最終話
どかっ
「…………ぃた……、」
せっかくセンチメンタルに浸っていたのに、いきなり何者かに横腹を蹴られた。
誰だよ、そこらの不良だったらボコボコに殴り飛ばしてやりたい……、
そりゃあこんなとこで寝てる俺も悪いけどさ……。
「……ぁえ、なんか蹴った……、」
なんか蹴った、じゃねぇよ。ふわふわした喋り方しやがって。
かろうじて目を開けたが、泥酔した視界には、こちらを覗き込むぼんやりとした人影しか映らない。
くそ、どんな奴かこの目で拝んでやりたいのに……。
仕方なく、俺の横腹を蹴った『加害者』の声に、耳を澄ます他なかった。
「…………んは、」
「もぅ、おにーさんてば。こんなとこで寝てたら危ないで?」
人を揶揄うような、軽い軽い音。
でもどこか儚くて、言葉はゆらゆらと蜃気楼のように漂う。
そんな声。
微かに、ほんの微かに、俺の唇に、柔らかい何かが触れたような気がした。
あぁ、これも夢なのか。きっとそうだ。
俺が手を伸ばせば、目の前の天使は夜の闇と共に、ふっと消えてしまうんだろう?
寂しい思いは、もうたくさん。
だから、お願いだから、
夢なら早く醒めてくれ_____。
「……ん、まぶし……、朝か、、」
「ぅ、あたま……いたぃ……、、」
頭と同時に、なぜか横腹も痛い。
昨日何があったんだっけ、そもそも俺はどうやって帰って……、
情けないことに、何も覚えていない。
ことの重大さに気づくのは、もうしばらく…。
(今日はたしか、授業無かったよな……、?)
スー…スー…
(ひとりで家でゆっくりしてよー、っと……、)
スー…スー…
(そだ、久しぶり自炊しよっかな、冷蔵庫に何入ってたっけ………。)
んぅ……
(………。)
寝息が聞こえる。
(なんでだろう、俺はひとり暮らしのはずなんだけどな………。)
END
ご愛読ありがとうございました!!
コメント
28件
時差コメすぎて本当に申し訳ないです、 らせんさんの作る物語が本当に好きで😢💞 涙でぐちゃぐちゃになりながら見てました👀💫
フォローしました こうゆう感じの めちゃくちゃ好きーー
好きすぎて読み直してしまった… これもう小説出せますよ…!!!! 終わり方もめっちゃ考えられてて 本当に大好きな1作です😭👏 ありがとうございました🙌