暗闇の中、目隠しに包まれた元貴は、若井の声だけを頼りに呼吸していた。
「……先生、どこにいますか?」
「すぐ後ろにいる。お前の吐息……全部、聞こえてる」
耳元で囁かれるその声が、身体の奥を熱くさせていく。
手はまだ胸元にある。けれど——
「……先生の声、もっと……欲しい……もう、限界……っ」
息を震わせながら、元貴の手がゆっくりと下へと伸びていく。
シャツの裾をかき分けて、指先が肌に触れた瞬間、全身がピクリと跳ねた。
「……先生、見てて。僕が、先生の声で……壊れていくとこ……」
「大森……」
若井の声が低く、熱を帯びて落ちる。
その声に導かれながら、元貴は自分を追い詰めるように動き始めた。
「っ……あ……やばい……先生、聞こえてる……?」
「聞こえてるよ。……全部、感じてる声も、乱れてる息も」
「んっ……恥ずかしいのに、声が止まらない……っ、気持ちよすぎて……」
若井は、その声に喉を鳴らした。
目隠しをしている元貴には、彼の表情も、手の動きも、何も見えない。
それをいいことに、若井の手は、静かに自らの太腿へと滑っていく。
(……俺も、限界だ)
耳元で響く淫靡な吐息。
目隠しの向こうで懸命に耐える元貴の姿に、どうしても冷静でいられなかった。
「先生……もっと、聞かせて……お願い、追い込んで……」
「……お前、本当に壊れそうな顔してる」
若井はその耳元にそっと唇を寄せる。
息が触れただけで、元貴の肩がびくんと跳ねる。
「もっと声、あげていい。誰もいない。……俺だけに、聞かせろ」
「せん……っ、ああ……っ、もう、ダメ……!!」
元貴の指が自分を刻むたび、若井の声がそれを追い詰めていく。
そして、その姿に若井自身も、自らを押さえきれなくなっていく。
「……俺も、感じてるよ。お前の声、聞くだけで……どうにかなりそう」
「……っ、若井先生……」
最後の一押しのように呼ばれたその名に、若井の中で何かが弾ける。
元貴の耳元で、途切れそうな声が落ちる。
「……大森…俺の声で、乱れて…イって……」
「……っ、ぅん……っ、先生……っ、ああ……イく…っ!!」
暗闇の中、2人の熱が静かに、でも確かに爆ぜた。
触れてはいない。
けれど、誰よりも深く、重なっていた。
やがて、部屋に静寂が戻る。
目隠しのまま、肩で息をする元貴の髪に、若井がそっと手を添えた。
「……お前って、本当、どうかしてる」
「先生のせいです。……僕が好きになってしまったのも、全部、あなたが目の前にいるからです」
目隠しを解かれた瞬間、赤く染まった瞳と視線が交わる。
その奥には、まだ冷めきれない熱が宿っていた。
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早く続き 読みたいです(///∇///)