テラーノベル
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#ゲーム
#風見裕也
緑茶は飲めないが紅茶は飲める
アリアたちは光に包まれた。
軽い浮遊感を味わったあと――
……目の前に見えたのは、おびただしいまでの銃口だった。
「ガルドさん、防御を!!」
「おう!!」
ガルドは咄嗟にメルヴィナとザインを身体で隠し、自身も盾をしっかり構えた。
次の瞬間、その盾には大量の銃撃が叩き込まれる。
「――うおおおおぉッ!!」
「しばらく持ち堪えてて!!」
アリアはそれだけ言い残すと、壁から伸びる銃を1つずつ破壊してまわる。
しかし――20秒もすると、破壊された銃は勝手に直っていった。
「自己修復機能……!
それなら仕方ない。簒奪の第四指――――『再生不能』!!」
アリアは異能の『再生不能』を杖に宿した。
再び銃を破壊すると――新たに再生することは、無くなった。
「おお、凄ぇ……。
――いや、ちょっと待てよ? アリアも攻撃されてないか……?」
『対象化拒否』を持つアリアであれば、相手が機械だろうと攻撃はされないはず……。
しかし今は、銃撃を何とか避けながら、銃を破壊してまわっている。
「アリアさんは、『簒奪の五指』で取得した異能を……1つずつしか使えないんです。
2つ以上を同時に使うには、私の魔法陣が必要で――」
「それなら、すぐに出してやらないと!!」
「出すことは可能ですが、あんなに動き回られては……」
目で追うのもやっとなのに、魔法陣をそれに合わせて動かすのは――
素人目からしても、不可能なことだった。
「お嬢さんたちを守っている以上、オレも動けません。
……かといって、ザインも出ていくわけにはいくまい?」
「さすがにあんな攻撃、受け止められもできねぇし、避けられもできねぇよ……」
最初の予定では、攻撃を行うアリアと、それを守る前衛の……合わせてふたりで戦うつもりだったのだろう。
しかし今は、攻撃の補助を行うメルヴィナと、押し掛ける形で付いてきたザインがいる。
なるほど、この場においては役立たずの人間がいる――と。
「……危険は承知だ。俺も攻撃にまわるぜ!」
「だーめだよ!
情報屋の長所の、冷静さはどうしちゃったのさ」
ちょうどよく戻ってきたアリアが、ザインを嗜める。
その言葉に、ザインも冷静さを取り戻した。
「……す、すまん。俺は、何かやることはあるか?」
「だからー。最初から、無いって言ってるじゃん!」
「ぬぐ……っ」
「……でも、『生きて帰ろう』って約束したでしょ?
約束くらいは守ってよね!」
「お、おう!」
「――さて。
あらかた銃は破壊してきたから……そろそろ、本体がお出ましになるよ」
アリアたちは4人で固まって……その場で立ち止まっていると、部屋全体が大きく揺れた。
横揺れが激しく、大きな縦揺れも加わり――
――《Execute Protocol: Heretic Purge》
> External Breach:DETECTED
> Access Route:ALPACEL_GATE
> Biological Units:4
> Magic Field:NULL
> Ability Reaction:DETECTED
> Hostile Intent:CONFIRMED
> Intrusion Pattern:IRREGULAR
> Authorization Key:UNREGISTERED
> Access Consistency:FAILED
> Gate Seal Integrity:BROKEN
> Autonomous Defense Unit:PARTIAL LOSS
> Recursive Prediction:RUNNING
> Result:ERROR
> Cause:UNKNOWN VARIABLE
> Recalculate:RUNNING
> Result:UNSTABLE
> Recalculate:RUNNING
> Result:UNSTABLE
> Balance Preservation:PRIORITY_01
> Irregularity Removal:PRIORITY_02
> Core Protection:PRIORITY_03
> Target Protocol:LOADED
> Elimination Sequence:READY
―― Omniscient Recursive Balance Integration System
> PURGE.
