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メイが美雪ちゃんと初めて出会ってから数カ月後、小学六年生の時。
メイは病院のベッド上にいた。
そして小さい頃の私が、ベッドの上のメイに縋りついてワンワン泣いていた。
「姉さんがあんな風に泣くもんだから、僕は泣くタイミングなんかなかったよ」
「そうだね、私、メイが死んだらどうしようって、ずっと泣いちゃった」
私はメイを抱きしめる。
「あのあと、とても辛かったね」
「うん、地獄のようだった。いきなり心臓の病気だって言われて、寝ているか、どこか外に行くときはかならず車いすに乗って誰かに付き添ってもらわないといけない。もう自由に遊べない。今思い返しても、あの時ほど辛かったことはない」
「私も、あの時ほど辛い日々は無かった、私がメイに代わってあげられれば良かったのにって」
「でも、辛かったけど、それでも死にたいとは思ってなかった。だって、姉さんがいつも僕と一緒にいてくれたからね」
「でも病院と学校はそんなに離れていなかったから、入院中、姉さんは学校終わりに毎日のようにお見舞いに来てくれたよね?」
「だって一緒にいたかったんだもん」
「僕は僕で、姉さんが学校でいじめられてないかとか、凄く心配だったけどね」
「メイのことがあって、私もクラスのみんなから同情されたよ」
「なら、僕の病気も無駄じゃなかったのかもね」
私とメイは寂しく笑いあった。
場所は変わって、蓼原の家。
自宅療養の許可が出たメイだったが、メイは入院の時と変わらず、相変わらずベッドの上だった。
メイは書斎から持ってきた本を、退屈そうな顔で読んでいた。
やがて『メイ、ただいまー』と言って、小学校から帰ってきた小さい私が部屋に入ってくる。
メイの顔がパッと明るくなった。
そして私は、今日の学校での出来事をメイに色々と話していた。
メイはメイで、今日読んでいた本について、私に色々と話してくれていた。
ママが部屋に入ってきた。その顔はとても険しかった。
『カンナ、お願いだからメイに負担をかけないで、あなたは宿題を済ませなさい』
突然ママから怒られて、しょげる私。
「自宅療養が始まったあたりで、僕と姉さんは別々の部屋にされちゃったしね」
メイはため息をついた。私はうつむく。
あの頃の母さんの事はあまり思い返したくない。
このころから母さんは私に厳しくなった。
私が家に帰ってくると、すぐ宿題しろ、中学は私立に行くんだから遊ぶ暇があったらちゃんと勉強しろって感じで。
『姉さん、だいぶ疲れてるけど、大丈夫?』
『うん、いま私立の中学校の受験のための勉強してるの』
『そうなんだ、姉さんの制服姿、楽しみだな。でも一緒に遊べないの退屈だよ』
『えへへ、受験が終わったらたくさん遊ぼうね』
そんな風に小学生の私とメイは笑い合ってた。
「それでも僕は気づいたよ、姉さんの顔がどんどん暗くなってるってことは」
「私が、メイにずっとベッタリ甘えてたのが悪いんだよ」
「違うよ! 僕は姉さんがいてくれたから生きることができた。それを母さんが分かってくれてなかっただけで」
「メイ、そんな風にママのこと悪く言わないで。悲しいよ……」
私はメイを抱きしめた。
「姉さんは優しいよね」
メイの手が私の手に触れる。
「でも、ほんとにバカだ……」