ぷ 「 …… 」
ぱっと見5畳ぐらいの部屋にベッドが一つ。
格子がついた窓からは光り輝く満月がきらり。
一瞥してからふとベッドに腰掛けると、沈む感覚に飲み込まれる。
罪人への待遇としては有り得ないほど柔らかい。
ふわふわした不思議な夢に襲われていると、
微かだが辺りに音が響いた。
…かたン、
言い忘れていたが、牢屋にはプライバシーなんて物は無いらしく
窓がついている壁の反対側、
つまり扉側はほぼ全面格子が設置してあり外から丸見えの状態になっている。
ぷ 「 誰や、 」
物音に顔を向けると、確かに人影があった。
しかし月明かりが届かず、足元だけで顔は良く見えない。
? 「 … 君、 」
「 今日捕まった子… ? 」
その瞬間 。
真っ暗な闇の空間に、
まだ幼なげで、けれど何処か落ち着いていて
大人びた声が聞こえた。
ぷ 「 … ッ 」
「 王子 、、 か ? 」
俺は好奇心に身を任せ、
立ち上がりゆっくりと扉の方へ向かった。
さっきまでの気分は当に消え失せていた。
? 「 … うん、 」
「 一応ね 。 」
少し黙った後、彼はそう言う。
妙に含みのある物言いだ 、。
ぷ 「 なんや、一応て 」
「 紛れもない王子やろ? 」
そう問いければ、相手は黙りこくる。
あ 「 …… 」
ぷ 「 ちゃうん、 」
格子をがしゃ、と手で握れば
相手は怯えたように後退りし、
精一杯大人びた声で言葉を絞り出した。
あ 「 …もうすぐ 、 」
「 新しい子供が、生まれるから 。 」
ぷ 「 … 新しい子供、って… 」
「 王子の兄弟 ? 」
彼は小さくかぶりを振ったようだった。
あ 「 違うお母様だから、血は繋がってない 。 」
「 だから … 義理の弟みたいな 、 」
なるほど、と納得してから疑問が浮かんでくる。
弟が出来るならそれはきっと良い事だ。
しかし彼の今の言い方であれば、
弟が出来る事で彼が王子ではなくなると言う事になる。。
ぷ 「 なんで弟がおると王子じゃないん 。 」
あ 「 … お父様は、 」
「 その子をあとつぎ、に… げほ、゛っ、 」
王子は重い咳を繰り返した。
ぷ 「 … 大丈夫か 、 ? 」
あ 「 だいじょう …ぶ、…けほ っ、゛ 」
「 ぉれは、… 小さい頃から体も弱くて、部屋に篭りがちだし 、 」
「 しょうがないと思ってるよ 。( 苦笑 」
そのあまりの子供らしくない声に、
俺は言葉を失う。
ぷ 「 … 長男がなるもんやろ、王って 」
「 王子の意見はどうなるん 」
あ 「 、俺は全然いいの 、っ 」
「 きっと弟の方がしっかりした事やってくれるから 。 」
鼻から抜けるような声に腹が立った。
まだまだ感情を作ることに慣れていないのだろう。
大人みたいに上辺ばかり取り繕って 、
心底馬鹿馬鹿しい 。
あ 「 … ねぇ、 」
ぷ 「 … なんや 」
あ 「 俺に会いたかったってほんと ? 」
何処か喜びが滲み出る声。
これほど感情が読み取りやすいのは如何なものかと思う。
ぷ 「 ん 、ぉ… 」
「 せやったな 、そういや 」
あ 「 … なんで 、? 」
ぷ 「 …騒ぐなよ、 」
「 俺は、お前を _____ 。 」
… 扉の向こうの王子は、黙ったままだった。
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