コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「Hey Peach(ピチ).今何時」
消えそうな声でスマートフォンに聞くルイ。
「ハイ。現在ノ時刻は13時11分デス」
ルイの声を掻き消すかの如くハキハキとした声で答えるAIアシスタント。
「1時かぁ〜…」
起きるか起きないか考えるルイ。
「Hey Peach.起きたほうがいいと思う?」
結局答えが出ず、というより考えるのが面倒になったルイはAIアシスタントに聞く。
「検索結果ニヨリマスト、一般的ナ朝型ノ人ヤ健康的ナ睡眠サイクルヲ維持シタイ場合ハ
13時起床ハ推奨サレマセン。トノコトデス」
立派な模範的解答。
「そーゆーことじゃないんだよなぁ〜…」
と聞いといて文句を垂れる。するとルイの部屋の扉がゆーっくりと少し開く。
少し開いた隙間から那緒が顔を覗かせる。
「ルイー。起きてるー?」
呟く。那緒がゆっくりと足を踏み入れる。
「お邪魔します…」
ゆーっくりとベッドに近づく。ベッドにはルイが寝ている。
正確には起きているがまだ目を瞑っており起き上がっていない。
寝ていると思っている那緒はまじまじとルイの顔を覗き込む。
長い綺麗なブロンドヘアーが頭の後方に扇方に広がっている。
透き通るような肌にリップをしているかのような綺麗な色の唇
エロい
と思うほど綺麗な唇。スッっと通った高い鼻。長い綺麗なブロンドのまつ毛。
相変わらず綺麗な顔だなぁ〜
と思っているとスッっと目が開き、綺麗な蒼い目が顔を覗かせる。
その綺麗な蒼いルイの目を目が合いドキッっとする那緒。
「夜這いか」
と冗談混じりだが、表情が一切変わらず言い放ったので冗談感がない。
「は!?よっ!起こしにきただけ!保とうたがご飯作ってるから、はよ起き!」
と言い放ってピンクに染まった頬を隠すようにバッっとルイに背を向けてスタスタと部屋を出ていった。
「…相変わらず冗談通じないな…」
と寝返りを打って少し考え
「Hey Peach.起こして」
とAIアシスタントに無茶なお願いをする。
「アラームヲ設定シマス」
「…」
渋々自力で起きた。洗面所へ行って歯を磨き顔を洗いリビングへ。
「お。おはよう!」
「お。おはー」
保と歌乃がキッチンからルイに手を振る。
「おはー」
「那緒に夜這いされた?」
と歌乃がニマニマ顔で聞く。
「ばっ!」
那緒が反応する。
「された」
「してない!」
「「ラブラブゥ〜」」
と言う歌乃と保に
お前らにだけは言われたくない
と思う那緒とルイ。
「はいぃ〜できましたよぉ〜」
と保がダイニングテーブルにお皿を乗っける。
「歌乃」
「保の」
「「特製オムライスでぇ〜す」」
大きなお皿に大きなオムライス。綺麗な薄黄色の玉子の上にケチャップで
うたの
Dierar
たもつ
と書いてあった。
「ダイ…ダイアー…。あ、もういいや」
なんて書いてあるのかわからなかったが、めんどくさくなったので考えるのをやめるルイ。
「ダイ…。あぁ。Dearね」
「え。そうだけど」
とポカーンと「何言ってんの?当たり前じゃん」顔の歌乃。
「なにその顔。スペル間違ってるから」
「嘘!?」
「もうニャンスタに上げちゃった」
「私も」
「ある意味回るんじゃない?」
ルイは容赦なくその「Dear」の成り損ないをスプーンで削る。
「あぁん!」
歌乃は自分のお皿に「うたの」の部分を乗せ
「はい保。私のところ」
と保に差し出す。
「お!マジ!?サンキュ!じゃっあっー」
保は自分のお皿に「たもつ」の部分を乗せ
「お返しー」
と歌乃に差し出す。
「ありがとぉ〜」
「んじゃ。いただきます」
と那緒はスプーンで掬って口へ運ぶ。
「どぞー」
「どうぞー」
「歌乃のとこはより美味しそうだな」
「いやん!」
というやり取りに口寸前でスプーンを止める。
「うっ…。まだ食べてもないのに胃もたれが…」
「あ!あーんしてあげればよかった!」
「ぐっ…その手があったか…」
「もうやめて。お昼食べる前に胃もたれ激しくなるから」
というようなやり取りの中
「いただきます」
なにも気にせず口にスプーン運ぶルイ。
「うん。美味しい」
那緒も食べる。
「…美味しいのが腹立つんだよなぁ〜」
といつも通りのお昼の光景。
「詩衣もうお昼かなぁ〜」
「あぁ。ルビーちゃんもね」
「もう終わってんじゃない?」
「…高校んときお昼何時だった?」
という歌乃の質問に
「…」
「…」
「…」
全員黙り込む。歌乃、保、那緒は考えているがルイは考えてすらいない。
お昼休憩が終わり、午後の授業に入っていた詩衣、ルビー。
「今日は私のクラスに転校してきた生徒がイギリス出身だということで
イギリスの地理についての授業をしたいと思います。では教科書」
と地理の授業が始まって、先生に言われた通り教科書を開く。
先生が黒板を向いている隙にルビーの背中に付箋を貼る詩衣。その付箋を取って書かれていることを読む。
イギリス出身だって!仲良くなれるかもね!
