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「そういえば、サラフェとキルバギリーは、メイリやコイハと話せたか?」
ムツキのその問いかけにサラフェはゆっくりと肯いた。
「はい。条件付きで許してもらえることになりました。その条件について、ムツキさんとケット・シーさんのご助力を願いたいです」
サラフェがそのように話すと、ムツキもケットも嫌な顔1つせずに首を縦に振る。
「俺にできることなら何でもしよう」
「オイラもニャ! あと、ケットはケットでいいニャ! 気軽に呼んでほしいニャ」
サラフェとキルバギリーは、詳細を告げていないにも関わらず、心強い言葉を投げかけてくれるムツキとケットに安心感を抱く。
「では、後ほど」
「いや、今すぐに話してほしい」
「え、でも、食事中ですよね? くす……ごめんなさい、まだ慣れていなくて……」
サラフェが見た通り、ムツキは真面目な顔でたまに会話に参加しているものの、食事が終わっておらずに猫から時折ご飯を口に運んでもらっている。そのギャップに思わず彼女は笑ってしまった。
「ん。気にしないでくれ。サラフェが許してもらえるのは早い方がいい。んんっ。俺にできることならさっさと解決したいじゃないか」
呪いのせいとはいえ、猫に口を拭き拭きされながら言うことではない。コイハとメイリがムツキから顔を逸らして、笑いをこらえている。他方、ナジュミネとリゥパは慣れたもので真剣な顔をして会話に頷く。そして、それまで見てしまったサラフェの表情が決壊しかけていた。
「ふぅ……じゃあ、俺からの方が早いな。本当はサラフェからと思ったけど、早く解決したいなら、言った本人が伝える方が早いだろう」
落ち着いたコイハが話に加わる。
「コイハ、ありがとう。コイハは優しいな」
「いや、そんなことはない。俺が頼んだんだから、俺が話す方が筋通っているだけだ」
「あ、コイハが不意に褒められて喜んでるね」
コイハの尻尾がパタパタと振られているのをメイリが目ざとく見つける。
「メイリ、茶化すなよ。コホン。俺がサラフェに頼んだのは、獣人族と半獣人族を樹海に置いて保護してもらえるようにハビーとケットに頼んでもらい、了承を得られ次第、彼らの誘導を率先して行ってもらうことだ」
コイハは尻尾をパタパタ振ったまま話す。ムツキの目がコイハの尻尾に向けられている。
「……なるほど。たしかに、人族が攻めてきたら問題だからな。ケット、どうだろう?」
「……ニャー。獣人族や半獣人族かニャ。……まあ、妖精族は彼らにニャにも制限を掛けてニャいから、オイラとご主人の許可があれば、問題ニャいニャ。だけど、住む場所は選べニャいニャ……」
ケットは急いで棚から手描きの地図を広げて、数匹の猫に持たせて掲げる。
「どこらへんになる?」
「ん-。危険ニャ場所ではニャいけど、ここからは遠くニャるニャ。すぐには会えニャいけど、いいかニャ?」
ケットが指し示したのは、この家とほぼ真反対にあたる樹海のあるポイントだった。ムツキにとっては、【テレポーテーション】を使えば一瞬だ。しかし、実際は獣人族であろうと普通に歩けば、直線距離でも数日かかる距離である。樹海はとても大きいのだ。
「ケット様、ムッちゃん、たとえばだけど、ここで働いてもらうってのはどう? さっき聞いた感じだと、そこまで人数いないみたいだし」
リゥパはこの話をコイハとサラフェがしていた時に元々そのつもりでいたのだろう。彼女は一つの澱みもなくそう提案する。
「……。そうだな、それもいいな。その方がコイハもメイリも安心するだろうし。ケット、どうだろう?」
「……ニャるほどニャ。たしかに獣人族や半獣人族が普段口にする食べ物も樹海より豊富かもしれニャいニャ」
ムツキとケットは少し考えた後にリゥパの提案に同意するような話を続ける。
「どうかしら? 慣れない樹海の中で過ごして魔物に襲われたり、そこに住む妖精たちとのいざこざを起こしちゃったりする可能性がありそうなら、ここの方がムッちゃんもいるし安全じゃないかしら?」
リゥパの一押しでムツキとケットは互いに見合わせて肯いた。
「そうだな。俺は構わない。そうなると、また家の増築か、もしくは、集落みたいに家をいくつか作るか」
「みんニャで家を建てるニャ!」
これでサラフェの問題はほぼ解決し、後は獣人族や半獣人族を連れてくるだけの仕事になった。
「よかったわね」
「ありがとう」
「ありがとー」
「サラフェも感謝します」
「私もこの結論に感謝しています」
メイリとコイハが尻尾をパタパタさせ、サラフェとキルバギリーは微笑む。
「リゥパ、ありがとう。気が利いて助かるな」
「ふふふ。褒められるのは嬉しいわね。あとでいっぱい、いいこいいこしてね」
「モフモフが増える……のか……妾はもっと魅力的にならねば……」
リゥパがムツキに褒められてご満悦になっている最中、ナジュミネは新たな脅威に新たな決意をするのだった。