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その日。
目黒と阿部はリビングのテーブルを挟んで、一枚の紙を前にしていた。
少し前に見つけた。
昔の阿部が書いた、
『めめと一緒にやりたいこと』
その紙をきっかけに。
今度は。
今の二人で、新しいものを書いてみようという話になった。
目黒がペンを持つ。
「タイトルどうする?」
阿部は少し考えた。
「そのままでいいんじゃない?」
「めめと一緒にやりたいこと?」
「今度は俺だけじゃないから」
阿部が笑う。
「これから二人でやりたいこと」
目黒も笑った。
「いいね」
紙の一番上に。
ゆっくり書く。
『これから二人でやりたいこと』
その下。
最初の一つ。
目黒が迷いなく書いた。
『ずっと一緒にいたい』
阿部の顔が少し赤くなる。
「……最初からそれ?」
「一番大事だから」
「もう一緒にいるじゃん」
「これからも」
「分かったけど」
阿部は照れたように目を逸らす。
目黒が楽しそうに笑った。
「もう恥ずかしい?」
「まだ一個目だよ」
「じゃあいっぱい書こ」
嫌な予感がした。
次は阿部。
少し考えてから。
『めめに負けないように料理のレパートリーを増やす』
目黒が紙を見る。
「俺に負けないように?」
「だってめめ、俺より料理できるじゃん」
「でもあべちゃんのグラタンやカキフライも好き」
「それしか言わない」
「好きだから」
「じゃあもっと増やす」
阿部は少し得意そうにペンを置いた。
次。
『桜を二人で見に行きたい』
目黒がすぐ頷く。
「行こう」
「ちゃんと二人でね」
「うん」
「仕事の移動中に車から見るとかじゃなくて」
「分かった」
「お花見」
「お弁当作る?」
阿部が少し笑う。
「それいいかも」
まきぴよ
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みら

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#⛄️
kaede🍁
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いくつか書いたあと。
阿部の手が止まった。
「何書こう」
「何でもいいよ」
「うーん……」
しばらく悩む。
それから。
少しだけ真面目な顔になった。
『一人で抱え込まない』
書き終わる。
目黒が紙を見て。
少しだけ笑った。
「難しそうだね」
阿部がすぐ睨む。
「何で」
「あべちゃんだから」
「失礼だな」
「今まで何回一人で決めた?」
「……」
「何回一人で大丈夫って言った?」
「……」
「何回」
「もういい!」
阿部がペンを置く。
目黒は声を立てて笑った。
「でも書いたからね」
「うん」
「守ってね」
阿部は少しだけ口を尖らせる。
「努力します」
「そこは絶対じゃないんだ」
「難しいって言ったのめめじゃん」
「確かに」
二人で笑った。
次。
目黒がペンを取る。
阿部は何を書くのか横から覗いた。
『毎日充電する』
「……」
阿部が無言になる。
目黒は気にせず次を書く。
『毎日指輪を確認する』
「ちょっと待って」
「何?」
「それやりたいことなの?」
「うん」
「もう毎日やってるよね?」
「だからこれからも」
阿部は額を押さえた。
「まあ……いいけど」
目黒は満足そうに頷く。
さらに書く。
『ライブでも毎回充電する』
「待って待って」
「何?」
「ライブでも?」
「する」
「毎回?」
「毎回」
「本番前とか?」
「本番前も」
「終わったあとも?」
「できれば」
阿部の顔が少しずつ赤くなる。
「みんないるよ」
「もう知ってるじゃん」
「知ってるけど!」
目黒は笑いながら、そのまま次へ進んだ。
『これからは二人の休みを合わせたい』
阿部が少しだけ静かになる。
「それはいいね」
「でしょ?」
「できる範囲でね」
「できるだけ合わせる」
「仕事断りすぎないでよ」
「分かってる」
目黒はそう答えながら。
次を書く。
『二人で手を繋いで夢の国に行く』
阿部が目を丸くする。
「手繋いで?」
「うん」
「ずっと?」
「ずっと」
「人いっぱいいるよ」
「だから?」
「写真撮られるよ」
「いいじゃん」
「よくないでしょ」
目黒が首を傾げる。
「婚姻届、生放送で出した人が言う?」
阿部が黙った。
数秒後。
「……それとこれは別」
「同じだと思う」
「違う」
でも。
紙から消そうとはしなかった。
次。
目黒はまた迷いなく書く。
『公でも仲の良さをアピールする』
阿部がすぐ反応した。
「これ以上?」
「うん」
「もう十分してるよ」
「まだ足りない」
