前回の続きです
「強請ったのはそっちだから、!」
そう言い捨てたかなめは、俺をベッドに押し倒した。先ほどまでの余裕に満ちた顔は見る影もなくて優越感を覚える。こんな時でも片手は俺の頭に添えられていて、その気遣いに柄にもなく胸が高鳴った。
目を逸らしたら、キスをされた。驚いて反射的に顔を見ると、再び目が合う。美しいライトグリーンが細められ弧を描いた。
そのまま深く口づけを交わす。舌を絡ませて、歯列を丁寧になぞられる。上顎を擦られると快感で高い声が漏れた。
「ん、はあっ、う、♡」
何十秒もそうしてから、唇を離す。口の端に垂れた唾液を舐め取ると、かなめが顔を背けた。
目を伏せ、目を合わせないまま言う。霜が降りたように真っ白な睫毛が瞬いた。
「アルケー、血、吸わないの?」
かなめは薄手のシャツの襟ぐりを引っ張り、首筋を見せた。首の根元には牙の跡が二つ付いている。言うまでもなく、俺が付けたものだ。
前述した通り、スーパームーンによる発情期は番のいる吸血鬼にもれなく訪れるもの。では何故番がいるかわかるのかと言えば、それは『契約』のためだった。
吸血鬼同士なら互いの血を吸う。俺たちのような吸血鬼と人間なら吸血鬼が人間の血を吸い、さらに心臓を共有することで契約は結ばれ、心身ともに番となるのだ。心臓の共有とは、寿命の共有。俺は不死では無くなるが、かなめと死ぬまで一緒に生きられる。番と添い遂げることは、吸血鬼にとって、また俺にとっても最上の幸せだった。
定期的に番の血を吸うことは、契約の更新と同じことだ。
ただ、それ以上に。
「飲みたい、吸わせてほしい、♡」
「あっは、アルケー涎垂れてんじゃん
そんなに期待した?」
いいよ、ほら。
少年の面影を残した声が耳許で妖艶に囁く。もう耐えられなくて、首筋を舐めてから牙をそっと突き立てた。皮膚の破れる感覚、次いで──匂いだけで酩酊してしまうような、甘い甘い血の味。
吸血行為は契約更新のためだけではなく、いや寧ろ更新がおまけと言ったって良かった。人間の血液は、吸血鬼にとってはどんな料理にも勝る御馳走だから。
とろみのあるそれを口に含むと、味蕾に血液特有の苦味を感じる。けれどそれは一瞬で、すぐにぶわりと甘さが口の中に広がった。まるで度数の高いアルコール飲料を飲んだように、嚥下する度に頭がくらくらして、思考に靄がかかっていく。
しばらく夢中で吸っていると、頭上から咎めるような声が聞こえた。
「ねぇ、今日はもう終わり
…俺だって我慢してるんだけど」
目だけで了承の意を伝え、渋々牙を抜いた。再び押し倒される。服越しでもかなめのそれが硬くなっているのがわかった。
緩くキスをしながらダークグレーのトレーナーを脱ぎ、ベッドの下に放り捨てた。興奮したせいか手つきが覚束なく時間がかかってしまった。焦れたかなめが熱い吐息を零して、それでまた身体が痺れて悪循環。
ボトムスも脱ぎ捨て裸になるまでに、随分時間が経ったような気がする。
「指、挿れるね」
「っう♡ ん、あ、はぁ♡」
先ほどバスルームで解したナカをかなめの指が侵す。やっとの刺激に思わず声が漏れる。でも、まだ足りない。発情した身体はあの決定的な快感を待ち望んでいた。
「はやくほしい…も、挿れろよ、♡」
「っ、でも」
はしたない、魔王らしからぬお強請りに、羞恥で顔がかつてないほど熱くなり、生理的な涙が零れる。
だが、魔王失格の言葉を口にする自分に、どこか興奮してもいた。自分の尊厳を自分で踏みにじることに快楽を覚えるなんておかしくて、でも気持ちよくて、再びかなめの瞳を見つめ言う。
「ナカ、うめてくれ…頼むから、♡」
一刻も早くあの熱が欲しくて縋るように言うと、脚を大胆に開き何回も彼を受け入れ赤く染まったそこを見せつけた。
「…ほんっとに、ああ、もう!」
珍しく声を荒げたかなめに優越を感じたのも一瞬で、すぐに思考は快楽に飲まれた。
「ん、はあっ♡ きた♡♡」
求めていた大きな質量がナカを埋めて、それだけで軽くイってしまった。
かなめは、それが馴染むのを待ってからゆっくり動き始める。でも、挿入という快感の最高到達点を知ってしまってからは、その刺激だって物足りない。
「あ♡ くぅ、んん♡
な、もっとぉ♡ 足りないんだよ♡」
「何、魔王様ずいぶん素直じゃん
いいこにはご褒美、あげる、!」
「っ〜〜〜♡♡♡ ぁ、イく♡ かなめ♡
イっちゃう♡♡ あああっ♡♡♡♡」
眼の前で火花が弾けた。と思ったら、その在り処は体内の、直腸の奥の奥で、一瞬遅れてそれが快感だと理解する。気づいた時には前と後ろ両方でイっていて、腹の上を精液が汚し全身が甘い快楽に侵されていた。
絶頂の瞬間だろうか、無意識にかなめに抱きついていた手を解く。こんなに深いところで繋がっているのに肌と肌との表面での触れ合いが気恥ずかしくて、こっそり顔を盗み見ると、からかいの色を含んだ瞳と目が合って悔しかった。
俺がイったところで律動は止まらず、刺激が与えられ続ける。さっきまでは欲しくてしょうがなかった快感が、今はキャパオーバーでもう受け止めきれない。
それなのに、開きっぱなしの口からは蕩けた言葉が溢れた。
「あっ♡ くぁ、んっ♡ ああ、またイく♡」
「っはは、ほんとアルケーってМだよね
魔王とか言ってる癖にマゾとか、笑えるw」
「っ♡ そんなこと、なあっ♡」
「無いわけ無いじゃん、今だってМって言われて
興奮したんでしょ、ねぇ、♡」
そう言われると同時に喉元を噛まれた。
また火花が舞う。鋭い痛みと、噛まれる側、いつもとは逆の立場になった事とで高められた官能が溢れ出す。
「っおお♡♡♡ ひゃい♡ こ〜ふん、したっ♡
しましたあ♡♡」
溢れ出してしまったからもう取り繕うことなんてできなくて、みっともない声がとめどなく口をつく。その汚い声に興奮しているマゾヒストの己を自覚して、もっと声が大きくなった。
「かわいい、アルケー、っ、そろそろだすよ」
「ああ、ナカにくれ♡ください♡♡」
一際ピストンが激しくなる。奥を抉るように突かれて、頭が真っ白に染まっていく。
「くっ、はあ…」
「おお♡ イく♡ イく♡♡ っあ、〜〜♡♡♡」
かなめが果てると同時に俺も絶頂した。奥に精液の流れ込む感覚にふと幸せだと考えて、快楽に押し流された。
視界が数回明滅する。意識が暗転する間際、カーテンの隙間から満月が覗いていたのが見えた。紺色の空は先ほどより深い。うつくしい夜だった。
スクロールお疲れさまでした✨
前回の投稿、たくさんの💗
ありがとうございました!すごく嬉しかったです
本垢にもぜひ来てください!アカウントはご要望があれば教えるつもりです
次に投稿するCPはコメントで多かったものにするので、ぜひコメントお願いします🙇
💗💬もお願いします
ではでは~👋
コメント
1件
とても面白かったです。