TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

読切集

一覧ページ

「読切集」のメインビジュアル

読切集

5 - 『 救済執行 』

♥

19

2025年06月01日

シェアするシェアする
報告する

『救済執行』





























「俺がやるよ。最後まで、俺が。」




そう呟いた声は、まるで祈るようだった。

何もない、誰もいない、色のない廃墟の中。

無数の“痕跡”が風に舞って、目の前を通り過ぎる。


あれは人だったもの。感情だったもの。言葉だったもの。



世界が壊れて、心も壊れて、秩序すら息を引き取った。

それでもなお、人は生きたがった。

苦しみながら、生きたがった。

“それ”が、いるまには、残酷に見えた。




「生きてるから辛いんでしょ」


「だったら、眠らせてあげるよ」




その手に握られたナイフは、美しいほど真っ白だった。


一滴の血もついていない。

使うたび、丁寧に拭き取っていた。




__まるで、神聖な儀式を繰り返すように。





いるまの目は澄んでいた。

優しかった。

冷たくなかった。






ただ、狂っていた。







「俺が”救って” あげるよ。全部。」





その言葉に、誰も反論しなかった。

なぜなら、救われた人はもう、喋れなかったから。





救済執行。





命を絶つことを、彼はそう呼んだ。

神様に見捨てられた世界で、

たった一人の“執行者”として。


「苦しみから解き放たれるのって、きっと気持ちいいんだよ。」


微笑みながらそう呟いたいるまの瞳は、

あまりにも美しくて、壊れていた。



誰も彼を止めない。

誰ももう、止められない。



彼が最後に選んだのは――

自分自身だった。




「これで……ようやく、俺も。」




ゆっくりと胸元へ刃を添える。

そこに迷いはなかった。





――だって、これこそが”完全な救済”だから。





静寂が、世界を包んだ。

風が止まった。

空が閉じた。



彼の息が、消えた。



ナイフは静かに地面に落ちた。

まるでその役目を終えたかのように。


そして、世界はようやく、苦しみから解放された。

何も感じない、誰もいない、まっさらな静寂だけが、

確かにそこに残されていた。





ーENDー



























こういうの大好き🫶

どろどろ…いい…( 語彙力

個人的に『救済=死』だと思ってるのでそれを作品に埋め込みました、


なんでいるまくんなのかは

単純に似合いそうだったのと DOGMA 歌ってたからです🙌🏻


この作品はいかがでしたか?

19

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