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夜のリビング――
だぁのスマホから、微かにレイの声が聞こえていた。
それを囲むように、マモン、夢魔、すかーの3人が静かに座っている。
電話の向こうからは、最初はレイの低い声と、誰かと話している気配だけだった。
だぁが眉をひそめたその時、突然――
「ちが、いるよ…!どうしよう、また、また殴られら…痛い、痛い、ヤダ……ヤダ!」
ネグの震えるような声が、通話越しにはっきりと聞こえた。
マモンの体がガタッと大きく揺れた。
「――ッ!」
夢魔も、目を見開き、息を呑む。
すかーは、肩を震わせたまま、固まっていた。
その場から一歩も動けず、目を閉じ、歯を食いしばっていた。
レイの声が続く。
「大丈夫だから!!今、あの男は居ない、大丈夫、大丈夫だってば!!」
けれど、ネグの泣き声は止まらない。
「も、やだ…ッ、怖い…よ…」
その言葉に、リビングの空気が重く沈んだ。
だぁは静かにスマホを持つ手を強く握りしめながら、ただ黙って耳を傾けていた。
レイの必死な声、ネグの泣き声。
全てが、痛いほど耳に突き刺さる。
そして――しばらくして、レイが低く、掠れた声で言った。
「……悪い…話は明日にしよう……今日は無理だ…俺も、ネグも…」
そのまま、電話は切れた。
沈黙。
リビングに、ただ静けさだけが降りた。
誰もすぐには言葉を発せなかった。
マモンは拳を膝の上で固く握りしめ、視線を伏せたまま。
「……マジで……」
喉の奥から絞り出すような声で、マモンが呟いた。
「……あいつ、そんなに……」
夢魔もゆっくりと俯きながら、低く呟いた。
「……俺たちのせいだ。」
その一言に、すかーの肩がピクリと震えた。
「……」
だぁはただ静かに、ソファの背にもたれて目を閉じる。
「……ああ。」
その低い声が、やけに重たく響いた。
すかーは、顔を覆ったまま、小さく震えていた。
その姿を見ながら、マモンが怒り混じりの声で吐き出す。
「……本当に、どうすんだよ。俺たち、あいつをあそこまで……」
夢魔も同じように、苦しそうに声を漏らした。
「ネグ……過呼吸起こすくらい怯えてんだぞ……。もう……顔も、声も聞きたくないって思われてるかもしれない。」
その言葉に、すかーは深く息を吸い、かすれるような声でやっと言葉を絞り出した。
「……それでも。」
だぁがゆっくりと目を開ける。
「……それでも、俺たちは。」
すかーの手が膝の上で握りしめられていた。
「――諦めたくねぇ。」
その声は震えていたが、しっかりとした意思があった。
だぁは静かに頷いた。
「……わかってる。」
マモンも夢魔も、その言葉に何も返さず、ただ静かに頷いた。
そして――
だぁが静かに言葉を続けた。
「ネグが戻ってきた時、少しでも安心できる場所を作っておく。」
「……ああ。」
マモンの声も、夢魔の声も、静かだった。
そしてすかーも、俯いたまま、小さく、でも確かに言った。
「俺……もう一度……ちゃんと……謝りたい。」
その言葉に、だぁはすかーの肩を静かに叩いた。
「……その時は、ちゃんと伝えろ。」
「……ああ。」
4人は、何も言わずにそのまま――
リビングでしばらく、静かに座り続けた。
ネグの声が頭から離れないまま、ただひたすらに。