テラーノベル
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時計塔での出会いから数日。
街は、またしてもあの銀色の雨に包まれた。
若井は授業が終わるやいなや、一本の傘を掴んで走り出した。向かう先は、あの時計塔。
「……いた」
軒下で、前回と同じように雨を眺めていた元貴が、若井に気づいて顔をほころばせる。
「本当に来てくれたんだ。若井くんは、物好きだね」
「放っておけないだけでしょ。
……これ、使ってください」
若井は、持ってきた大きな傘を元貴に差し出した。
けれど、元貴はその傘を手に取ろうとはせず、ただそっと若井の手の上に自分の手を重ねた。
「ありがとう。でも、僕は大丈夫。傘のない僕は佇む毎日。今の僕は、それだけで十分なんだよ」
元貴が呟いた言葉は、
雨音に混じってひどく優しく響いた。
二人は並んで、雨に煙る街を歩き出した。向かったのは、雨の日だけ路地裏に現れるという小さな喫茶店。
店内は、雨の匂いと珈琲の香りが混ざり合い、不思議な安堵感に満ちていた。
窓の外を流れる滴を見つめながら、元貴がふと寂しそうに微笑む。
「若井くん。僕はね、時々怖くなるんだ。不甲斐ない僕を愛してなんて、誰かに願う資格があるのかなって」
若井はその言葉に、胸が締め付けられるような感覚を覚えた。
目の前にいる元貴は、誰よりも鮮やかに笑っているのに、その存在は雨粒のように今にも消えてしまいそうで。
「資格なんて、関係ないですよ。
俺は、元貴さんといる時間が好きです」
若井がまっすぐに伝えると、元貴の背中の「青い翼の紋章」が一瞬だけ淡く光った。
その時、店内のラジオから聞き覚えのないメロディが流れ出す。
「……あ、これ……」
『色が付いたら 僕に名前をと』
歌詞の一節が耳に飛び込んできた瞬間、元貴の体が、まるで水面に映る月のようにゆらりと揺れた。
「元貴さん!?」
若井が慌てて彼の手を掴む。
けれど、その感触は驚くほど冷たく、まるで本物の雨を掴んでいるかのようだった。
「大丈夫……。
ただ、少しだけ『時間』が足りないだけ」
元貴はそう言って、若井の指を一本ずつ丁寧に解いていく。
喫茶店の時計の針が、また一つ、反対方向へカチリと音を立てた。
コメント
1件
とても神秘的ですね💭
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け 〜 ち ゃ ん .
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