テラーノベル
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一連の事案の黒幕がオルフェウスだという桜警視の言い方に、パルタ共和国当局は首を傾げた。
「確かに噂には聞いたことがあるが……おい、PMCホライズンの資料を持ってこい!」
「資料?」
「国連がPMCホライズンに定期の立ち入り検査をした時に内部を撮影した写真だ」
木のテーブルにファイルが広げられると、そこに写っていた文書には英文字が刻印されていた。
「オルフェウス」
「聴取記録も残ってる。当時のPMCホライズンの広報官は作戦名だとごまかしたが」
「作戦名でないのなら、組織名?」
桜警視は勢いよく立ち上がり、内務省庁舎に国際電話はないか、と言う。
「落ち着けよ、急にどうした」
パルタ当局が制止する間もなく、桜警視は係官に電話を借りに行った。
長い。
一同がコーヒーを飲み干した頃、ようやく戻ってきた桜警視は開口一番叫んだ。
「同じなんです! オルフェウスという文字が!」
日本の警視庁を襲撃しザウルを拉致しようとした特殊部隊の持っていた端末の中にオルフェウスの綴りがあったというではないか。
「エーデルシュタイン当局と襲撃事件の関係は!?」
「警視庁公安部が捜査にあたっていますが、オルフェウスなる組織が関係あるのかも」
「世界各国の地下には世界秘密結社オルフェウスの地下政府がある」
そう言ったのは日向竜介だった。
「え! 何!?」
「いや、ただの都市伝説ですよ。ネットじゃ有名っすよ」
「なんだよ驚かせるな」
大河内が日向を叱る。
「けれど、確かなことは、警視庁を襲撃した特殊部隊と、僕らを襲撃した民間軍事会社PMCホライズンが同じオルフェウスという語を使っているということ」
桜警視が話をまとめる。
「日本の警視庁が特殊部隊に襲撃されたと言うが、PMCホライズンの特殊部隊ではないのか?」
パルタ内務警察当局は当然の疑問を呈する。
「いえ、特殊部隊は全員日本人でした」
「謎だな」
大河内は椅子に座り直し、ため息をついた。
* *
パルタ共和国内務省庁舎で設備を借り、桜警視たち公安特別捜査隊は政府側担当者の乃木康信危機管理対策官に中間報告を入れる。
「ずいぶんと派手な大立ち回りをしてくれたな」
開口一番、乃木の台詞がそれだった。
「なるほど。民間軍事会社PMCホライズンと警視庁襲撃犯は別物だが、同じオルフェウスの語を使っていた、と」
乃木のペンを持つ手が止まる。
「それだけか?」
桜警視は冷や汗をかく。
「まあ、君たちにはエーデルシュタインに渡ってもらうのだから、あまりパルタに執着してもいられんか」
「エーデルシュタインにはタウロン大尉が引き続き同行します」
「わかった」
通信は、終わった。
* *
パルタ首都空港からアメリカに渡り、そこから欧州行きの便に乗る公安特別捜査隊。
それにしても、タウロンはよく働き気のきくエージェントだと、桜警視たちは思う。
日向竜介は機内でエーデルシュタイン王国の予習をしていた。
エーデルシュタイン王国では、欧州の山々に位置する古風な王国だという。
「身分制の貴族社会なのかな?」
「いや、ファイエル国王は開明的な方で、選挙で選ばれた議会を設置しているらしい。もっとも首相にあたる宰相は貴族から任命しているが」
大河内は政治にもある程度詳しかった。
「気をつけろ」
だが桜祐警視は警告する。
「エーデルシュタイン王国から黒部総理大臣の警護プランが漏れたことは確実だ。あまり揚げ足を取られないようにしてくれよ」
飛行機がアルプスの山々を飛び越えて、雲海に降下する。雲海を抜ければ、渓谷の中に街並みらしきものが見えた。
* *
おとぎ話のような城では、エーデルシュタイン王室のうら若き姫君、レリア・エーデルシュタインが、はるばる日本からやって来た公安特別捜査隊に会いたがっていた。
レリアは侍女に絹のような金髪を梳かしてもらいながら、鏡越しに、扉の向こうの宰相に問いかける。
「どうしていけませんの?」
「反対に問いますが、殿下のお手を煩わせることではないと思うのですが」
制止するのは宰相のマーゲル侯爵だ。
姫君は単に桜警視らに会いたいから我儘を通しているのではない。父王ファイエル国王から、賓客の接遇を見習い、王室の公務分担を図ろうとしているのだ。
宰相マーゲルとは国政の実権をめぐり、静かな争いが繰り広げられている。
「父上の仰る通り! 日本は首相が矢で打たれるような危ない国ではありませんか! 殿下がそのような国の者と会うなど」
父上の仰る通り! というのは、宰相筆頭秘書官にしてマーゲルの実の息子、マルス男爵の口癖だ。
自分はこのような軟弱者と政略結婚しなければならないのか、とレリアは肩を落とす。
「私は、桜警視たちと会います」
だがレリアはきっぱりと言った。
「殿下の御心のままに」
マーゲル侯爵が辞去し、少し遅れてマルス男爵が退室する。
通路から美青年の騎士がやってきた。彼は宰相と筆頭秘書官にこうべを垂れ、通り道を譲る。
マルス男爵は騎士を睨みつけ、舌打ちした。
この騎士はクラウス。彼こそ、近衛騎士団の有望株であり、レリア王女の寵愛を賜る美男子であったからだ。
コメント
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第5話、一気に世界が広がってワクワクしました! オルフェウスの謎が国境を越えて繋がっていく展開、ゾクゾクしますね。そして新たに登場したレリア王女の、宰相に「私は会います」と言い切る気丈さが本当に素敵。美青年騎士クラウスとの関係も気になります…! 次回が待ち遠しいです🌷