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「付いて来てください。案内します」
そう言ってブラックはクレープのゴミを捨てて風夜を手招きした。
「……ありがとう、Mr.ブラック」
「……私、貴方に自己紹介しましたっけ?」
その言葉で周りの時間が止まったような気がした。風夜は口を抑える。
(なんで……!?なんで僕はこいつが“Mr.ブラック”って名前なんだって分かったんだ!?)
「どうしました?」
「……な……なんで……」
風夜の声は震えていた。
「どうして……僕はブラックって分かって……」
風夜は頭を抑える。
「僕は記憶喪失になっちゃいけないから……?」
ブラックはその言葉に首を傾げる。今の風夜の状態はどこからどう見ても記憶喪失だ。
「記憶喪失になってはいけない……とは?」
「ごめん、分からない。気にしないで」
風夜の瞳はいつしか人間では無い光を宿していた。
「ここです。ここが私達が今通っている学校であり“先生”がいる【すまないスクール】です」
「【すまない……スクール】……」
風夜は呆然と呟く。ブラックはスタスタと歩き出す。これ以上風夜にいちいち付き合っていたらおかしくなりそうだ。
「ま……待ってよ」
風夜も慌ててその後を追った。
タッタッタッ……
「こんにちは、“すまない先生”」
「やぁ、ブラック。休日なのに学校に来るなんて珍しいね」
ブラックについて行き、教室に入るとグレーの長い髪を三つ編みお団子にした青年____恐らく彼がブラックの言っていた“先生”だろう____がいた。
「……“すまない先生”……彼が“先生”か?」
風夜のその問いにブラックは頷く。
「ええ、そうです。あの方が私達の“先生”、すまない先生です」
風夜はじっとすまない先生を見る。すまない先生もその視線に気付いたのか風夜をチラリと見る。そして微かに目を見開いた。そして
「……君は……」
と呟いた。風夜は首を傾げ
「どこかでお会いしたことありましたっけ?」
と問う。すまない先生は少し悲しそうな顔をした。
「“あの時”と逆の事をするなんてね」
すまない先生は肩を竦める。
「「“あの時”……?」」
風夜とブラックの声が重なった。
「そっか。僕一人で話したもんね、あの時」
すまない先生はブラックに向き直る。
「“彼”は“世界の過去を写す魔導書”さ。そうだろ?」
すまない先生はそう言って風夜に微笑みかけた。風夜はしばらく黙っていたがフルフルと首を振る。
「……分かんない……でも貴方がそういうのなら、僕はそうなのかもしれない……もう、覚えていないんだ……」
「そっか……じゃあ僕が知ってる君について話そうか。と言ってもほんの僅かだけどね」
そう前置きをして
「あれはブラック達と“君”を探す為に『−64層』に向かった時……一年くらい前かな……」
と話し始めた。