイプ椅子の上に花魁坂の足を乗せて首に触れる。
大丈夫。
「次、淀川来い」
「…チッ」
折れた腕は、鬼の力ではいるが少しずつ治ってきていてはいるが痛いものは痛い。
添木による固定と包帯で応急処置を済ませておいた。
笑っていない笑みを浮かべる顔を掴み、傷が無いかを確認していく。
「いてぇ」
「静かにしていろ」
真っ直ぐ目に真澄を写す四季の目から逃れようと無陀野を見ても、無陀野はマジマジと四季の顔を見つめる。
「うん…大丈夫そうだな」
「後で芽衣のところに行ってこいよ」
「他は切り傷とかか…」
ちょっと待ってろよ。そう言った四季は立ち上がり一度奥に消えていった。
何をする気なんだと軽く考えていれば、持ってきたのは白いタオルと消毒液。ついでに絆創膏。
「…え」
「?何してんだよ、ほら顔よこせ」
「ここは先輩ですから無陀野さんどうぞ」
「1番近い印南が行くのが効率的だ」
「私が先になれば血を吐いてしまうだろう…だから私は最後で良い」
「?誰でも良いだろぉ!行かねぇなら俺行くぜぇ!」
想像に容易い消毒液の痛みに、残された印南達が順番を譲り合っている。変な所で気を使う大我が立候補した。
「誰でもいいからは早く来い」
折れた足を無意識に庇いながら屈む四季。未だ足からは血が流れてて、床に水溜まりができている。
「……行くぞ?」
「はい!っ!ってぇ!?」
「うるさいぞ」
制服を握り堪える大我に、つい四季は顔を緩めた。
「ふ…」
一度も見たことがなかった四季の笑顔を、間近で直視した大我には眩しすぎた。
可愛いでしかない自分の生徒が愛しくてたまらない。できるなら怪我も辛い思いもしてほしくはない。
この怪我は到着するのが遅くなったせいで出来た。もっと早く気付いたら。
もっと…
「本当…ごめんな」
「俺のせいで」
百八煩悩 (ひゃくはちぼんのう)
人の苦しみを生み出すすべての迷いのこと
言うべきか、言わざるべきか
生徒に厳しく接するか、優しくするか
四季先生の言えない迷いって感じの解釈ですね…
コメント
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四季先生、自分も怪我してるのに生徒を優先するの優しすぎるよ… 四季先生、笑った瞬間 きゃあ〜!ってなった! 素直になれない四季先生の笑顔が見れて良かったよ! 四季先生は、抱え込みすぎだからもっと気を抜いていいのに、ってなった 続き楽しみに待ってる!
あぁ…神はここにいたのか… 今回も最高だった!やっと四季くんの優しさが伝わってきたかな? 続きも楽しみにしてるね!✨️