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※広島×宮城要素あります。

本当にごめんなさい。このお話は実在の地域、山、木に関係ありません。本当に。







正月休みを終えてから仕事続きで恋人に会えていなかった広島は、久しぶりに空いた週末、宮城をデートに誘うことにした。

スポットは悩みに悩み抜いてやはり我が誇り宮島。

カップルで訪れると別れる、なんて噂もあるようだが関係ない。広島きっての自慢たる宮島をそんなジンクスで宮城に見せられないなんてあり得ない。 現にこれまで何度も二人で来ているが別れるどころか冷めのさの字も見当たらないくらいだ。

デートの約束をしてからはもう双方ドキドキワクワクノンストップ。特に広島は「次はなんのグルメをおすすめしようか」、「大鳥居をバックにエモい写真を撮ってみてもいいかも」、なんてことを考えすぎて夜もなかなか寝付けない。

そして待ちにまった件の日!観光客でいっぱいの船に乗り込み、宮島へ。

道中、もみじまんじゅうやらお好み焼きやらグルメを楽しみつつ(もちろんあーんもし合ったゾ♡)、メイン目的地に向かう。

今日は宮城とのデートではまだ行っていない、弥山の登山。

二人とも登山は初心者なので簡単なルートを選んだ。これなら比較的のんびり弥山を楽しめるだろう。もちろん登山に危険がつきものなことは理解しているし、帰りのロープウェイの時間も在るからある程度気を引き締めなければいけないわけだが。

リュックサックの中を確認し、いざ登山口へ。

途中途中に休憩を挟みつつ、順調に登っていった。やはり神宿る島の神聖な山ということもあり、なんだか気持ちがいい。

ひとつ問題があるとすれば、体がエネルギーを欲したので、皆用のお土産をほとんど食べてしまったことだ。帰りにまた買わなければ。

そんなこんなで無事に頂上に着いた。弥山のてっぺんからのこの絶景は前にも見たことがあるが、宮城と見る景色は前にも増して格別だ。

宮城が「すごい…」と感嘆を漏らしたとき、ワシは心底、自分が広島であってよかったと思った。単純脳だということはわかってる。

ロープウェイが来るまで時間があったのでその辺をうろうろしている。すると、何か木々の隙間から気になる物を見つけた。

それがなんだかわからないが……そのときのワシは吸い込まれるようにその物の元へ木々の間を進んでいった。


「……あれ?何でこんなとこ居るんじゃろ…」

気がつけば、ワシは頂上に戻っていた。…いや、「別」の頂上に来ていた。

だって、そこには宮城も、他の登山客も、ロープウェイの施設もなかった。

ただ、昔になくなったはずの大杉、龍頭の杉がそこにはあった。

「タイムリープ、というやつじゃろうか…?」

とにかく、早く戻る方法を探さねば…。

と、なんだか鼻がむずむずしてきた。こんなときに。仕方ない、一発出せば治まるだろう。

「はっっっ……ぐしょォん!!!」

駄目だ。全然治まらない。ていうかまた…

「ハッグション!!グシュン!!!」

以下、繰り返し。

「………あー、いけんわ、これぇ…ぇっぐしゅん!!!…」

最早エターナル。拷問である。

ところで、安直な考えだが、くしゃみをかましつつ導かれたこの原因は、龍頭の杉の花粉かもしれない。

杉=花粉、本当に安直だが、合点はいくし、不思議とこのくしゃみは目の前の大杉に起因しているような、そんな感覚があった。

その上、なんだかくしゃみをするたびに頭にもやがかかるような…。

………これは駄目だ。なるべくくしゃみを我慢して宮城のところに行かねば、よもやこの空間に心ごと取り込まれるかもしれん。

鼻を思いっきりつまみ、もときた道を戻る。

くしゃみを我慢するのに精一杯で、おまけにくしゃみに付随して出てくる涙で前がよく見えなくて、道をいくつか間違えたかもしれない。

でも戻る選択肢なんてない、あの杉に近づいてしまって万が一のことがないとは言い切れない。

でたらめでもいい。どこかの登山ルートと合流さえすればいいはずだ。なのにさっきから人の声も、山奥のはずなのに動物の声さえも聞こえない。

不安が脳を支配しそうになれば、途端にくしゃみも漏れそうになる。

「ふっ……ふぅぅっ………。」

駄目だ、もうなにも考えられない……。助けて、助けてよ…宮城………。



……気がついたら、目の前に涙ぐむ宮城が居て、泣き声混じりに怒られていた。

どうやらワシは森の中で倒れていたようだった。さっきの体感とは裏腹に頂上からそこまで離れては居なかったようだが、距離はどうあれ宮城は勝手にいなくなるのは危ないからやめろと言っていた。

緊張の糸がぷつんと切れて、不安がすっと落ちていって、そしたら、また鼻の奧がむずむずしだす。

「ふっ……………えっっぐしょぉんん!!」

「わあぁ!!??」

思わず特大のくしゃみを上から覗き込む宮城の顔面にぶちかましてしまった。

「あ、す、すまん……!」

「あ、あはは!!ひ、広島!ふ、噴水みたい!!」

そう言って笑う宮城の顔には鼻水やら唾やら体液がかかっている。だというのに、宮城はひとつも汚そうなそぶりを見せない。

それどころか、唇周りに着いたそれを少しうまそうにぺろ、と舐めとったのをワシは見た。

ワシの中の何かしらの扉が開かれた気がした。


と、いろいろあったが帰り道。ロープウェイを下り、麓に着く。

帰る前にお土産を買い、不意に海を見たら、何やらヒトダマらしい光が海岸線から産まれているのが見えた。

そうだ。龍頭の杉は、この火、龍灯を産み出すと言われている。

もしかしたら、これを産むエネルギーを欲しくてワシを呼んだんかもしれん。すこぶる迷惑だったがな。

なんてことを思いながら眺めているとまた鼻の奧にむずむずが。

手で押さえたくても土産の袋で塞がっている。困っていると、宮城が手のひらをワシの口に当てる。

少々、いやとても気が引けたが、生理反応は止まらず、宮城の手のひらでくしゃみを受け止める結果となった。しかも一回じゃ止まらなかったので、何回も。

治まってやっと外したとき、やはりワシの体液を汚らわしいどころか、まるで少しうれしそうに見る宮城に、またもやオープン・ザ・ドア。

いや、やらしい話、宮城にこれ以外の体液(大体ご想像の通り)をぶっかけるの元々好きだったが、まさかソレ以外でも興奮できるとは、我ながら自分の壁は興味深い


そんなこんなで本土に戻り、くしゃみもそこそこに、二人は甘い夜を過ごしたのでした。




後日、幸い花粉症にはならなかったが、ヒトダマらしきものアレルギーになった広島は、どうやってか不知火を捕獲した熊本にいたずらでソレを室内に放たれ大変なことになるのだが、それはまた後日。









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