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うわ、すごく熱量の高い回でしたね…! 二人が互いに飢えていた「何か」を埋め合うように重なる夜の描写が、ただの肉体関係じゃなくて、人生の欠落を埋めるような切実さで描かれていて、心臓がぎゅっとなりました。特に「初めて」の痛みや戸惑いを挟みつつ、最後に「愛してる」と自然に言える関係に至る流れが、本当に丁寧で美しかったです。彩純たちのやり取りでほっこりしたのも良かった。
花崎圭一と春山優香は二人共顔を紅くしながら、そそくさと港公園を後にした。祝福の拍手を背中に受けながら……。
中には指笛の音や、「お幸せにーっ!」、「彼女大切にねーっ!」などの声も挙がっていた。
とりあえず公園を出て通りを歩く二人。
いつの間にか手を繋ぎながら、当然一度も離すことなく歩いていた。
ある意味お互い望んでいたとおり……しかし急転直下な展開に、圭一も優香も冷静を保ちながら、パニックに陥っていた。
いや、落ち着けと自身に呼びかけても、さっさとさっきの続きをしたいという気持ちが雪崩のように押し寄せていると言ったほうが正確か。
そもそも、優香自身がそれまで恋愛経験など皆無である。
何度か優香を狙う男達からアプローチされたことはあった。
もちろん、狙ってきた男達も優香をおだてる言葉として、圭一と同じく「綺麗だ。」などの言葉を並べてくる。
しかし、優香は終始無表情で返事も素っ気なく、誰かと仲良くなる足掛りの趣味は少数派なものばかりである。
ましてや、物心ついた時から側には麗奈という瓜二つの女がおり、明るく社交的で、多弁である麗奈に皆流れてしまう。
根気強く優香を口説こうとする者は一人もいなかった。
元々優香は無精者な面もあるし、気が向かないと本腰入れようなどという気分にはなれない。ここまでの人生、親と麗奈に流されるように高校大学と進んでいくだけであった。
一方の圭一も、半ば似たようなものである。
圭一自身が述べたように、花崎の分家という恵まれた環境から一転、明日に食う物の心配をする日々を過ごすことになった。
学校でクラスメイト達がゲームの話やら、お誕生日会の話やら、そんなものに到底ついていけるはずもなかった。
勿論、中学生になる頃には年相応に女の身体を欲することはあったが、女と喫茶店、ショッピングモールのフードコートなどで過ごす資金すらない有様であった。
せいぜいクラスメイトに誘われて、当時は「裏ビデオ」と呼ばれていたものを鑑賞するぐらい。
とにもかくにも、学力特待試験を受けるためにひたすら勉強した。
高校に上がると同時に母が倒れ、そのまま亡くなってしまった。
かつて父の部下だった男……今はNightFlowerのマスターをしている男が資金援助や生活のアドバイスをしてくれた。
高校は学費や資格習得の資金のためにアルバイトをするしかなかった。もちろん遊ぶ金などない。
漫画やゲームのような学生時代の「青春」など、圭一には遠い世界の話に他ならなかった。
社会人になってようやく人並みの水準に辿り着けたぐらいだ。
後はちょっとしたきっかけで、何人かの女と寝たことはあった。
しかし、とりあえずの性欲は満たされても、何かが足りない。満たされるかと思いきや、ますます足りない。
恐らくは女から得れるはずの、その何かに圭一はずっと飢えていた。
二人はしばらく歩くと、ありふれた大手チェーン系のビジネスホテルに辿り着いた。
幸いにも二人用の部屋に空きがあり、すぐさまチェックインを済ました。
鍵を受け取るなり、足早にエレベーターに乗り込む。
エレベーターの中でも手を繋ぎっぱなしのまま、二人は無言だった。
部屋はフロントから数階上がったところ……時間にすれば三分ないし二分も経っていないはず。
しかし、エレベーターが停まるまでの時間がやけに長く感じた。
逸る気持ちが逆に時を遅くさせているのだろうか。
エレベーターの扉が開き、圭一は僅か数メートル先にある自分達の部屋まで、早足で移動する。
うっかりヒールを履いている優香を強引に走らせてしまう。
圭一は震える手で部屋の鍵を開けた。
二人が部屋に入る。
扉が閉まり切るのが先か、はたまた圭一が優香を抱き寄せるのが先か……?
二人は再び……飢えた肉食獣が互いに喰い合うように、まさしく貪るようにキスをしだした。
お互いに失い……あるいは逃した「青春」……はたまた圭一が足りないと思っていた「何か」に喰らいつくように。
もうどれくらいの時間、唇が触れる離れるを繰り返しただろうか?
