「此処なの~、友だちがやってるカフェ」
のどかがテーブルを拭いていると、そんな風子の声が聞こえてきた。
「のどかー」
と言う風子のいつもと違う口調に、さては、イケメンと来たな、と思って出ると、やはりそうだった。
のどかと一緒に、にゃあにゃあ出迎える猫たちを見た風子は一瞬、後退し、
「どうしたのっ?
今日は猫カフェ!?」
といつもの声に戻って言ってくる。
いや……今日、猫カフェで明日、猫カフェじゃないということもないだろうよ、とのどかは思っていた。
猫は今日居るなら、明日も居る。
泰親が居なくなって……
いや、本人はそこでテーブル拭いているんだが、
泰親猫が居なくなって寂しがっていたのどかの許に、綾太が一番のどかに懐いていてる自分ちのペルシャを連れてきて。
八神が白黒の野良猫を拾ってきて。
中原がミヌエットを買ってきて。
青田が実家から、雑種の真っ白な猫を連れてきて。
此処は猫屋敷になってしまったが、貴弘だけがなにも連れて来なかった。
「いやいや。
お前が俺より猫を可愛がったら困るし。
その猫がイケメンになったら困るし。
お前は少し寂しがってるくらいでちょうどいい。
俺がたっぷり慰めてやれるから」
と言って、みんなに、ケッと言われていた。
「猫なんぞ増やさなくとも、ちゃんと今まで通り、抱っこされたり、寝ているお前の上に乗ってやったりするのにのう」
と泰親は言う。
長髪を後ろで束ね、Tシャツなど着た泰親は、色は白いが、海の家にでも居そうな今風のイケメンになっていた。
機嫌よく風子が言ってくる。
「じゃあ、のどか。
なんか適当にお茶とケーキね。
……イカリソウ、入れてくれていいわよ」
入れません……と思いながら、イケメンと腕を組み、庭のテーブルに向かう風子を見送る。
「あっ、此処、此処」
と女の子たちの声が外でした。
「此処よ、犬も居る猫カフェ!」
いや、その犬は脱走してきた犬です……。
「あのー、イケメンの陰陽師が居る占いの館って此処ですか?
お茶もできるって聞いたんですけどー」
……お茶のついでに占いもできるカフェです。
そして、あの人は神主です。
などと次々押し寄せる女性客に思っていると、どすん、と奥の方から音がした。
なんだ? なんだ?
と泰親と物見高い風子と一緒に走っていくと、例の呪いの部屋に、また見たこともないイケメンが降ってきていた。
スーツ姿のその若いイケメンはキョロキョロしながら周囲を見回している。
「……泰親さん。
全然、呪い解けてないじゃないですか」
「そのようだな」
そこに外回りのついでに寄ったらしい貴弘と北村が駆けつけてきた。
貴弘がすっきりとしたそのイケメンを見て叫ぶ。
「のどかっ、そのイケメン、返してこいっ!」
「いや、何処にですか……」
苦笑いしたのどかは、まだ呆然としている、少し減ったカリカリの袋の上のイケメンに、ショップカードを渡しながら言った。
「あやかし雑草カフェ社員寮へようこそっ!
この呪いの部屋からなら、三百六十五日二十四時間、いつでも入れますよっ」
「それイケメンに限るだろ……」
「二度目は使えませんよね」
と言う貴弘と北村の言葉を背に受けながらも、のどかはめげずに言った。
「美味しい
……かもしれない、
なにか効能がある
……かもしれない雑草を用意して。
今日も皆様のお越しをお待ち申し上げておりますっ!
あやかし雑草犬猫カフェ占いの館社員寮をどうぞよろしくお願いいたしますっ」
完
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