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キルアと雨の甘々シチュ
突然の雨だった。
「……傘、持ってない」
「俺も」
見事に二人ともびしょ濡れ。
髪から雫が落ちて、
服も重くなっていく。
「このままじゃやばいな」
キルアが周囲を見回して、
すぐ近くの小さな公園を指さした。
「屋根ある。あそこで雨宿りしよ」
⸻
屋根の下に駆け込んで、
二人並んで息を整える。
「……冷たい」
×××が小さく言った瞬間、
キルアの視線が一瞬止まる。
雨で濡れた服の色が少し変わっていて、
いつもより大人っぽく見える。
(……やば)
一瞬ドキッとしたけど、
すぐに顔を逸らす。
「……」
何も言わず、
自分の上着を脱いで×××の肩にかける。
「え?」
「風邪ひく」
短くそれだけ。
耳が少し赤い。
「ありがとう……」
「見るな」
「?」
「……いや、なんでもない」
理性、必死。
⸻
しばらくして雨が弱まり、
そのままキルアの家に向かうことになった。
「その服、完全にアウトだろ」
「……うん」
キルアはクローゼットを開けて、
自分の服を差し出す。
「これ着ろ」
「大きくない?」
「気にすんな」
⸻
着替え終わった×××が出てくる。
ぶかぶかの服。
袖は長く、ズボンも緩い。
一歩動いた瞬間。
ずるっ。
「わっ……!」
慌ててズボンを押さえる×××。
それを見たキルアは、
一瞬完全に固まる。
「……」
(やばい)
喉を鳴らして、視線を逸らす。
「……ちょっと待て」
近づいて、
距離を保ちながらズボンを軽く直す。
「……サイズ合わなくて悪い」
「ご、ごめん……」
「謝るな」
声が低い。
「……その格好、反則」
ぽろっと本音。
「え?」
「……聞こえなくていい」
顔を背けて、深呼吸。
「これ以上やったら、
理性なくなるから」
×××は真っ赤になって、
小さく俯く。
「……意地悪……」
キルアは苦笑して、
頭をぽんっと軽く叩いた。
「雨の日は危険だな」
でもその声は、
優しくて甘かった。
クローゼットをひっくり返して、
なんとか×××がちゃんと着られる服を見つけた。
「……これなら大丈夫そう」
「よかった」
サイズはまだ少し大きいけど、
さっきよりは全然まし。
キルアはキッチンに立って、
温かい飲み物を用意する。
「甘いのと、普通の。どっち」
「甘いの」
「即答だな」
マグカップとお菓子を持って、
二人でソファに並ぶ。
外では、まだ雨音。
「……落ち着く」
×××がほっと息をつく。
「濡れた後って、余計そう感じるよな」
キルアもソファに深く座って、
少し力を抜いた様子。
しばらくは、
マグを持つ音と雨の音だけ。
⸻
ふと、キルアの視線が止まる。
×××の服。
大きめなせいで、
動くたびに少しずつずれていて——
片方の肩が、
気づかないうちに見えていた。
「……」
キルアは一瞬で顔を逸らす。
(……見えてる)
耳が赤い。
それに気づいた×××が、
首を傾げる。
「……キルア?」
視線を辿って、
自分の肩に気づく。
「……あ」
慌てて、服を引き上げる。
「ご、ごめん……!」
「……いや」
キルアは咳払いして、
マグに視線を落とす。
「その……別に……」
明らかに動揺。
×××も顔が熱くなって、
直した服の端をぎゅっと掴む。
「……やっぱ大きいね……」
「……俺のだし」
小さな沈黙。
でも、空気は重くない。
「……照れてる?」
×××が小さく言うと、
キルアは一瞬だけ固まってから、
「……悪いかよ」
ぼそっと返す。
それが可笑しくて、
×××は思わず笑ってしまう。
「……なに笑ってんだ」
「キルアも、そういうとこあるんだなって」
「あるに決まってるだろ」
ちょっとむっとしつつ、
でも声は柔らかい。
二人とも、
どこか落ち着かなくて、
でも安心している。
マグの温かさと、
静かな雨音と。
少しだけ近い距離。
「……雨、悪くないな」
キルアがぽつりと言って、
×××は小さく頷いた。
ソファに座り直したはずなのに、
気づけば二人の距離はほぼゼロだった。
肩が、軽く触れている。
「……近くない?」
×××が小さく言うと、
キルアはちらっと横目で見る。
「今さら?」
「……さっきから今さらばっか……」
「事実だろ」
そう言いながらも、
キルアはどく気配がない。
むしろ、
ソファに深く座り直して、
結果的にさらに距離が縮む。
「……雨、まだ降ってるな」
窓の外を見ながら、
どうでもいい話題を振るキルア。
「うん……音、落ち着く」
「わかる」
マグカップを持つ手が、
少しぶつかる。
「あ」
「……悪い」
でもどちらも手を引かない。
×××はキルアの服の袖を、
無意識に軽くつまんでいた。
「……それ、俺の服」
「っ……ごめん!」
慌てて手を離そうとすると、
今度はキルアが止める。
「いい」
短く、でも即答。
「そのままで」
×××は動けなくなる。
キルアは視線をテレビに向けたまま、
低い声で言う。
「……落ち着くんだよ」
「……なにが?」
「こういうの」
肩が触れて、
同じ空間で、
何もしてない時間。
×××の胸が、少しだけ高鳴る。
「……キルアって、意外と静かなの好きだよね」
「意外ってなんだ」