と書いてあった。
イギリス出身なだけでなぁ〜
と思いつつも返事を書く。また先生が黒板を向いている隙に振り返って詩衣の机に付箋を貼る。
どうかなw他クラスだし
「まあね」
と呟く詩衣。
「イギリスってさー」
ルビーの隣の席の気李人(ケイト)が呟く。
「どんなとこ?」
「…」
「どんなとこ?」
「あ、私に言ってる?」
「いや、この席周辺でイギリスに関する人っつったら袴田しかいないだろ」
「まあそれもそうか」
「で?イギリスってどんなとこ?」
「どんなとこって言われてもなぁ〜」
とシャーペンのノックする部分を頬にあてて頬をプニプニと凹ませる。
「私小学生の途中までしかいなかったからなぁ〜」
「あ、そうなんか」
「そう。お兄ちゃんの中学進学に合わせて日本に来たから」
「あ、お兄さんの。へぇ〜」
「で、小学校で詩衣と仲良くなったのよ」
「あぁ。多馬と袴田って幼馴染か」
「そうそう。だからどんなとこって聞かれてもわからんのよねぇ〜」
「なるほどなぁ〜」
と納得しかけてイスに寄りかかり後ろ斜めに倒す気李人。
「小学生の時とき以来イギリスには行ってないん?」
「まさか。両親今イギリスだし
毎年夏休みにはGrandad(グランダ)とGrandma(グランマ)に会いに行ってるよ」
「行ってんかい」
とコケる仕草をするとイスを後ろ斜めに倒していたので、本当に転けそうになり焦る気李人。その様子を見て
「ふっ」
っと笑うルビー。
「なにしてんの」
その破壊力抜群の笑顔に撃ち抜かれる気李人。
「い、いやぁ〜。てか年1帰ってんなら、どんなとこかくらいわかるだろ」
「んん〜…。「いいとこ」くらいの感想しかない」
「なんだそれ」
「いや、年1帰るからってどんなとこかなんてわからんくない?」
「いや、わかるくね?」
「夏元って東京出身?」
「そう。東京生まれ東京育ちのCity boy!!」
「じゃダメか」
「なにが」
「いや、地方出身だったら年1帰って
地元ってどんなとこって聞かれても困るでしょ?って話したかったんだけど」
「あぁ〜。あ、でも母親の実家が名古屋だから年末年始は帰るけど」
「それ先言えよ」
とコケるルビー。
「じゃあ、名古屋ってどんなとこ?」
「あぁ〜…。うぅ〜ん…。いいとこ」
「それ。その感覚」
「なるほどな!」
思わず大きな声が出る気李人。教室中の視線が気李人に集まる。
「関係ないフリ関係ないフリー」
「どうしたのかな?夏元くん?」
「いやぁ〜。教科書読んでてなるほどな!って思って。…さーせんした」
と謝って身を小さくする気李人。
「まあ。それでアイルランドは」
と授業を再開する。
「バカじゃん」
と笑うルビー。
「思わずデカい声出たわ」
「てか、そういえば夏元も名前イギリスっぽい名前よな」
天井を見ながら思い出したように言うルビー。
「あぁ気李人(ケイト)?」
「ま、女子に多い名前だけど」
「女子の名前かぁ〜。袴田ってミドルネームみたいのあったよな?たしか」
「セカンドネームね」
という話をしていると
「袴田さん」
と先生に名前を呼ばれる。
「はい」
「袴田さんのフルネーム、教えていただいてもいいですか?」
「袴田・レイ・ルビーです」
「イギリスではセカンドネームは普通ですか?」
「はい。父も兄もセカンドネームがあります」
「ちはみに由来なんて聞いてもいいかな?」
「全然大丈夫です。ルビーは、母の名前が流花(るか)なんで、響きが似てるっていうのと
私が7月生まれで誕生石がルビーっていうのもあるし
ま、今どき女性は赤みたいなのはあれだと思うんですけど
赤い宝石のトップ、女性のトップに輝くように美しく育つようにって意味と
レイは父がプロレス好きなんですけど、その好きなスーパースター、というかプロレスラーの
ルチャ、あぁ、マスクマンの名前をいただいたっていうのと
レイって響きは日本の名前っぽいから、馴染みやすいんじゃないかっていう、やつです」
「すごい。思ったよりも意味が多いんですね。ご両親から相当愛されてますね。ありがとうございます。
じゃ、基本的にはルビーという名前だけど、レイって名前で呼んでもいいっていうこと、ですかね?」
「そうですね。呼んで欲しいほうで呼んでもいいみたいな感じですかね」
「ありがとうございます。というようにイギリスではセカンドネームというものがあって」
と授業の一環として取り入れられた。
「オレの疑問、授業で解決したわ」
「セカンドネームの話?」
「そ。ミドルネームとセカンドネームってなにが違うん?と思ったけど」
「ま、あんま変わらんでしょ。私も知らんよ」
「でもレイって名前いいな。綺麗だわ」
「そ?ま、由来のプロレスラー男だけどね」
「あ、そうなん?」
「そ」
そんなこんなで午後の授業をすべて終えて、帰りのホームルームも終わった。
「じゃ、ルビー。私今日部活あるから」
「おぉそうか。今日美術部の日か」
「そうそう」
「じゃ、私も発声練習してかーえろ」
「待ってくれてなくていいよ?割とかかると思うし」
「おーけー。じゃ、また明日ー」
「うん。また明日ー」
「っつってもこの後またLIME飛ばすだろうけど」
「まあね」
「部活中にも飛ばすかも」
「見れたら見るわ」
「んじゃまた明日ー」
「うん。また明日ー」
と詩衣は美術室へ、ルビーは音楽室へと向かった。