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元々、大商会であれば一つの街の領主を買収することも出来なくはなく、出来た暁には独占販売に近い形で商売が出来る。
だが、国全体での家具の独占販売は普通なら大事になる。
これを抑えるのはいくら大きな商会でも無理だ。
そこで黒幕の可能性に気づき、調査をそちらに向けた。
黒幕はすぐにわかった。
今の財務大臣を務める貴族の嫡男だった。
その貴族はミールマン侯爵家という。
「つまりは、侯爵家という大貴族で資産家でもあるから、見逃すしかないと…?」
俺は合っているのか王子に聞いた。
「端的に言うとそうなるな」
その言葉に俺達は項垂れた。流石に大貴族相手に喧嘩は売れない……
聞くところによると、リゴルドーの領主ですら、その貴族からしたら大したことはないとのこと。
「では、このまま何も出来ないと」
諦めた俺は王子に最後の質問をした。
「確かにミールマン侯には、第二王子である私でも手を出すことは出来ない。
陛下に奏上したら廃嫡くらいは望めるかもしれんが…意味は薄かろうな」
やはりその嫡男だけではないんだろうな。父親である侯爵も一枚噛んでいるか、もしくはホントの黒幕か……
「但し、その商会は潰す。この国の未来のためにもな。
陛下にも許可は得ている。恐らく、トカゲの尻尾切りのようにして、侯爵は罪から逃れるだろうがな。
どうだ?」
どうだと言われても……
でも、俺たちの目的は商会を潰すことだったからいいのか。
国の膿はそちらでどうにかしてもらおう。
「もちろん決定に従います」
俺の言葉にミランが初めて声を出した。
「あのっ…」
「なんだ?」
「どのように潰されるのですか?」
ミランは気になるよな。バーンさんの仇だしな。
あれ?バーンさん死んでないよな?
まぁ、いいか。
「其方は気になるだろう。良いだろう」
そう言って聞かせてくれた内容は……
王様からミールマン侯爵にこの事を伝えて、リアルに尻尾切りをさせるというものだった。
自分を守ることに長けたミールマン侯爵家だからこそ、必ず保身の為に商会に全ての企み、罪を着せて処分するはずだ。
とのこと。
そうなれば証拠などはミールマンが勝手に集めてくれるから、こちらは両者を見張るだけで済む。とも言っていた。
「処罰はどの様な?」
「国の技術を脅かし、人から職も奪い、商いを乱した。
軽くても、死罪は免れんな」
人の命軽いなぁ。罪状がわかる前に死刑が確定してるんだもんな。
俺も野盗を問答無用で撃ち殺してるから一緒か……
力こそ正義!パワー!
「わかりました。ありがとうございます」
ミランは自分の手で決着をつけたかっただろうが、我慢させることになったな……
「ところで」
話はもう終わったはずなのに、王子はまだ何事かを切り出した。
「褒美は何にする?」
は?褒美はもらったろ!
いい加減ひっかけ問題はやめてくれっ!
誘惑に負けちゃうんだからっ!
「すでに頂いていますので…」
何とか喉からお断りの言葉を出せたぜ…!
「ん?この件は褒美にならんぞ?むしろこの件の褒美でもある」
な、なんですとっ!?
「我々にとってはこの件が何よりの褒美です。そしてアンダーソン殿下のお言葉も過分な褒美に値します」
さすミラ!完璧なご遠慮だ!
「そうか。其方達はシュバルツの言う通りの人物であったな」
「シュバルツ?」はて?だれだ?
「シュバルツは其方達にこの証を持たせた者だ」
王子の手には例の階級章の様なものが……
と言うか、独り言が漏れてた……
「シュバルツは近衛騎士で私の専属でもある。ちなみに、この証は私の騎士という意味を持つものだ」
なるほど…道理で印籠みたいな効力があるはずだ・・・
「其方達が善人であることは重々承知した。ならばこちらから勝手に褒美を送らせる。後日、宿で受け取ってくれ」
くそっ!これ以上関わりたくないから受け取るか……
最後なんだからねっ!
俺達は宿へ帰った。
「私達が善人だって!ふふふっ」
いや聖奈さん。怖いっす。
「まぁ、善人ではないよな。法律次第では商会も会頭も悪いことをしていないと判断されてもおかしくなかったし」
「そうですね。善行についてはそうなれば良い程度ですね。私達にとって何が大切で、それの為に何をするかですから」
流石ミランさん。達観しておられる……
「これからなんだが、馬を買わないか?二頭引きの方が馬も楽だし、せっかく大きな馬車なんだから荷物も多く積めるしな」
「いいね!今のが雄だから雌を買ってあげよう?」
いや、それはまずいだろ…増えたらどうするんだよ……
兎に角、馬を連れて行って相性の良い奴を見つけないとな。
俺達は宿の人に王都近くの牧場を聞いてそこへと向かうことになった。
「凄いね!近くにこんなに広い牧場があるなんて!」
「この世界の時代背景を考えたら都市部の方が馬の需要は高いだろうからな」
「セイさん。もしかして、飲んでますか?」
失敬な!
「ミランちゃんって、ナチュラルに傷つけるよね…」
聖奈さんも何かしら被害にあったんだな。
ミランは意外なことに言葉のナイフを振り回すことが多い。
本人はナイフだと気付いてないっぽいからタチが悪い……
まさかそのせいでずっとソロだったんじゃ!?
