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yn視点
「やなと、好きだよ」
今日はすにすてでの動画撮影でとあるスタジオを借りて撮影することになっていた。俺達は朝早くに集合の予定だった。俺が一番乗りで、次に来たのはおさでい。
2人で話していると、好き、なんて唐突にそんなことを告げられた。
一瞬時が止まった。が、すぐに今日がなんの日か思い出す。そう、エイプリルフールだ。
「ねぇ、バレバレ!キモい嘘やめて!」
なんて、笑いながら返す。胸に針で刺されたようなチクチクとした感覚が走る。
「ごめんごめん!俺も自分で言って引いたわ!」
とおさでいも笑い飛ばすように返事をする。
表面上では笑いながらも、俺の心の奥には泥のような重く暗いものが黒く渦巻いていた。ほんとだったらよかったのに、なんて思ってしまった。
os視点
動画の撮影中、俺は今朝の出来事への後悔がずっと頭から離れなかった。告白なんてするつもり微塵もなかった。でも、今日なら嘘でしたって誤魔化せるかも、なんて考えがふいに頭に現れて、深く考えもせず気づいた時にはもう口が動いてた。
エイプリルフールに告白なんて嘘だと思われることも、やなとが俺の告白を受け入れないことも、最初から分かっていたけれどいざ真正面から言われると自分で思っていたよりもダメージを受けた。
撮影中、やなとと目が合うと少し気まずくてすぐに逸らしてしまうし、話す時は少しぎこちなくなってしまった。
でも、今回の出来事は完全な自業自得、これで動画撮影を台無しにするのは流石にいけないと思い、なんとか撮影を乗り切った。
撮影終わり、思ったよりも撮影は早く終わり、メンバー達はそれぞれスタジオを出て行った。なんだかやなとと一緒にいるのは気まずかったので、俺はショート動画撮ってから帰るからみんな先帰ってて、とメンバーに伝え、1人スタジオに残った。
いつも人と一緒にいたがる俺が1人になろうとするのが珍しかったのか、メンバーは皆不思議そうな顔をしていたが勢いでなんとか押し切った。
1人になると余計にネガティブな思考になってしまった。嫌われてないかな、キモかったよな、友達なのに、なんて色々考え込んでしまい、気づいたらその場にしゃがみ込んでいた。
手のひらにポタポタと雨みたいに雫が落ちる。こんな情けない姿、リスナーちゃん達には絶対見せられないなぁ。
バタッ、突然背中の方にあるスタジオの扉が音を出した。
心臓が止まりそうになる。忘れ物でもしたのだろうか。誰か確認したいけれど、泣き腫らした顔を見られたくなくて振り返ることが出来ない。俺はしゃがみ込んだまま動けなかった。
「おさでい?」
1番聞きたくなかった声がした。
足音が近づいてくる。やなとは俺の近くまでくると、そのまましゃがみ込んで俺の顔を覗く。
俺は自分の腕で顔を隠した。
「……泣いてるの?大丈夫…?」
普段の元気な声とはまた違う、凄く、凄く優しい声でそう聞かれる。
涙が止まらなかった。もう服の袖はびちょびちょだった。
この人には誠実でいたい。そう思った。
「…さっき告白したでしょ」
出した声は思っていたよりずっと鼻声で自分でも少し驚いた。
「うん」
やなとが優しい顔で頷く。
「あれ、ほんと…なの」
俺は声を絞り出してそう言った。きっとこれで今までの関係ではいられなくなった。怖くてやなとの顔が見れなかった。
「おさでい、顔あげて…?」
やなとが静かにそう言った。俺は言われた通りに顔をあげる。
ちゅっ、とおでこに熱く、柔らかいものがあたる感覚がした。
「へ…?」
状況が理解できずに俺はその場で固まる。
「俺も…すきだよ…?」
と、やなとは顔を真っ赤にしながらそう言った。
yn視点
おさでいは、目をまんまるに見開いて口を開けたまま固まってしまった。恥ずかしいから早く何か言ってほしい。
そんなことを思っていると、おさでいはぎゅっと俺に抱きついた。
「ずるい……」
おさでいが俺の肩に顔を埋めながらそう言った。
「なにが?」
「俺ももっとかっこよく告白したかった……」
可愛い年下の可愛い悩みを聞き、俺は思わず口角が緩む。
「そう?可愛かったよ?」
「うるさい…」
揶揄うとちょっとムッとした顔をして、ギュッと更に抱きしめられる。
自分より大きな体に抱きしめられて少しキュンとしたのは内緒だ。
「やなとも、告白の仕方はかっこよかったけど、顔は真っ赤で可愛かったよ?」
「お願いだから忘れて……!」
掘り返されたくないところをピンポイントで掘り返される。でも、おさでいがいつもの元気を取り戻してくれたようで何よりだ。俺はフッと胸を撫で下ろした。
「さっきの告白ほんとだからね…?」
おさでいは俺の手を握り、真っ直ぐに目を見つめてそう言った。
「大丈夫、ちゃんと信じてる」
俺はそう言って笑いながら自分のポケットにあるスマホを取り出した。
スマホの時計は12時56分となっていた。
「エイプリルフールの午後は嘘ついちゃいけないからね、明日やっぱり嘘とか言わないでよ?」
俺はおさでいに悪戯にそう投げかける。
「言うわけない!俺はやなとのこと大好「ぐぅ」」
おさでいのお腹から音が聞こえてきた。
2人で目を見合わせる。それから部屋に2人の笑い声が響いた。
「ご飯食べに行こっか?」
俺はおさでいにそう提案する。
おさでいも行きたい!と笑って答えた。
2人はなに食べたい?どこ行こう?なんて笑い合いながら、春の光に満ちた街へと手を繋ぎながら踏み出した。
手のひらから伝わる温度は、どんな嘘でも誤魔化せない恋の温度だった。
コメント
2件
めっちゃ好きです!!!! これからも頑張ってください!!