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fkr「あ、乾、ごめんね、そのへんに適当に荷物置いて。今お茶淹れるから」
編集作業の確認のために、初めて福良の家を訪れた乾。
リビングに入り、言われた通りに荷物を置こうとした乾は、コンセントのところで目を留めた。
ini(……ん?)
壁に刺さったままのケーブル。そこには、規格の違う充電器が2種類、並んで刺さっていた。 福良のスマホはiPhoneだが、隣にあるのは明らかに別の機種用だ。
ini「福良さん、手、洗っていいですか?」
fkr「いいよー、突き当たりの右」
台所からの返事を聞きながら洗面所へ向かった乾は、そこで足を止めた。 鏡の横の棚。
シャンプーとリンスのボトルが、なぜか2セットずつ並んでいる。
ini(……え、なんで2つずつあるんだ?)
一方はどこにでもある普通のボトル。
もう一方は、それとは全く違うデザインのボトル。
高級かどうかは分からないが、明らかに「もう一人の誰か」が自分の好みで置いたような佇まいだ。 さらに、コップの中には色違いの歯ブラシが、並んで2本。
ini(これ、絶対誰か住んでるだろ……)
困惑しながらリビングに戻ると、福良が「ごめん、これどかすね」とソファに置いてあった服を拾い上げた。 その時、クローゼットの扉が半分開いているのが見え、乾は息を呑んだ。
福良の少しよれたTシャツ群の端に、整然と並ぶネイビーのシンプルなシャツ。 明らかに福良の趣味ではない。
ini「……あの、福良さん。……それ、河村さんの服じゃないですか?」
fkr「え? ああ、そうだよ。あいつ、よくここで着替えるから専用のコーナー作ったんだよね」
福良は「それが何か?」という顔で、平然と笑った。
ini「専用のコーナー……? いや、それもう同棲してませんか?」
fkr「え? 同棲? ……いや、別に。河村が勝手に置いていくだけだよ?」
福良が首を傾げた、その時だった。
kwmr「……あ、乾。いたんだ。これ、買ってきたぞ」
玄関の鍵が開く音もなく、いつの間にか部屋に入ってきた河村が、コンビニの袋を提げて台所に立っていた。
足音さえ立てず、あまりに自然にそこにいる姿は、もはや「来客」のそれではない。
kwmr「福良、さっきのシャツ、洗濯終わってる?」
fkr「うん、あそこのコーナーに吊るしといたよ」
当たり前のように交わされる「洗濯」の会話。 洗面所の、用途が重複した2セットのボトル。 そして、今この瞬間も、河村は福良の冷蔵庫を勝手に開けて自分の飲み物をしまっている。
ini(……同棲してない、じゃなくて、**『籍を入れてない』**の間違いだろ……)
乾は、この部屋のどこを見ても「別の誰かの生活」が完全に共存している事実に圧倒され、ただ黙ってお茶を啜るしかなかった。
(おわり)