『救済執行』
「俺がやるよ。最後まで、俺が。」
そう呟いた声は、まるで祈るようだった。
何もない、誰もいない、色のない廃墟の中。
無数の“痕跡”が風に舞って、目の前を通り過ぎる。
あれは人だったもの。感情だったもの。言葉だったもの。
世界が壊れて、心も壊れて、秩序すら息を引き取った。
それでもなお、人は生きたがった。
苦しみながら、生きたがった。
“それ”が、いるまには、残酷に見えた。
「生きてるから辛いんでしょ」
「だったら、眠らせてあげるよ」
その手に握られたナイフは、美しいほど真っ白だった。
一滴の血もついていない。
使うたび、丁寧に拭き取っていた。
__まるで、神聖な儀式を繰り返すように。
いるまの目は澄んでいた。
優しかった。
冷たくなかった。
ただ、狂っていた。
「俺が”救って” あげるよ。全部。」
その言葉に、誰も反論しなかった。
なぜなら、救われた人はもう、喋れなかったから。
救済執行。
命を絶つことを、彼はそう呼んだ。
神様に見捨てられた世界で、
たった一人の“執行者”として。
「苦しみから解き放たれるのって、きっと気持ちいいんだよ。」
微笑みながらそう呟いたいるまの瞳は、
あまりにも美しくて、壊れていた。
誰も彼を止めない。
誰ももう、止められない。
彼が最後に選んだのは――
自分自身だった。
「これで……ようやく、俺も。」
ゆっくりと胸元へ刃を添える。
そこに迷いはなかった。
――だって、これこそが”完全な救済”だから。
静寂が、世界を包んだ。
風が止まった。
空が閉じた。
彼の息が、消えた。
ナイフは静かに地面に落ちた。
まるでその役目を終えたかのように。
そして、世界はようやく、苦しみから解放された。
何も感じない、誰もいない、まっさらな静寂だけが、
確かにそこに残されていた。
ーENDー
こういうの大好き🫶
どろどろ…いい…( 語彙力
個人的に『救済=死』だと思ってるのでそれを作品に埋め込みました、
なんでいるまくんなのかは
単純に似合いそうだったのと DOGMA 歌ってたからです🙌🏻
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