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__突然の閃光。
次に、立っていられないほどの地面の揺れ。
たった今、村の麓に出た魔物を倒しきり、拳に付いた敵の体液を拭っていた英雄__エクス・アルビオは、今まで経験したことの無い眩しさと揺れに、まさかドラゴンの強襲か、と身構え背中の剣に手をかけた。
そして、次の瞬間。
全く知らない空気に包まれた。
先程までのホコリと鉄錆の混ざった鼻に篭もる悪臭が消え、爽やかな草木の青いにおいが胸を満たす。
眩しさから閉じていた目をそっと開くと、そこは人気のない公園だった。
「……夜?」
先程まで痛くなるくらい眩しかったはずの光は消え、辺りは暗闇につつまれている。
今エクスの視界を担保しているのは、うっすらと頼りない月の光だけだった。
英雄の性か、混乱しながらも辺りへの警戒は怠らない。
普段は面倒だからと使わない剣を構えながら、エクスは素早く辺りに視線を配った。
10秒程の間。
正確な時刻は分からないものの、月の位置からして真夜中と言っても差し支えないほど夜は深そうだ__天体の動きが自分のいた世界と同じなら、の話だが。
そう判断し、ならば人通りも無いだろう、とエクスはひとまず警戒を解いた。
そして、思う。
(これはもしかして、転移魔法?)
エクス自身は魔法については全くの専門外で、本当に腕っ節ひとつで英雄になったみたいなものだったので、確証はなかった。
だが、状況からしてこの見解に間違いなさそうだ。
(となると、どうするべきか?)
暫く考えた後、エクスは剣をそっと背中の鞘に納めた。
敵意も人影も無い。
なら邪魔なものはしまっておくに限る。
それに突然の転移で驚いていたが、冷静に考えるとそこまで警戒する必要もなさそうだった。
(俺を殺したくて発動した魔法なら、普通こんな場所を転移先に選ばないよなあ)
なんせ、そよ風に草木の揺れる静かな夜の公園である。
およそ命のやり取りには相応しくない。
(もっとなんか……ベヒモスの巣とか……マンイーターの群生地とか……そういう感じのところが相応しいだろ、定番的には。いや、定番をしらんけど)
冷静になったエクスは、いつもの自由気ままな独り言を脳内で呟きながらゆっくりと歩き出した。
とりあえず、心地よいとは言わないまでも、雨風に晒されないレベルの寝床を確保したい一心で。