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逃げ場はもうなかった。触れられるたび、キスを落とされるたびに、体の奥に火が灯っていく。
「っ……や、だ……やめろって……っ」
縛られた手首はすでに赤くなっていて、何度も無理に引いたせいで擦れている。
それをアルは優しく、まるで傷を癒すかのように唇でなぞった。
「……痛かったね。ごめん。でも……縛らなかったら、君、逃げただろ?」
「当たり前だろ……クソストーカーが……っ」
強がる声も、もはや震えていた。
シャツを剥がされた。
触れられた肌が、冷たい空気に晒される。
その上から、アルの体温が覆い被さってくる。
「ほら……俺に触れられて、こんなに熱くなってる。
本当は、感じてるくせに。……もう、素直になってよ、アーサー」
「っ……ちげぇ、こんなの……っ」
否定しようとするたび、熱がどんどん強くなっていく。
理性と本能の間で揺れる心に、アルの声が優しく刺さる。
「大丈夫。俺がぜんぶ教えてあげる。
君の気持ちも、体も、どこが気持ちいいのかも……俺が一番、知ってる」
指が、肌を滑る。
唇が、胸元に落ちる。
吐息が、耳元をかすめる。
「もう……俺のものだろ?」
「……っ……くそ……」
アーサーの目から、ぽろりと涙がこぼれた。
それを見て、アルは一瞬だけ動きを止める。
「……泣かせたくないのに……」
「でも、やめられない。……俺、君が欲しくて、ずっと狂いそうだった」
優しく、狂おしく、唇がまた重なった。
アーサーは、もう抵抗する力が残っていなかった。
体の奥に溶け込むように、アルの熱が入り込んでくる。
心も、体も、ひとつずつ侵されて――
その夜、アーサーは、逃れられないほどに“アルのもの”になった。