「あっ!人がいるよ!声を掛けよう!」
地球では見かけることがない牧場に、聖奈さんのテンションは爆上がりだ。
その背中を見送ると走って牧場の人に話しかけにいった。
そして、すぐにこちらを向いて手招きをしてきた。
「お馬さん売ってくれるって!」
牧場の人がビックリするくらい声がでかい……
牧場では動物が驚くから静かにな。
「こんにちは。商人のセイと言います。
こちらの馬に馬車を引いてもらっていたのですが、この度、馬車を二頭引きにしようと思い、相方を探しています」
俺は商人モードで挨拶と説明をした。
牧場の人は絵に描いたような人で、アルプスの◯女に出てきたお爺さんみたいな人だった。
「そうでしたか。こちらのお嬢さんに馬をくれと言われたので驚きましたが。
あちらの厩舎にいるので、相性を確かめてください」
お爺さんに付いて行き、建物へと向かう。
中には10頭以上の馬がいた。外の馬達は預かっているものか、まだ商品にならない馬なのかもしれないな。
「どの子がいいかなぁ。白馬とかいないかなぁ」
聖奈さんがぶっ壊れて妹キャラが……
ミランを見習えよ。
見てみろ。ミランなんて馬を道具としてしか見ていないぞ!
それはそれで嫌だけど……
「こちらの馬を気に入った様ですな」
お爺さんに連れられた馬が一頭の馬の前から動かない。
「こちらの馬は雌ですが、馬体を見てもらってわかる様に雄の力と遜色ありません。
500,000ギルですが、いかが致しましょう?」
おい!お前より高級じゃねーか!
王都で物価が高いとはいえ、格上だぞ?
「セイさん。良ければこの馬にしませんか?気性も穏やかそうです。
相性もいいなら言うことなしですね」
まぁ、ミランが言うなら間違いなさそうだな。
ところでウチのじゃじゃ馬はどこに行った?
「ではこの馬を買います。すみませんが二頭引き用の金具に変えることが出来る人を知りませんか?」
「ありがとうございます。それならウチが頼んでいる人を紹介しましょう」
やはり伝手はあるよな。
「セイくーん!」
商談が纏まった時、遠くから俺を呼ぶ声が聞こえた。
なんか嫌な予感が……
厩舎内から声のする方へ出ると、聖奈さんが放牧されていた鞍の付いた馬に勝手に乗って降りられなくなっていた。
「すみません…後でキツく叱っておきますので…」
何故俺が謝らにゃいかんのだ!?
その後、馬を捕まえて聖奈さんを降ろしたら、謝りながら新たな馬を連れて王都へと帰った。
聖奈さん。もはや妹キャラじゃなくて幼児キャラじゃないかな?
流石にレベルが高すぎて萌えないぞ……
宿に帰った後は馬に馬車を引いてもらい、馬車を改造してくれる所へと向かった。
どうやらすぐに出来るようで、このまま待つことに。
「お待たせしました。一頭でも引けますので取り付けしますね」
店の人に付けてもらい、宿へと帰る。
その後は夕食を食べて月が出るまで仮眠を取って地球へと戻った。
俺は砂糖と胡椒の運搬。聖奈さんはバイトさんへの指示書やメール、売上の確認をしている。
仕事を終えて宿に帰ったらすぐに寝た。
翌朝はいつも通り、リゴルドーの商人組合に納品をして宿に戻ったところ、聖奈さんが気になることを言った。
「結局、会頭は何人だったんだろうね?日本人?それとも外国人かな?」
「正直、何人でもいいんだけどな。俺達の邪魔をしなけりゃ……
やっぱり助けたいとかか?」
「まさか!盗聴器で聞いた話しか知らないけど、性格悪かったもん。
それに地球人でも異世界人でも私には関係ないよ」
良かった。ここまできて、生きている同郷の人だから助けたいとか言われても困るからな。
そもそも確認の為とはいえ、盗聴器を仕掛けてる俺達が人の性格どうこうはいえないのでは?
「すでに王子に渡した話なので、私達にはどうにも出来ませんよ?」
「そうだな。むしろ王子の邪魔しちゃ悪いから放っておこう。
それよりも旅についてなんだが」
「何か不都合でもありましたか?」
「オーガと戦ったろ?どう考えても俺たちには荷が重い相手だった。
火力不足は否めない。これから安全に旅をするにあたって、何とか出来ないか?」
わからない時は必殺『人任せ』だ!
「うーん。一応考えがあるんだけど、まだ時間がかかるから……
でも、私も氷限定だけど上級魔法を使える様になったよね?
ミランちゃんと私達のどちらかが時間稼ぎをして、上級魔法を敵にぶつけるしかないんじゃないかな?」
流石の聖奈さんでもいきなりは答えられないよな。
時間があれば解決出来る、というのは流石だが……
「セイさん。仕方ないですよ。普通はオーガに会えば死んでしまいます。
普通に生活していれば出会う可能性もかなり低いです。
旅は危険なものですから」
いや、仕方ないで死にたくないです……
どんな死生観だよ……
とりあえず、事が済むまで王都を離れられないし、その後の褒美も貰いたい。
俺達は普段通り討伐という名の狩りに出て、日々を過ごした。
そして、商会は潰れた。