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愛じゃない。
彼氏が浮気しているのは知っていた。
冷たい態度。
知らない女の人からのメール。
友だちと遊びに行くと言って、ついて行ってみると、女の人と歩いているのだって見た。
それでもあなたのことが好きだった。
「美和、三万貸して?」
彼氏の光輝はいつも私にお金を借りる。
友だちからはそんな彼氏、別れたほうがいいと言われた。
でも
「サンキュー。美和のこと大好き」
そう言っていつも光輝は私のことを抱きしめてくる。
どの人にも光輝は好きと言っているのであろう。
でも光輝に優しく抱きしめられると光輝の特別でいたいと思ってしまうのだ。
私は光輝の一番じゃない、
こんなの愛じゃない、そう思っていても私は光輝が好きだった。
今日も光輝は友達と遊びに行くと言って出かけていった。
どうせ女と会ってくるのだろう。
「行かないで。」そう言えなかった。
光輝との関係が壊れるのが嫌だったから。
雨が降り出した。
光輝は傘を持っていっていない。
光輝に会いに行ってやろうと思い、わざと傘を一本だけ持って玄関を出た。
光輝と相合傘をしたかったから。
「こうきっ…」
そう言いかけた時、光輝は女の人と一緒にいて何か話していた。
「こうきくんって、彼女いるの~?」
「いな…」
「光輝!」
光輝の声を遮るようにして名前を呼んだ。
「傘、持ってきた。」
「ありがと…」
私が来ると女の人は「なんだ、彼女いるじゃん」と言って帰っていった。
光輝は少し不満そうな顔をしている。
「何してくれてんだよ」とでも言いたげに…
…今、絶対いないって言おうとしたよね。
光輝と二人で相合傘をしながら帰っていると
「…ったく、普通は2本持ってくるだろ」
と光輝が言った。
「…ごめん」
ただ、光輝は文句を言うものの、傘を持ってくれているし、自分の肩を濡らして私を濡らさないようにしてくれている。
…ばか。もっと好きになっちゃうじゃん。
濡れたので家に帰ってシャワーを浴び、髪を拭いていると、
光輝はまた私にお金を貸してほしいと頼んできた。
私は迷わず光輝にお金を渡した。
また光輝は私を抱きしめる。
私は光輝にお金を渡すことで光輝から愛を得られる。
たとえ、この愛が間違っていると分かっていても。
光輝に私を必要としてほしかったから。
ベランダに出て光輝は煙草を吸い始めた。
その光輝の背中に向かって言った。
「ねえ、光輝、浮気してる?」
「してないよ」
光輝は煙草をくわえながらそう言った。
…嘘つき。
「ねえ、光輝。光輝はわたしのこと好き?」
光輝が振り返って私の顔を見た。
「さっきからヘンなことばっかり言う。美和のこと好きに決まってるから浮気もするわけないじゃん」
笑顔でそう言う。
「好きだよ」
そう言ってする口づけは苦い煙草の味がした。
ねえ、好きって言わないでよ。
私のことなんて好きじゃないくせに。