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僕は志水陽太27歳
コーヒー屋で働いている。
将来、自分でコーヒー屋を開きたい。そのために、ここのお店で勉強させていただいている。
僕はコーヒーが好きだ。
コーヒーをもっと知りたいがために、大学院にまで行って、コーヒーのことを研究したりした。それくらい好きだ。
そう、僕の人生にはコーヒーは必要不可欠なのだ。
カランカラン
「いらっしゃいませ」
「ブラックで」
「かしこまりました」
このお客様は毎朝ブラックを頼んで、店内で飲んでいく。このお客様は恐らくαだ。
周りの目を引く容姿
見上げる程の身長
聞き心地の良い声
この特徴でαじゃないなんて言われたら、この世のαの存在価値がないほどに。
ダメ、ダメ、考え事をするな、コーヒーを淹れることに集中しろ、
そうして、僕はコーヒーを淹れ始める。
丁寧にペーパーフィルムを張り、
計量したコーヒー粉を入れ、
少量のお湯を入れて蒸らす、
そして、お湯を淹れる。
僕は最後の工程が大好きだ。しっかり、蒸らしたことで香りが濃縮され、お湯を淹れた瞬間、コーヒーの良い香りが漂ってくる。
その瞬間がたまらない。
「こちらです」
僕はそのお客様に渡す。
「ありがとう」
「ごゆっくりお過ごし下さい」
お客様は席に行った。
そのお客様は毎回、決まった席に座る。カウンター席の左から二番目。
ちょっと中途半端な気もするけれど、何かこだわりがあるのだろう。
カランカラン
「いらっしゃいませ」
朝のラッシュはもうすぐ終わる。
大変だけど、悲しい。
「アイスコーヒー下さい」
「かしこまりました」
よし、張りきって淹れるぞー!
ラッシュが終わり、コーヒーミルでコーヒー豆を砕いていた。
「陽太くーん」
「なんですか、店長?」
今、僕の名前を呼んだのは店長だ。
店長はとても優しい。
店長とは大学院の臨時講師として出会った。いつか、自分で店を開きたい、そう言ったら、ここのコーヒー屋で働かせてくれることになった。
ここのコーヒー屋が愛される理由の一つに店長が優しいからというのもあるのだろう。
「今日は、もう休憩入っちゃいな」
「え!いいんですか?」
「今日は天気がいいからね」
「じゃあ、お言葉に甘えて!」
今日はとても天気がいい。
そういう日の特別な休憩場所がある。
それは、今向かっている、隣のビルの展望台だ。
ここら辺の展望台の中では段違いの絶景が見れる。
もしかしたら見た人全員気絶するかもしれないな、
そんな事を考えていたら、展望台に着いてしまった。
…ん?
この時間は誰も居ないはずなんだけど、
はぁ、今日はこの絶景を独り占めできないのか、
そう思いながら、僕は僕より先にいた人よりも遠くの席に座った。
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