――不可解な情報が、全員の頭に流れ込んだ。
「……くっ!? 何だぁ!? この奇妙な――」
「あ、頭に直接響く……っ!? きゃあああぁっ!?」
「これは……、神の言葉なのか……ッ!?」
3人が頭を抱えて苦しむ中、アリアが前に出た。
「――ならば告げよう。
我らの道に、汝の悲鳴など要らぬ――」
アリアが杖を掲げて一振りする。最後に地面を小突くと、3人の頭は一気に解放された。
……むしろ突然の静寂に、耳鳴りがするほどだった。
「こんなのはただのゴミ情報だよ。だから、ゴミ箱にぽいーっ」
「いや……。気軽に言うが、割とヤバかったぞ……今のは」
「初めて聞くと、そうだよね。でも、もう大丈夫」
アリアの言葉に、3人は安心した。
ただ、次の問題は……またすぐに来るのだろう。
「アリアさん。さっきまでの攻撃は止んだようだが、ここからどうするんだ?」
「……オルビスという神は存在しない。ここには、オルビスというモノが存在するだけ。
――モノには命が無い。だから、殺せない。
それなら――オルビスを殺すためには、どうすれば良い?」
ガルドに返事をするでもなく、アリアは独り言のように呟いた。
そして杖を持ち直して、部屋の中心部分に走り出す。
「殺すために、生命を与える――
……簒奪の第五指――『生命付与』!!」
アリアは――部屋の中心部分からせり上がってきた巨大な機械に杖を突き立てた。
……機械の表面は砕かれ、そこを中心に……波のような揺らぎが、大きな部屋を隅々まで襲う。
地震とはまるで違う、どこか有機的な動き――
「――部屋が崩壊する!
ガルドさんはメルちゃんを守って! 情報屋は適当に頑張って!!」
「おう、任せろ!」
「きゃあああーッ!!?」
「俺だけ適当じゃない!? でも、頑張る!!」
床が崩れ、壁が崩れる。
天井が崩れ、広々とした白く霞む空が見える。
地面は隆起し、歪な柱が何十本も、天に向かって生えていく。
歪な柱は――10メートルほどの高低差を生み出し、天空と地上を分かつような空間を作り出した。
……とてつもない轟音が響き終わると、視界もようやく開けてきた。
「――……みんな、大丈夫?」
「おう、何とかな……」
「う、うぅ……? ガルド、ありがとう……」
「怪我はありませんね? ……無事で、良かったです」
辺りを警戒する4人だったが、しばらくした後――
……アリアが1本の柱の上に、人影を見つけた。
おそらくは3メートルほどの、女性のような曲線美を持つ身体……。
顔などは無く、全身が銀色と七色が混在したような――そんな存在。
「……ここまでは、上手くいったかな」
アリアはそう呟くと、その人型の存在に対峙するように……正面の柱に飛び乗った。
「上手くいったってことは、アレが――」
「……オルビス神、なの?」
「そのよう……ですね」
アリアの旅の目的は、『アレ』を殺すこと――
……そう考えた3人は、身体の底から湧き上がる恐怖を……感じた。
しかしアリアだけは、人型の存在――オルビスと、堂々と対峙している。
「――特に交わす言葉も無いし、交わせる言語も無い……かな?」
オルビスはアリアが喋るのを見てから、自身の手を見るように、両手に顔を向けた。
……目は無いようだが、視覚はあるのだろうか。
アリアは跳ね上がって距離を詰め、オルビスに杖を振り上げる。
しかしオルビスは、素早い動きでアリアの攻撃を避け、その流れで牽制を入れる。
「……ッ!? 格闘術のデータを持っている!?」
アリアはフェイントを掛けて、オルビスの足を攻め立てて転ばせようとするが――
……オルビスの攻撃を真上から受けて、地面に落下して激突した。
「アリア!!」
ザインは思わず、ガルドの後ろから飛び出した。
いくら何でも、あんなに高い場所から叩き落とされたら――
「あいたたた……」
「……マジかよ、生きてるのかよ……」
「わ、悪い!?」
「いや、悪くはないが……。
それより、『対象化拒否』は使わないのか!?」
