不穏なお茶会の始まり。
いつものファミレス。
席に座ると相沢先輩が話し始める。
「なんかさー夏らしいことしたくない?四人でどっか出かけようよ〜」
「あ、いいですね!あたし海とか行きたい!」
あさ美だけが賛同する。
「はあ?このメンバーで何するん?俺、相沢先輩とは友達じゃないし」
俺はグイグイ懐に入ってこようとするこの女に必死に抵抗する。
「もうあたしたち友達でしょ?響くん」
「奏ちゃんはどう思ってんの?相沢先輩のこと」
と俺は聞いた。
「えっ、ただのクラスメイト…かな」
奏ちゃん、天然すぎて爆笑。。辛辣!!
「えーちょっと藤村くんまで!友達じゃないのぉ?」
「あたしは友達だと思ってますよ、相沢先輩にはいろいろ助けてもらってますから」
あさ美が言う。
「あさ美ちゃん!あさ美ちゃんだけがあたしの味方だわ〜大好き!」
と言って、相沢先輩はあさ美の頭をなでる。
あさ美も嬉しそうに笑う。
ふぅん、本当に仲良いんだ。
「相沢先輩、彼氏いるんですよね?一緒に出かけたりしないんですか?」
奏ちゃんの様子じゃ心配無さそうだけど、一応釘を差しておくか。
「彼氏忙しいんだよね、バイトとかで」
相沢先輩の声のトーンが落ちた気がした。
「大学生なんですよね、先輩の彼氏!年上っていいなぁ」
あさ美が恋バナに食いつく。
「ふぅん、会えなくて寂しくないの?」
俺は全く興味はないが一応聞いてみる。
「そんなのでいちいち寂しがってたら、あの人の彼女なんて続けられないの」
「どういうことだよ」
「彼氏モテるから大変なんですよね!」
とあさ美が言った。
「そうそう、だから響くんみたいにいちいち嫉妬して心配してたら身が持たないのよ」
相沢先輩が嫌味ったらしく言う。
「いや、でもどんなに忙しくても奏ちゃんは俺と会う時間は作ってくれるんで。なんだかんだ愛されてるな〜って安心してます♡」
と言って俺は隣の奏ちゃんの肩にもたれかかる。
半分はホント。
嫉妬とか重い感情を見せたら嫌われるのが怖くて、奏ちゃんにはあまり言いたくない。
大事にしてくれてるのもわかってる。
だけど恋愛はいつも不安と隣り合わせだ。
「俺の方が響より嫉妬深いと思うしなぁ…だから、響に嫉妬されるのは嫌いじゃないよ」
「奏ちゃん…」
俺は奏ちゃんの目をじっと見つめる。
今ここでキスしたいくらい、なんて愛しい言葉を放つんだよ。
「ちょっと!2人の世界作るのやめてー」
相沢先輩が立ち上がり、俺達二人の腕を引き離そうとする。
「ごめんなさい、相沢先輩。俺達だけラブラブで」
「可愛い顔して毒づくなぁ、響くんは…。ねぇ、あさ美ちゃんは腹立たないの?」
「えっ、最近はこの二人のやりとり尊いなぁって思えてきました。私BL漫画好きなんで、泣けるやつ先輩にも貸しましょうか?」
「…大丈夫よ、あさ美ちゃん。新しい世界開けちゃいそうだから」
と言って相沢先輩はメニューを見始める。
「はーっ、のろけ話聞いてたらお腹すいた!皆何か頼もう」
やっと注文を始めようとした時に、知らない男女のカップルが近づいてきた。
男のほうが声を掛ける。
「桃香じゃん」
相沢先輩がびっくりした様子でその男の顔を見る。
「涼介、何してるの?ここで…今日バイトって言ってなかったっけ?」
「あー間違えてた。今日は休みだったわ」
「その人だれ?」
相沢先輩はその涼介やらと一緒にいる女の子を見て言う。
「ああ、大学の同級生。今日ゼミのグループ発表の話し合いでここに来ただけ」
同級生とやらの女子大生が会釈する。
「桃香は高校の友達と遊んでんの?高校生良いなぁ〜初々しくて」
と言いながら、その男はあさ美の方をじっと見ていた気がした。
「青春してるの、あたしも」
「邪魔して悪かったな、じゃあまた連絡するわ」
と言って涼介と女は別の席に向かっていった。
「ねぇねぇ、先輩。今の人誰?めっちゃカッコよかったですね!」
あさ美が能天気に聞く。
「あたしの彼氏」
相沢先輩が無表情で答える。
「えっ、彼氏!?でも一緒にいた女の人…あ、友達ですよね」
そんなことなかろうよ。
「どーだろー。いつもいろんな女の子連れてるから友達って言われたらそれで終わり。深く聞くと嫌がられるからさ」
「なるほど、そうやって物分かりのいい女を演じているわけだ」
俺はまた余計な言葉を発してしまう。
「響!こら」
あさ美がたしなめる。
「あの人と恋を続かせたいなら、あたしが我慢するしかないじゃない」
「それだけ好きってこと?」
俺は知りたかった。
何故悲しい恋愛をするのかと。
「そうよ、他の女がいるのもわかってる。それでも一緒にいたいの」
いつも強気な相沢先輩が弱々しく見えた。
「あんたを大事にしない奴と一緒にいてその恋に未来はあるの?」
見ると相沢先輩の目にジワジワと涙が溢れてきた。
あ、やべ。やっちまった。
やっぱりこのファミレス呪われている〜
来る度にろくなことがねぇ。
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