圭一が、優香のスーツを……スカートを……優香の唇に喰らいつきながら、手さぐりで脱がす。
優香のシャツのボタンを一つ一つ、興奮で震えが止まない手で外していく。
シャツを開くと、深夜の雪原のように穏やかで色白な肌と、黒いレースのブラジャーが目に入る。
圭一は優香のブラジャーを上手く外せない。
我慢しきれなくなって、強引に上にずらすと、優香の胸が露わになる。
圭一はしばし優香の胸を眺めると、優香の乳首に吸い付いた。
飢えた赤子のように夢中で喰らいつく圭一を、優香は途中で制止した。
「…………ま、待って…。」
「…………な、なに?」
「……シャワーいかせて。」
「……あ、ああ。」
優香の声でようやく落ち着きを戻した圭一。
優香はトボトボと、乱れて中途半端に脱げた服を引きずりながら、少し歩いて服を脱ぎだす。
「…………先入って。」
優香にそう言われて、圭一はようやくスーツやら下着やらを脱ぐと、部屋の隅に投げ捨てた。
その間、優香は圭一に背を向けて、服を脱いでいた。
逸る気持ちを抑えながら、圭一はシャワーを浴びる。
そそくさと汗を流し、乱雑にボディソープを身体に擦り付けて流した。
身体を拭いて腰にタオルを巻き付ける。
ドアを開けると、白いタオル一枚を巻いただけの姿の優香が立っていた。
優香はいつもの無表情まま下を向いていた。
圭一とすれ違うようにバスルームに入ると、
「……待ってて。」
そう一言口にして、ドアを閉めた。
圭一はベッドに腰掛ける。
落ち着いて見てみると、圭一達が入った部屋は白い壁紙を基調とした、読書灯を挟んでシングルベッドが二つ並ぶ、ありふれたホテルの部屋だった。
部屋の空調の音と、カーテンで遮られた窓越しに車の行き交う音、そして優香がシャワーを浴びている音が鈍く響いていた。
水の音が止まり、バスルームの中を優香が歩く音が聞こえる。
何かガサゴソと音が続いたかと思うと、ようやくドアが開き、優香が出てきた。
タオル一枚巻いただけの優香の姿を見つめる圭一。
「………電気消して。」
優香が言われて、圭一は慌てて部屋を暗くした。
圭一は立ち上がり、優香に歩み寄る。
暗く狭い部屋の中、一人の男と一人の女が向かいあっていた。
圭一は僅かに窓やバスルームの隙間から漏れる光にうかんだ優香を見つめる。
改めて、優香を「綺麗だ。」と心の中でつぶやく。
一方の優香は右手でタオルのつなぎ目をつかみながら、俯いていた。
暗くてハッキリはわからないが、恐らくは普段誰にも見せたことがないほど、頬や耳が紅潮している。
「…………見すぎ。」
「だって、優香が綺麗だから。」
「…………そればっかり。」
「ダメかい?」
「…………これからも続けて。」
「…………。」
「…………。」
圭一は優香を抱き寄せると、再びキスをした。
唇同士の触れ合いは、すぐに口を開けてお互いに舌を絡め合い、唾液を交換し合う。
どちらからともなく動き始めると、二人同時にベッドに倒れ込んだ。
仰向けになった優香の身体に巻かれたタオルを開く。
先程の続きとばかりに、圭一は優香の胸を掴み、乳首に吸い付く。
優香は無表情で……しかしどこか穏やかに……そっと、右手で圭一の後頭部を撫でる。
ひとしきり優香の胸を味わうと、圭一の頭は優香の下腹部に近付いていく。
胸から下腹部へとずれていく圭一の鼻は、優香の身体の匂いを味わっていた。
優香の身体から直に発せられる匂いを通じて、優香という存在を知ろうとしていた。
下腹部へと辿り着いた圭一の唇と舌は、さらに優香の脚と脚の間へと滑り込んでいく。
同時に手で優香の足首を押して膝を曲げさせて、脚を開かせた。
優香の秘部……。
圭一は暗くてよくわからない優香の秘部を、人差し指で触って確かめる。
既に奥のほうから僅かに粘り気のある液体が染み出てきているのがわかった。
圭一は優香の右脚の内腿に唇を当てると、そのまま脚の間へと唇をずらしていく。
唇か優香の秘部に辿り着くと、最後の抵抗とばかりに……もちろんそういう意識があるはずもないが……閉じている薄いヒダを舌で掻き分ける。
そして、舌先に力を込めると、優香の秘部を上下に舐めだした。
舌先は最初は秘部の奥へと繋がる場所を僅かに行き来するが……そこからしばらくして上側の突起に辿り着く。
舌先が優香の秘部の突起を転がすように弄くり始めると、優香は身体を捻りながら、腰を徐々に浮かせていた。
この時、圭一からは優香の顔は見えなかったが、一体どういう表情をしているのかが少し気になった。
優香の秘部が先ほどよりも湿り気が強くなってきたことがわかると、圭一の舌は、ようやく優香の秘部から離れた。
その途端に釣り糸が切れたように、捻っていた身体は戻り、浮いた腰はベッドの上に落ちる。
「じゃあ……優香、入れるよ。」
「…………うん。」
優香は脚を広げ、圭一は腰を近づける。
「…………待って。」
「……え?なに?」
「…………避妊。」
「しまった。」という顔をする圭一。
圭一の表情を読み取ってか、優香はしばし逡巡した後……
