※莉犬くんの過去等出てきます。
苦手な方はお引き取り願います。
※ななもり。さん出てきます。
❤️side
俺は莉犬。
どこにでもいる普通の学生だ。
どこにでもいる…ね…。
前言撤回。
俺は、どこにでもいる普通の学生じゃない。
自分の性別に違和感を持っていて。
家庭の環境が最悪で。
大切な友達だって失った。
こんな俺が普通な訳ないだろ?
「死んでもいい…?」
あぁ。またか。
毎日のようにドアの向こうから聞こえてくる弱々しくて、悲しげな声。
その声は俺の心をどんどん抉っていく。
もういっそ、死なせてあげた方がいいのかな…
俺だってさ…辛いよ…
でもさ…耐えてるんだよ…?
なんで俺だけこんな思いしないといけないの…?
母の声を聞いて、自分のことを嫌悪して、死にたくなる。
そんな毎日。
ついさっき、大学は諦めて欲しいと言われ、どん底に突き落とされた。
俺の味方をしてくれる人なんていない。
「おっ、○○さんいらっしゃい!ゆっくりしていってね!」
そんな時に俺は配信をする。
気を紛らわせる的な?そんな軽い気持ちから始めた配信。
機材も揃ってないし、コミュ力も低い。
そんな中でも見に来てくれるリスナーさんが俺の唯一の支えだった。
あの日。俺はいつもと変わらず配信をしていた。
「枠閉じまーす。ありがとうございましたー!また来てくださいね!」
枠を閉じ、溜まりに溜まったLINEを開く。
🗣️「元気かー?久しぶりだなあ。
たまに配信覗きに行ってんだぜw
それはさておき、お前、歌い手グループとか興味無いん?」
とあるキャス主友達からのLINE。
歌い手グループか…。
歌うことは大好きだし…。
❤️「久しぶりだねー!元気だよ!
歌い手グループね…ちょっと気になるかも!」
すぐに既読がついた。
🗣️「おっ!マジで!
俺の知り合いが歌い手グループ作る!って言ってるんだけど、メンバー候補を探して欲しいって頼まれてさ…。
もしよければ、明日の午後2時に駅前のカフェで話し合いたいんだとよ。
ほら、お前歌上手いじゃんか?
だからお前しかいないと思ってたんよね!」
これを逃したら…
ダメな気がする。
歌い手グループに入ることで俺の中で何かが変わる気がする。
ただの直感に過ぎないが。
❤️「ぜひ話したい!」
🗣️「OK!連絡入れとくな。あ、その人のキャスでの活動名は…」
❤️「ありがとう!明日に備えて早く寝ないとなww
おやすみ」
🗣️「おやすみんみんぜみ」
楽しみだなあ…
俺はワクワクしながら眠りについた。
「うわあああああ!遅刻だあああ!」
目が覚めて俺は青ざめた。
時計の針は正午13時半を指している。
初対面の人と会うというのに遅刻なんてっ…
許されるわけが無い…!
急いで身支度をし、家を出た。
必死に走った甲斐あって時間ちょうどにカフェに到着した。
急いで彼を探す。
?「ん?あ!莉犬くんですか!?」
目の前の席に座っていた青年にハキハキとした声で話しかけられる。
「はっ、はい!莉犬です!もしかしてあなたが…」
ななもり。「はい!俺がななもり。です!
気軽になーくんって呼んでね。どうぞ。ここに。」
なーくんは自分の隣の席を指さして言った。
よかった… 怖そうな人じゃなくて。
俺はなーくんの隣に座り、話を始めた。
性同一性障害なこと。
家庭の環境悪いこと。
大切な友達を失ったこと。
大学に行けなくなったこと。
自分で思いつく限り、全て話した。
今まで、自分の気持ち全てを他人に話すことなんてなかった。
どうして、全て話せたのか。
なーくんは笑わずに話を聞いてくれたんだ。
世間から見たら、俺の悩みなんて本当に小さなもので、俺が弱いから悩んでるだけかもしれない。
それでも、なーくんはゆっくり、優しく聞いてくれた。
否定なんてしなかった。
俺は思ったんだ。
この人は本当に信用出来る。
ずっとついていきたいと。
大学に行けなくなったと伝えた時、
なーくんは聞いてくれた。
「悔しくないの?莉犬くん。夢はある?」って。
俺は答えたんだ。
「俺は、誰かに認められて、生きていていいんだって思いたい。」と。
なーくんは
「じゃあ、一緒にがんばろう。多くの人に見てもらって多くの人に認めてもらおう。不安に思うことなんてないんだ。」
俺はその一言で決めたんだ。
すとぷりの莉犬として生きていくことを。
時は流れ、すとぷりが結成して2年。
活動にも慣れ、メンバーと共に充実した日々を送っていた。
そんな時になーくんが言った。
ななもり。「莉犬くん。そろそろリスナーさん達にも莉犬くんの体のこと、知ってもらわないとだよ。」
俺は頭が真っ白になった。
いくらリスナーさんとはいえ、事実を知って離れて行ってしまう人だっているだろう。
もう何も失いたくない。
でも、だからこそ必要なのかもしれない。
何も失いたくないからこそ、本当の俺を知ってもらって、等身大の俺を愛して欲しい。
「分かった。今夜、配信で話すよ。ありがとう。なーくん。」
配信が始まる前、緊張する俺に、なーくんはもう一度聞いてくれた。
「莉犬くん。夢はある?」と。
俺は
「誰かに認められて生きていていいんだと思いたい。
すとぷりの莉犬じゃ無くなったら、もう死んでもいいと思っています。」と告げた。
なーくんは笑顔で静かに頷き、優しく、大きな手で背中を押してくれた。
ななもり。「莉犬くんの想い。きっとリスナーさんに伝わるよ。」
そして、その日の夜。俺はリスナーさんに全てを話した。
もちろん、離れて行ってしまう人はいた。
でも、それと同じくらい。いや、2倍以上のリスナーさんは理解してくれた。
どんな俺でも大好きだって言ってくれた。
俺に必要だったのはこういう暖かい居場所だったんだろう。
改めて、リスナーさんのありがたみと大切さ、そして温かさを感じられたんだ。
そして、現在。
今、すとぷりになーくんは居ない。
なーくんのやってしまった事は、許されることでは無い。
仲間だからこそ、信頼できる人だからこそ言える。
でも、なーくんには沢山反省して帰ってきて欲しい。
なーくんは俺の人生を変えてくれた人だから。
俺が本当に信用出来た人だから。
そんなことを考えながらふと、窓際に目をやると9本のバラが花瓶に飾られていた。
9本のバラ…
花言葉は
“いつまでも一緒にいてください_。”
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!