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4 - 『 くるしんぼ 』

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2025年06月01日

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『くるしんぼ』

























感情が死んだのが、いつだったか思い出せない。


悲しくもないし、寂しくもない。

ただ、何もない。


目を開けていても、見えてるのは真っ黒なノイズだけ。


聞こえてくるのは、自分の心臓の音だけ。


それすら、ただのノイズだと思いたくなるほど、煩わしい。




LANって、誰だったっけ。

自分の名前が、本当のものかどうかすら、もうわからない。




笑う役を続けてるうちに、

「嬉しい」って何か忘れた。

「楽しい」って、どんな気持ちだった?

「愛される」って、どんな音だった?




この部屋には、空気がない。

音がない。

重力すらない。

あるのは、思考という名の刃物だけ。




今日、目が覚めたとき、涙が出ていた。

でも悲しくなかった。

ただ、身体が勝手に泣いてるだけだった。


それを見て、笑った。


「俺、壊れてんな」って


その笑い方が、どこかの誰かのモノマネみたいで、気持ち悪かった。





スマホを見ても、通知はない。

誰も俺を必要としていないという証拠が、

画面いっぱいに広がっている。


でも、それでよかった。

誰かに触れられたら、俺の中の何かが、また潰れてしまうから。





この苦しみは、誰にも渡せない。

言葉に変えた瞬間、嘘になる。


誰かに「辛い」と言ったら、

その人の中にある“LAN”が、壊れてしまう気がする。





だったら最初から、黙ってたほうがマシだった。







――でも、気づいたんだ。


黙っていても、いつかは限界がくる。

もう、とっくに来てた。

とうに、超えてた。




だから今、ここで、

誰にも言わずに、誰にも気づかれずに、

ゆっくりと消えていく準備をしている。




誰も見ていない。

誰も来ない。

誰も、いらない。



ただ、静かに、

何の痕跡も残さずに、

LANという存在が「いなかったこと」になるように。



心の奥底から消えてしまいたいと願うこの気持ちに、

う名前なんていらない。



「くるしんぼ」なんて、

可愛い言葉で呼ばないでほしい。







これはただの、

ひとつの命の、静かな終わりだ。





ーENDー



















くるしんぼ とは


「くるしんぼ」=「苦しむ」+「〜んぼ(ちゃん・ぼう)」


「泣きんぼ」「甘えんぼ」「さびしんぼ」などと同じ形式の造語。



つまり、

「くるしみやすい子」「苦しみを抱えた存在」







らしいです


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