あれから3ヶ月…。
篤瀬が「強くなれ」って言ったから、篤瀬には、私の特訓に付き合わせている。
あの日からテレパシーは1回もないけれど、より仲が深まった気がする。
訓練に付き合わせていることもあって、篤瀬を誠さんの家に住まわせてもいいことになった。
毎晩、一緒に寝ている。
それと、最近では魂佳と福穂ちゃんにも遊びと称して訓練に付き合ってもらっている。
この訓練でやっと2人の使力が判明した。
「軌隠[きいん]」
⬆️相手からはわからない規則をつくり、それ を破った相手に、ペナルティーを課す。規 則は3つまで。
魂佳の使力は、やっぱり、あの衝撃波だった。この言葉を口にされると、一瞬で攻撃を喰らってしまう。
(いまいち、魂佳の使力を理解できてないから防ぎようがないよ…。規則ってなんぞや?)
「我が勝手に指定している。よって、その規則を解いて新たな規則に変更することができる。それらの規則は必ず、我がしていないことで、純音がしていることだ。だから、純音のみがペナルティーを喰らっている。それを見抜くのだ 」
(いや、無理だよ!!)
「諦めるな。まぁ、この情報を開示しても我に攻撃を当てられない者は多いがな…」
(あっ!!じゃあ、これならどう?)
私は高速で毒ヘビ、タカ、シカ、ウサギ、狼へと姿を切り換え、隙を作ろうとしたが…
「やっぱり、ずっと痛い〜!」
「純音、それだと『動物になってはいけない』という規則で、1つにまとめられてしまうぞ…」
「はっ!!確かに…」
「特別に規則を開示してやろう。 1つ目は、先ほど伝えた『動物になってはならない』 2つ目は、『動いてはならない』 3つ目は、『我に攻撃を当ててはならない』だ 」
「3つ目と2つ目、最強すぎるでしょ!!ずるじゃん!!😖」
「まぁな。だが、軌隠の攻撃力自体はそこまで強くない。規則を3つ使ってる上、規則が厳しいからだ。逆に言えば、規則を1つに絞り、規則を緩くすれば、その分、攻撃力は上がる。この規則の厳しい、緩いは我自身の身体能力に関係している。だから、我はまだまだ弱いのだ」
「そんなことないって!!実際問題、こんなに最強の攻撃を喰らわせてる時点ですごいもん!!魂佳は、すごいな(*´ω`*)」
「………そう、か(照」
ーーーーーーーーーーー
(なぜだ、純音から優しい言葉をもらった時、必ずと言っていいほど頬が熱くなる。
言葉もうまく発せない…。
我は今、どういう感情を抱いているのだ?
母上や父上、福穂にも、似たような言葉をかけられたことはあったが、こんな気持ちにはならなかった…。なぜ…)
「お〜い、魂佳?大丈夫?顔、赤いよ。熱?」
そう純音に言われて自分の頬に手を当てると、とても熱かった。
原因が純音かもしれないなどとは言えず、
「なんでもない、大丈夫だ」
とだけ答えた。
(なんなんだ、これは…。
これが、ここ数年で1番の謎だ…)
魂佳は「大丈夫」って言ったけど、やっぱり無理してそうだから、誠さんの家で休んでてもらうことにした。
(よし!今度は…)
「福穂ちゃん!遊ぼ…」
「いいよ〜♪」
少し食い気味に言った福穂ちゃんは目を閉じてひもに通された勾玉のひもの部分をつまみ、振り子のように振った。
だんだんと辺りが青白く輝き始め、小さな“誰か”が宙に浮き、福穂ちゃんの周りを回っている。
そして、「請化[せいか]」という言葉を口にした。
次の瞬間、福穂ちゃんは目を開き、青白い光と小さな“誰か”は福穂ちゃんの体の中に吸われるように入っていった。
それに加え、福穂ちゃんの目の色は青みがかっていた。
「準備できたよ〜♪」
福穂ちゃんの使力は、青白く光った範囲内にいる“精霊”たちを呼び出し、その子たちの力を自分に還元する能力だ。
どんな能力がつくかは、精霊たちの気まぐれで決まる。
(たまに、意地悪な精霊さんだと、デバフをかけられることもあるらしい…大変だ…)
「今回はどんな能力なの?」
「それはね………こういう能力!」
そう言うと、一瞬にして福穂ちゃんの姿が消え後ろから蹴られた。
と言っても、足が少し触れたぐらいで、あまり痛くなかった。不意打ちを福穂ちゃんが拒んだから…?