「…………いい。」
「え?」
「…………多分、大丈夫。」
もちろん圭一は今さら止める気など毛頭なかっただろうし、それは優香も同じだった。
優香の許しをもらって、圭一は興奮冷めやらぬまま挿入し始める。
「…………うッ。」
無表情だった優香が思わず顔をしかめる。
「…………痛い……もっとゆっくり。」
「え?ああ……。」
「…………初めて。」
「え?そうなのか……?」
「…………。」
圭一は逸る気持ちを抑えながら、優香を気遣って動きを止める。
圭一自身女を抱いたことが何度かあるとはいえ、
それは男のものに慣れた身体の女のこと。
処女を抱くのは初めてだった。
圭一は少し戸惑いながらも、じわじわと少しずつ奥へと突き進めていく。
「…………いたッ。」
優香の中の一番奥を突いた時、優香が思わず声を出した。
「あ…………。」
「…………。」
「…………優香?」
「…………良くなってきた。」
「あ、ああ……それじゃあ。」
しばし優香の奥に辿り着いて止まっていた圭一は、ゆっくりとズルズルと引きずるように動き、またゆっくり突くを繰り返す。
優香が痛さを感じにくくなったであろうことを見計らうと、圭一は動きを少しずつ早めていった。
圭一は感じていた。
避妊具なしの感覚を……。
優香の体内の温かさを……粘膜の感触を……。
それまで、世の男どもが「避妊しない」というリスクを後回しにしてでも、目の前の「悦楽」という餌に食いつき、結果、予定を狂わせてしまう理由を理解した。
そして、それは今の圭一も同じであることに、圭一自身は気付いているであろうか?
それはさておき、圭一は優香の肩を下から上に巻くように抱えると、対する優香は圭一の首の後ろに腕を回し、二人は身体を重なり合わせていた。
「…………うっ……もう……。」
圭一に限界が来ていた。
「…………いい?優香?」
「…………。」
優香は圭一の言葉に頷くだけだった。
「…………うッッ!」
優香が頷いてから少しして、圭一の腰はビクビクと震え、優香の中に精液を流し込んでいた。
精液を流し込み終えると、またもや二人は唇を重ね合わせ、舌で互いの唾液を絡ませ合っていた。
圭一が離れようとすると、逆に優香は圭一の背に爪を食い込ませて、引き寄せた。
「…………もう少し……このまま。」
「……………………。」
シングルベッドの上で、圭一と優香は繋がったまま、静かに余韻を楽しんでいた。
圭一はこの時ようやく気付いた。
かつて抱いた女にはなくて、優香にはある「何か」とは何かを……。
圭一はずっと飢えていた。「愛」というものに。
それが今、圭一は理解……実感できていた。
ようやく繋がりを解くと、圭一は優香を腕枕し、虚空を眺めていた。
シングルベッドの上で、仰向けの圭一に寄り添う優香。
優香がベッドから落ちないように、手を優香の肩に回して支える。
優香も圭一に半身を預け、離れないようにしていた。
しばらくしてから、圭一は少し笑った。
「…………は、ははっ。」
「…………何が可笑しい?」
「…………ああ、いや……何と言えばいいか……『事実は小説より奇なり』って、こういうことを言うんだろうなって。」
「…………そう。」
「…………少し前まで、復讐のための相手と……今こうやって一緒にいる。」
「…………これで、復讐出来た?」
「…………出来たのかな?失敗したのかな?」
父親の敵の娘と愛し合う。
それは半ば本来の目的を達成したとも言えるし、優香を殺せなかったことで……いや、優香を愛した時点で失敗したとも言える。
しかし、圭一の心境は……
「…………いや、やっぱりどうでもいいや。」
「…………。」
「…………優香。」
「…………なに?」
「…………綺麗だ。」
「…………。」
「…………愛してる。」
「…………私も。」
互いに優しく、少し恥ずかしげに微笑み合うと、圭一と優香は再び唇を重ね合わた。
* * *
「あの日、圭一と初めて一緒に過ごした夜……。圭一……本当に激しかった。」
「結局、朝まで4回も……。」
懐かしげに自分の情事の思い出を、無表情でさらっと話す優香。
「わー!」
「その後は?その後は?」
少し恥ずかしげに口元を隠しながら、しかしニヤニヤとした表情を隠せない姫乃と香宝が囃し立てる。
「も、も、も……もう、そこらへんは言わなくていいから!」
親の情事の話を聞かされて、彩純一人だけ「苦虫を噛み潰したような顔」をしていた。
ただでさえ、普通ではない自分の生い立ちを知らされているのだから、彩純にはたまったものではない。
「あれ?でも、それだと……なんで彩純は優香さんの子供として生まれてないの?」
姫乃が気付いたことを言った。
「……まだ続きがある。」
優香は再び、彩純が生まれるまでの経緯を話し始めた。
つづく
#『彼』の行く末
鐘寺 実昼
375
#オリキャラ
霰❄️
61
79
#短編
QuartoMew
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