「オルビスは鑑定の力を持っているから。あたしの情報を探られるわけにはいかないのよ。
……だから隙を見て、一瞬で殺さないと」
「メルヴィナ――、いけるか!?」
ザインはメルヴィナの名前を呼んだ。
アリアはもう、できるだけ早く――オルビスを殺すつもりだ。
それなら、その準備は早く行わなくては……。
「は、はい……。いけます!!」
「アリアもいけるな!? さっきの柱で良いのか!?」
「う、うん。……そうだけど、仕切らないでよぉ……」
アリアは少し困った顔を見せるが、ザインは言い切った。
「――大丈夫だ。大丈夫だから、頑張ってこいよ」
「ふふっ。あたしを、誰だと思ってるのよ」
アリアは立ち上がり、ザインと共に、オルビスを睨みつける。
「何もできない俺とは違う……。
何でもできる、アリアちゃんだろ?」
「ふふっ、よく分かってるじゃない。
それじゃ――」
アリアはザインの顔を覗き込み、彼の額を、小さく指で弾いた。
「何もできない情報屋さんは、ここでしっかり……あたしを見ててね!」
――アリアは再び柱に上がり、オルビスと再び対峙する。
時を同じくして……アリアを中心に、メルヴィナの光の魔法陣が浮かび上がった。
……オルビスは何も喋らない。
突然受けた生に混乱しているのか、単純に喋れないだけなのか、それとも喋る価値が無いと判断しているのか――
ただ、動かないのであれば、これほど好都合なことはない。
その間に、必殺の一撃で仕留めるだけ――
「――我、ここに簒奪の力を集めん。
簒奪の第三指――『絶命の槍』は礎と成れ。
簒奪の第四指――『再生不能』は黒き槍に集え。
簒奪の第二指――『因果調律』は――」
アリアの詠唱に、周囲の魔法陣も揺れている。
異能の――……3つ同時の使用。
その制御の難しさに、アリアも彼女にしては珍しく……必死の形相を浮かべていた。
ただ、そんなとき……オルビスが、一歩だけ足を進め――
――ガンッ!!
突然の銃撃に、オルビスの足が止まった。
オルビスの腹に当たったようではあるが、見た目、何のダメージも受けていなさそうだ。
それを確認したあと、オルビスは再び足を――
――ガンッ!! ガンッ!!
……オルビスは、再び足を止めた。
そして目の無い顔で、眼下を見てまわす。
そこには銃を構えたザインが、オルビスを睨みつけていた。
しかし再び足を――
――ガンッ!! ガンッ!! ガンッ!!
……オルビスは、おそらく苛立った。
これしきの攻撃で、自分の歩みを止めようとは。
ただの異物の存在で、不完全な存在で――
「アリアッ!! まだかーッ!!!!?」
「おっけー!
時間稼ぎ、100点満点ッ!!!!」
アリアは右手に作り出した黒い槍を、振りかぶって――そのままオルビスに投げ付けた。
――いや。投げ付けようとした……その瞬間だった。
アリアの右腕……ローブは一気に破れ裂け、そこから彼女の……赤い鮮血が宙に弾けた。
……時間が、ゆっくりと、流れていく。
ザインとガルドは、その信じられない光景に……目を奪われた。
そして、アリアの後方にいたメルヴィナは――
「……ごめん……、なさい……。
私はやっぱり……オルビス……神を、殺すことなんて――……」
……宙に浮かんだ魔法陣に、震える両手をかざしながら。
そして何かに怯えながら――歯をカチカチと……鳴らしていた。
コメント
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うわあ、第58話、めちゃくちゃ緊張感のある展開でしたね……! アリアが『生命付与』でオルビスに“命”を与えた発想、すごく好きです。♡♡♡ない相手を♡♡♡ために、まず存在を変えるっていう逆転の発想。それに、ザインが「俺は何もできない」って自分を卑下しながらも、必死に時間稼ぎで銃を撃ち続けるところ、じんときました。アリアがあの額を弾く仕草、めっちゃ好きです。でも最後の右腕の破裂とメルヴィナの怯え……これ、どうなるんだろう。続きが気になりすぎます!