「もしかして、移動速度上昇?」
「うん、そうみたい」
「福穂ちゃん、わざとあんまり力入れずに蹴ったでしょ。やっぱり、優しいなぁ〜」
「えっ?本当?じゃあ、それも精霊さんの能力だ」
「えっ、精霊さんたちって意地悪なの…?」
「うーん、ほとんどの精霊さんは私に協力的だよ。 それに、ここの精霊さんたちには、何度か手助けしてもらったことがあるから、そんなことないと思うんだけど…。」
「そうだったんだ」
「うん、今回も不意打ちだったから、攻撃力を下げて協力してくれたんだと思う」
「そっか…ありがとう♪」
「どっちに言ったの?w」
「どっちも〜(*´꒳`*)」
すると、福穂ちゃんの体がうっすら青白く光った。どうやら『どういたしまして』と精霊さんたちが言ってるみたいだ。
「ふふ🤭 喜んでる、喜んでる。よ〜し、じゃあ純音ちゃん。こっからは妥協なしで戦うよ〜!」
「うん!!」
ーーーーーーーーーーー
それから5時間ぐらいずっと、福穂ちゃんと戦いぱなしだった。
(正直、疲れた〜)
ちょうどそんなことを思っていた時に、福穂ちゃんが
「精霊さんたち休ませてあげたいから、ここまでにしよ…」
「うん!」
私が即答で答えると、福穂ちゃんは少し驚いた表情を見せた後、微笑んで
「ふふ🤭 お疲れ様〜♪」
と言った。
精霊さんたちをもといた場所に返し、お礼を言った後、私たちは誠さんの家に向かった。
辺りはもう、暗くなっていた。
(こうなってくると、1人で誠さんの家には行きたくなかったから、福穂ちゃんがいてくれてよかった)
そんなことを思ってると、福穂ちゃんが何かを指差した。
その指は、震えていた…。
その指の先に 恐る恐る目をやると、
(嘘…。しかもこんな時に…。さっきまでずっと特訓していたから、私も福穂ちゃんも疲労困憊状態…。どうしよう…。いや、どうするも何もやるしかない!)
「福穂ちゃん!!」
そう声をかけると、福穂ちゃんは、ハッとして
こっちに目をやった。
「私がこの心凍狼の気を引くから、その間に誠さんの家に、急いで向かって!」
「…何を言ってるの?そんなの無茶!!この心凍狼たちを倒すには、私たち2人でも心許ないんだよ?なのに…どうして…」
「大丈夫。倒すんじゃなくて、時間稼ぎ。魂佳を読んできて!お願いだから…」
私は、福穂ちゃんを真っ直ぐ見て言った。
その真剣さが伝わったのか、福穂ちゃんは
「…わかった。でも、絶対…絶対に◯んじゃだめだよ」
「もちろん!!私は嘘つきなんかになりたくない!!」
そう言って、私はタカになり、一気に距離を詰め、心凍狼たちを攻撃した。
そして、私の言葉を聞いて、少し安心した表情を見せた福穂ちゃんは、急いで誠さんの家へ向かった。
(“私じゃない私”になるのが嫌で、あんなこと言ったけど、やっぱり、怖い…。…でも、やるしかない!!実力は確実に向上してるはず…大丈夫、大丈夫… )
私は蜻蛉返り [とんぼがえり]をして時間を稼ぐことにした。
タカなら多分、心凍狼の攻撃は当たらない。
だか、これが最大の油断だった。
攻撃を与えてから引き返す時に、少し時間がかかってしまい、心凍狼から一撃を喰らってしまった…。
あと、一撃でも喰らえば、地面に落ちて◯んでしまう。
しかし、この一撃だけども上昇する時に足が痛くてたまらない…。
これでは動きが鈍くなってしまう。
かと言って、攻撃を止めれば、福穂ちゃんの方に向かってしまうかもしれない。
(…とりあえず、攻撃を続けるしか…)
そう思って攻撃しようとした瞬間、最悪が現実となった。
私は地面に叩きつけられた。
(ごめん、◯んじゃうよ…私…)
死を覚悟し、心凍狼の慈悲のない攻撃を喰らう直前で、誰かに抱きかかえられた。
(…誠さん?)