「足りないの?」
「全然」
「婚姻届まで出したのに?」
「それは結婚したいってやつ」
「指輪毎日確認してるのに?」
「それは婚約者だから」
「ライブで充電してるのに?」
「それは充電」
阿部はしばらく目黒を見た。
「全部別なんだ」
「別」
「……重いなあ」
目黒は笑う。
「知ってる」
阿部も笑った。
そして。
次に目黒が書いた言葉を見て。
阿部の笑顔が止まった。
『二人でキスシーンがたくさんある映画に出たい』
「……は?」
目黒は平然としている。
「何で?」
「出たいから」
「なんで俺と?」
「俺とじゃないと嫌だから」
「そういう問題じゃないよ!」
阿部の顔が一気に赤くなる。
「しかもキスシーンたくさんって何!」
「せっかくならいっぱいあった方がいい」
「せっかくって何!」
「仕事で堂々とできる」
「しなくていい!」
目黒が笑う。
阿部は両手で顔を覆った。
「絶対無理」
「でも書くのは自由でしょ?」
「叶える前提なんでしょ、これ!」
「うん」
「消して」
「やだ」
「めめ!」
紙を取ろうとする。
目黒が少し遠ざける。
「だめ」
「何で!」
「俺のやりたいことだから」
「恥ずかしい!」
「まだ誰にも見せないよ」
「まだって言った?」
「いつか見せてもいいかなって」
「絶対だめ!」
リビングに。
阿部の声と目黒の笑い声が響いた。
それからも。
二人は思いつくまま書き続けた。
旅行。
温泉。
海外。
毎年写真を撮る。
記念日を増やす。
一緒に家具を選ぶ。
休みの日は朝寝坊する。
二人やメンバー出演の映画を映画館へ観に行く。
九人で旅行する。
九人でずっとステージに立つ。
喧嘩しても話す。
怖い時はちゃんと言う。
寂しい時は我慢しない。
「好き」を減らさない。
気が付けば。
紙の半分を越えていた。
さらに書く。
余白がなくなる。
阿部が苦笑する。
「これ」
「何?」
「全部叶えるの?」
「叶える」
目黒は即答した。
「何年かかると思ってるの」
「別にいいじゃん」
「何が?」
「時間いっぱいあるから」
その言葉に。
阿部の手が少し止まる。
「……そっか」
目黒が阿部を見る。
「うん」
「一生かければいい」
阿部は少しだけ照れたように笑った。
「またそういうこと言う」
「本当のこと」
紙の下の方。
もうほとんど余白がない。
阿部がペンを持ったまま悩む。
「最後、何にする?」
目黒も紙を見る。
「ずっと一緒にいるは最初に書いたし」
「うん」
「もういっぱい書いたよね」
「まだ増えると思う」
「俺も」
少しだけ。
二人で考える。
そして。
阿部が言った。
「じゃあさ」
「うん」
「全部書き切らなくてもいいんじゃない?」
目黒が首を傾げる。
「どういうこと?」
「これからも」
阿部は紙を見ながら笑った。
「やりたいこと、出てくるでしょ」
目黒も少し笑う。
「じゃあ」
「うん」
二人で相談して。
最後の一行だけは。
一緒に決めた。
阿部が書く。
目黒が隣から見守る。
『これからも二人でやりたいことを増やしていく』
書き終わる。
少しの間。
二人でその紙を眺めた。
上には。
『ずっと一緒にいたい』
下には。
『これからも二人でやりたいことを増やしていく』
その間には。
叶えるのが大変なくらい。
たくさんの願いが並んでいる。
「これ」
目黒が言う。
「大事にしよ」
「うん」
「婚姻届の横に飾る?」
阿部がすぐ振り返った。
「絶対やだ」
「なんで?」
「キスシーンのやつ書いてあるから!」
「いいじゃん」
「よくない!」
目黒が声を立てて笑う。
阿部は紙を奪い取ると。
大事そうに二つ折りにした。
「本棚にしまう」
「また隠すの?」
「隠すんじゃない」
阿部は少しだけ笑う。
「これから増やすために、とっておくの」
目黒も笑った。
「じゃあ次書く時、一緒にね」
「うん」
阿部は頷く。
その紙は。
昔の阿部が一人で書いた願いとは違う。
これから先。
二人で叶えて。
二人で増やしていくもの。
まだ。
余白はいくらでも作れる。
時間も。
きっと。
たくさんある。
阿部は紙を持ったまま、目黒を見る。
「めめ」
「何?」
「キスシーンのやつは、本当に消していい?」
「だめ」
「何で!」
目黒の笑い声が響く。
阿部も結局。
困ったように笑った。
コメント
1件
第10話、めっちゃよかったです…「これから二人でやりたいこと」リスト、全部が甘くて切なくて泣きそうでした。最初の「ずっと一緒にいたい」から始まって、キスシーンのくだりで思わず笑っちゃったけど、最後の「これからも増やしていく」ってところに全て詰まってる気がします。二人で作り直した新しいリスト、大事に育んでほしいです。温かい気持ちになりました。