「もっと騒がしいかと」
「失礼だな」
でも否定はしない。
「……今は、これでいい」
そう言って、
キルアは少しだけ頭を傾ける。
×××の肩に、
軽く触れるくらい。
寄りかかるほどじゃない、
でも確実に近い。
「……重くない?」
「全然」
即答。
「むしろ、動くな」
「……命令形……」
「嫌ならどく」
「……嫌じゃない……」
小さな声。
キルアはそれを聞いて、
ほんの少しだけ笑った。
雨音と、
部屋の静けさと、
触れている温度。
特別なことは何もないのに、
それが一番落ち着く時間だった。
しばらく静かに過ごしていたのに、
キルアが不意に口を開く。
「……なあ」
「なに?」
横目で×××を見て、
わざとらしくため息。
「無防備すぎ」
「え?」
「距離も、態度も」
からかうような言い方なのに、
声が少しだけ低い。
「俺、結構我慢してんだけど」
「……な、なにを……」
答える前に、
キルアがふっと距離を詰める。
そしてそのまま——
×××の胸元あたりに顔をうずめる。
「ちょ、キルア……!?」
「動くな」
でも声は強くない。
むしろ、
完全に力を抜いた声。
「……もう限界」
抱きつくというより、
安心する場所を見つけた猫みたいに、
額を預けてくる。
「……ここ、落ち着く」
×××の心臓が跳ねる。
「……い、いきなりは反則……」
そう言いながらも、
突き放せない。
キルアは小さく息をついて、
すり、と少しだけ位置を直す。
「……なでて」
ぼそっと。
「ねこ……?」
「今だけ」
完全甘えモード。
×××は顔を真っ赤にしながら、
そっとキルアの髪に触れる。
「……しょうがないな……」
ゆっくり、やさしく。
キルアはそれだけで満足したみたいに、
動かなくなる。
「……これでいい」
「……理性は?」
「今、充電中」
小さく笑う声。
×××も少し力を抜いて、
そのままキルアを受け止める。
雨音の中、
からかいもドキドキも全部落ち着いて、
ただ甘い時間だけが流れていた。
キルアはもう動かない。
完全に、ねこ。
×××の方に顔をうずめたまま、
腕も力が抜けていて、
呼吸だけが静かに伝わってくる。
「……ほんとにねこじゃん……」
×××が小さく笑うと、
キルアがむに、と少しだけ動く。
「……にげるな……」
「逃げないよ」
そう言いながら、
そっと背中に手を回す。
ゆっくり、撫でる。
髪。
背中。
ときどき肩。
キルアはそれだけで満足したみたいに、
小さく喉を鳴らすような息をつく。
「……」
「……キルア?」
返事はないけど、
額をこすりつけるみたいに、
少しだけ寄ってくる。
完全に甘え切ってる。
「……安心しすぎ……」
そう言いつつ、
×××の声も自然と優しくなる。
「外ではあんなに余裕なのにね」
「……ここは……別……」
かすれた声。
「……×××の前なら……いい……」
その一言で、
×××の顔がまた熱くなる。
「……ずるい……」
でも、
拒む理由なんてどこにもない。
×××はキルアの頭を胸元に引き寄せて、
もう一度、ゆっくり撫でた。
「……はいはい、いい子」
その瞬間、
キルアの肩がふっと緩む。
完全オフ。
雨音と、
部屋の静けさと、
あたたかい体温。
キルアはもう、
からかう余裕もなくて。
ただ、
×××に甘えるだけのねこだった。
キルアはそのまま、完全にうとうとしていた。
呼吸はゆっくりで、
力も入っていない。
……と思ったら。
「……×××……」
小さく、名前を呼ぶ。
「……ここ、あったかい……」
寝ぼけた声。
×××は一瞬、固まる。
「……え」
キルアは目を閉じたまま、
少しだけ身を寄せてくる。
「……いなくなるなよ……」
「……っ」
心臓が一気にうるさくなる。
「……ずっと……一緒……」
完全に無意識。
×××の顔は真っ赤。
「……き、キルア……それ反則……」
返事はない。
安心しきった顔で、
そのまま眠り続ける。
⸻
しばらくして。
「……ん……」
キルアが目を開ける。
状況を確認して、
一拍。
「……あ」
自分がぴったりくっついていたこと、
さっきの記憶がうっすら戻る。
「……俺、今……」
×××はにこっと笑って、
静かに言う。
「起きた?」
「……」
耳まで真っ赤。
「……なに言ったか、覚えてない?」
「……いや……」
「じゃあ教えてあげよっか」
キルアが一瞬で警戒する。
「待て」
「“いなくなるな”って」
「……」
「“ずっと一緒”って」
「……!!」
完全にフリーズ。
×××は楽しそうに続ける。
「あと、“あったかい”って」
「……忘れろ……!」
顔を隠そうとするキルアを、
×××が軽く止める。
「ねえ」
少しだけ意地悪な声。
「かわいかったよ」
「……言うな……」
「さっきまで、ねこだったし」
「……」
ぐうの音も出ない。
でも、
キルアはそっと息をついて、
小さく言った。
「……嫌じゃなかったなら、いい」
×××はまた赤くなって、
視線を逸らす。
「……からかったけど……嬉しかった……」
キルアはそれを聞いて、
少しだけ笑った。
「……じゃあ、引き分けな」
そう言って、
また少しだけ距離を縮める。
今度は、起きたまま。
甘えも、からかいも、
ちゃんと分かった上で。
to be continued….