詰所に行くまで、敷地内の舗装された道を歩く。
昨日は緊張しすぎて周りの景色なんか見えてなかったけど、ここはそうだ。あそこ。
新聞などで見た、帝都大学の構内みたいな雰囲気に近いと思った。
昨日、一番最初に見た大きな洋館の建物は学舎、周りの手入れが行き届いた、植林や芝生は学生の憩いの場などを彷彿させた。
風が植物を揺らす音が聞こえ、昨日とは違う安心感が芽生える。
その中を隊服を着た人達が行き交い、杜若様に挨拶をする。そして私の髪や瞳を見てびっくりする方達がいた。きっと物珍しいのだろう。
それは仕方ないことだと、顔を上げて気にしないように努めた。
顎を引いたその視線の先には運動場みたいな広場で体を鍛えている人達や、集団で運動服を着て走っている人達もいた。
そしてそのすれ違う人達は男性ばかり。
本当に男所帯だ。
昨日ほどの緊張はないけれども、やはり私の前世がバレたら、ここに居る人達にも追いかけ回されるのだろうなぁとか思った。
しかし、杜若様の堂々としていろと言う言葉もあって『私は怪しくありません。ましてや九尾の狐でもありません』と前を向いて、前世がバレませんようにと祈りながら杜若様の横を歩くのだった。
そうして杜若様に連れて来られたのは、私が昨日一番最初に視界に入った、あの洋館の建物。白亜の建物で迫力がある。
改めて見ると四階ぐらいのビルディングに相当しそうで、目をぱちくりさせてしまうと杜若様が「その内に慣れる」と、そっと手を引いて建物の中へと案内してくれた。
中に入ると壁は白く、上を見上げれば天井が高い。
ホールに中央階段があり、照明の洒落た丸い電球がおしゃれ。
左右に続く長い廊下。窓ガラスから見える中庭の景色。
どれも新鮮で物珍しくキョロキョロしてしいると、杜若様に小会議室だと言う場所に案内された。
案内された部屋は、真ん中に円卓の机があり。
壁際に三人の人影があった。
杜若様に上座への着席を促されて、そこに座ると杜若様も私の横に座った。
杜若様が早速だが紹介すると言い、その言葉に反応するように目の前の人達が一歩、カツッとブーツの音を響かせて前へと歩みよった。
一番最初に目に入ったのは眼鏡を掛けた背の高い、氷みたいな麗俐な美貌の人。二十代後半ぐらいの方に見えた。
その後ろの男性二人はニコニコと微笑み。明るく爽やかな表情を浮かべていたが──容姿が全く同じだった。まるで鏡合わせのよう。
「環。ここに居るのが俺の副官。石蕗さんとその後ろにいるのが直属の部下、双子の|宇津木《うつぎ》|葵《あおい》と|碧《みどり》隊員だ」
背の高い人が石蕗様。
容姿が瓜二つの人は、双子の宇津木様達。
お二人の年齢は私より少し上ぐらいだと思った。
すると三人の方が畏ってペコリと私に頭を下げたので、私も慌てて挨拶をする。
「初めまして。雪華じゃなくて……か、杜若環と申します。よろしくお願いします」
私の挨拶に反応したのは眼鏡を掛けた、石蕗様だった。
「初めまして。環様。私は杜若様の副官、石蕗と申します。この度はご成婚おめでとう御座います」
ご成婚おめでとう御座います。
その言葉に動揺しながらも「ありがとうございます」と、小さく返事をした。
そのあとに続ける言葉をどうしようかと思うと、隣に腰掛ける杜若様が引き継いでくれた。
会議室に杜若様の良い声が響く。
「今回、三人だけに直接顔合わせをしたのは、この三人に今後。環の護衛などを任せたいと思っているからだ」
そうなんだと、ぱっと石蕗様達を見ると石蕗さんは深く頷き。
その後ろのお二人はにこりと微笑むので、上手くやっていけそうかもと感じた。