「馬鹿!!何諦めてるんだ!!俺が倒してくる。お前はここで、反省してろ!」
その声の主は、誠さんではなかった。
驚いて見上げると、魂佳と同じくらいの年齢の男の子だった。
(誰?倒してくるって…。わぁ!!)
その子は、私を地面に落として、心凍狼の方へ向かった。
(倒してくれるのは嬉しいけど…一応、怪我してます!!…とは流石に言えないか…それにしても、彼は一体…?)
すると、彼は驚くべき姿に変化した。
龍になった彼は、竜巻を起こし、心凍狼をその中に閉じ込めた。
そして、「風雪[ふうせつ]」と口走った。
次の瞬間、その竜巻の中に猛吹雪が発生し、心凍狼たちは、なすすべなく、息の根を止められた。
(…すごい。あの心凍狼たちを1人で…。私じゃ歯が立たなかったのに…)
そんなことを思ってると、彼は龍からさっきの男の子に戻り、私のもとに近づいてきた。
「あ、あの、ありがとうございまぁ…わぁ!」
そう感謝を言い切る前に、助けてくれた時のように抱きかかえられた。
「お前、このこと、絶対に言うんじゃねぇぞ」と言った。
「えっ?なんのこと?」
「龍に姿を変えたことだよ。バレたくねぇんだよ…」
「ごめん、ごめん。それは約束する。それより、ありがとう。助けてくれて…」
「…あぁ(少照…お前、家どこだ?その怪我じゃ歩けないだろ?」
「えっ!いいの?ありがとう(*´ω`*)」
「………」
「どうしたの?」
「あー、やっぱ言わなくていい。迎えが来たみたいだそ」
そう言って彼が見ている方向に目をやると、手を振り、泣きながらこっちへ向かい走ってきている福穂ちゃんと少し不機嫌そうにこちらへ歩いてきている魂佳の姿があった。
ーーーーーーーーーーー
「よかった…。純音ちゃん、やっぱりいい子だね…(泣」
「ちょっと泣かないでよ〜。◯んでないんだから(苦笑」
「それで…」
「ん?」
さっきの泣き顔とは一変して少しニヤニヤした顔をしながら、福穂ちゃんは聞いてきた。
「純音ちゃんをお姫様抱っこしているこの人は誰?(ニヤ」
「そういえば、名前は?」
「えっ!名前も聞かずにお姫様抱っこされてたの?!」
「…お姫様抱っこって何?」
「今の状況。普通、好きな子に対してすることだけどなぁ〜(ニヤ」
それを聞いた瞬間、私は再度、地面に落とされた。
「俺はそんなつもりじゃない!! 」
「痛!!ちょっと、さっきもこうだったじゃん!」
「あっ…悪い…」
「純音、大丈夫か?」
さっきから口数の少なかった魂佳が口を開いた。
(そういえば、なんでちょっと不機嫌そうなんだろう?やっぱり熱があって無理してるとか?!大丈夫かな?)
「不機嫌…じゃないし、熱もない」
「そっか、よかった(*´ω`*)」
なんか、また魂佳の顔がほてっている気が…
「お前、熱あるだろ。あと、心、読めんの?」
私の言いたかったことを言ってくれた。
「…問題ない。そなたが言ったように、私は人の胸の内がわかる。我は千里眼と慧眼[けいがん]が人一倍優れている体質なんだ 」
「へぇ〜。すげぇな、お前 」
「………」
「あの、私が話を飛躍させといてなんだけど…あなたの名前は?」
「あれ、言ってなかったっけ?俺は颯。風の使力者だ」
「よろしくね、颯くん」
と福穂ちゃん。
「颯、これからよろしく!」
と私。
「…よろしく頼む」
と魂佳。
「あぁ、よろしく」
と颯。
(新しい友達ができて嬉しい!今日は色々だったけど、最高の1日だったなぁ)
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投稿、遅れてすみません。 4月から、学業に本腰を入れたいので、もしかしたら、もっと間が空くかもしれません…ご了承ください。