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「着物を久しぶりに着たら、いつもより背筋がピンと伸びた気がします」


全身を映す大きな姿見の前で、正面から着物を眺めたり、後ろを振り返って結ばれた帯を見ていたら、自然と背中が伸びるのを感じた。


「あまり和服を着られることはないのですか?」


「はい、成人式以来です」


今から十年以上も前のことがふと思い出されると、少し気恥ずかしくも感じられるみたいだった。


「まぁ、もったいない。こんなに似合われるのですから、これからはもっとお召しになられてもよいのでは」


華さんにそう言われて、十年来着ていなかった着物がまさか自分に似合っているだなんてと照れくさくなる。


「ではお着物に合うよう、髪をアップにして差し上げますから、そこの鏡の前に座られてくださいませ」


促されるままスツールに腰かけると、華さんが慣れた手つきで髪を上げて、ドレッサーのひき出《だし》から長細い木の箱を取り出した。


「このかんざしは、まだ一度も使われてない物なので」


華さんが言いながら蓋を開け、中から紅色をした丸い珊瑚のかんざしを出すと、私のまとめ髪にスッと挿し入れた。


ダンディー・ダーリン「年上の彼と、甘い恋を夢見て」

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