あとは、部屋の鍵閉めと見回りを_
今いる有明基地は第1部隊が持ち場としており、第3部隊である僕に、それほど大きな仕事はない。
基本的に実戦訓練以外では第3から持参した書類しかすることがないため、合間に自主練を挟みつつ明日こそは一撃をとると張り切っていた。
さすがにすることがなさすぎた為、長谷川さんにお願いし、隊員たちの稽古と、有明の見回りの仕事を請負(うけお)い、後者は今から推敲(すいこう)するつもりである。
すでに21時を回っており、ほとんどの隊員は自室にいることだろう。
このまま怪獣が出なければ、穏やかに今日が過ぎるのだ。
保(10号との統率も最初よりは取れてきとるが、まだまだ勝手が多いなぁ)
意思のあるスーツは10号が初めてであり、取り扱いには細心の注意が払われる。
戦いの合間も勝手に動きよるし
保(えーと、あとは第6訓練室やな)
第5訓練室の鍵閉めが終わり次の場所へ移動するため踵(かかと)を返す。
と、次の瞬間_
保「ぉ、わッ!?」
何かに襟元(えりもと)を引っ張られた
保「っ、なんや、?」
転けそうになったところを誰かに支えられる。
引っ張ったのもその人だが
とりあえず顔を上げると、見慣れたツートンカラーの前髪が見えた
保「…は?」
保「ぇ、鳴海隊長??」
そこにいた人物に驚き目を見開く
保「ぼ、僕に何か用ですか?」
鳴「…..」
彼は問いかけに答えず、こちらをじっと見据(みす)えていた
怪獣の網膜が埋め込まれた鮮やかな蘇芳(すおう)色の瞳が綺麗だと思った。
引き込まれそうな、飲み込まれそうな、そんな瞳に、少し怖いと感じたのは僕の勘違いだろうか
そのまま固まっていると
急に鳴海隊長の顔が近くなってきて
まるで噛み付くように口を開け、僕の首元に顔を埋めようとしていた
とっさに目の前の口を手で塞ぎ、勢いよく引き離した。
鳴「おい、なんだこの手」
保「なんやはこっちのセリフです」
保「こんな場所で何考えとるんですか!?」
保「だいたい、わざわざ引っ張っら__」
鳴「…..は、…のか」
保「?、なんです?」
ボソボソと呟かれ聞き取れずに聞き返す。
すると怪訝(けげん)そうな顔をしながら
鳴「亜白はいいのに、ボクはダメなのか?」
と、返された
保「は??」
思ってもいなかった言葉に目が点になる
するとさらに顔をしかめながら腕を掴まれた。
鳴「お前はほんっとうに亜白ばっかだな!」
保「..、はぁ???」
保(なんや?これは僕の理解力が足らんのか?)
鳴「お前にとって亜白とボクの違いは何だ」
鳴「強さはボクの方が上だし実績だってボクの方が凄い」
鳴「顔だっていいだろ」
保「…鳴海隊長と亜白隊長の違い、ですか 」
保「僕からしたら全然違いますが…」
鳴「だからその違いってなんだ」
保「..えーと、、(何もかも違うやろ。共通点の方が少ないわ」
鳴「…」
保「そもそも鳴海隊長と亜白隊長の共通点って防衛隊員としての立場とか強さぐらいですよね」
保「僕は強さに引かれて第3に入った訳では無いので…。もちろん強さも尊敬してますが」
鳴「…そうか、強さ以外か…」
保「、?」
鳴「じゃあ亜白のどこがいいんだ?」
保「…あの、なんなんですか?この質問攻め」
保「僕まだ仕事あるんですけど」
鳴「いいから答えろ」
保(ほんまこの人ブレへんな)
保「……僕が、第1部隊への移動を断ったのがそんなに気に入らんのですか?」
鳴「_は?」
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