テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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俺とシロ

第38話 - 第35話　魔纏（まてん）

2023年09月01日

#犬

#もふもふ

#ファンタジー

#異世界

#フェンリル

#第3回テノコン

マネキネコ

猫人族のナナにマジックバッグの仕入れを頼むことにした。

まあ、ナナが客をなめていたので半分脅しのつもりで原価で譲ってもらうようにしたのだが、ちょっと可哀そうだったかなぁ……、とすこし反省もしているのだ。

そこで前から考えていた『シロの首輪』を頼むことにした。

自動でサイズ調整ができる紐かベルトなどはないものかと聞いてみたところ、王都に居るナナの友人が以前そのような話をしていたのを覚えていたのだ。

それで、今度マジックバッグを発注する折に詳しく聞いてくれるそうだ。

あとは納期など決まったら連絡してくれるようにお願いして、俺たちはナナの魔道具屋をあとにした。

店を出たあと俺は空を見上げた。

空は晴れわたっており爽やかな風が吹いている。

太陽の位置からすると、もうすぐ昼時かな？

さて、どうするかなぁ？　ガンツのところにでも行ってみるか！

俺とシロは南門に向けて歩き出した。

そして門を潜って街道を南下していく。

途中からは身体強化を掛けてシロと競争だぁー。

時間にして30分程で俺たちはマギ村へ到達した。馬車で行けば半日はかかる距離である。

一本しかない村のメインストリートを進みガンツの工房までやってきた。

入口の扉を開け、

「おーい！　ガンツ居るかぁ？」

するとカウンターの奥からムッキムキのドワーフが顔をだした。

「おお、ゲンではないか。なんじゃ～、モンソロに行ったのではなかったのか？」

そう言って笑顔で迎えてくれた。

「モンソロへは行ったさ。今は向こうで生活してるよ。今日はガンツに会いにきたんだ」

そう言って土産のエールを1樽カウンターに置いた。

「それとこいつを頼む」

腰に佩いていたバスターソードをカウンターに置く。

「ほう、儂に会いにか？　嬉しいことを言ってくれるのう。これはエールか、ありがたい！」

そう言うとガンツはバスターソードの鞘を払い刀身を確認する。

「そこの椅子に座って少し待っておれ。直ぐに終わる」

ガンツはバスターソードを持って奥の工房へ入っていった。

少しの間店内でシロとジャレていると、

「ほれ、終わったぞ」

と剣を返してくれた。

「いくらだ？」

「今日はサービスだ！」

そしてニヤニヤしながら、

「それよりこいつを見てくれ。会心の出来じゃぞ」

ガンツは一振りの長剣を見せてきた。

俺はその剣を手に取って、造りや刀身をじっくりと見ていく。

『やっぱり良い物というのは剣であっても美しいものだよなぁ』

最後に鑑定を掛けてみた。

”ミスリル・マジック合金ロングソードA+”

おおおっ、何これ凄い！

「マジックソードか……いいなコレ。うん凄く良い。しかし俺には少し長いか……」

そう呟きながらロングソードを返した。

するとガンツはワクワクした子供のような目をこちらに向け、

「おぬしから譲ってもらったあのミスリルは最高じゃった！」

とても嬉しそうである。

「また見つけてくるよ。そのときは最高の一振を俺に打ってくれよな！」

俺はそのようにお願いしつつ、前から気になっている事を聞いてみた。

「魔法剣であるマジックソードとはどういった物なんだ。ミスリル合金ソードとの違いというのはなんだ？」

するとガンツは、

「まずミスリル合金ソードじゃが。この前も言ったはずじゃが鋼鉄に少量のミスリルを添加するんじゃ。その量は金属が反応を起こすギリギリの量でいい。変化を起こした金属は硬度と耐久性が格段に上がるんじゃ」

「一方、マジックソードに使うマジック合金はミスリルを添加する量はミスリル合金ソードの約4倍、これを特殊な形で融合していくんじゃ。通常使用の場合は双方ともにほとんど差はないんじゃ。では何が違うのか？　それは刀身に魔素を纏わせる場合じゃな」

そう言うと、ガンツは一拍おいて再び話はじめた。

「魔纏 (まてん) と言うんじゃが、これを使うと通常の鋼鉄 (てつ) では魔力を通しただけで一瞬にして砕ける。また硬度や耐久を上げたミスリル合金ですら1回の使用でぼろぼろじゃ。そこで開発されたのがマジック合金じゃ。もちろん、魔纏を使えば耐久は徐々に落ちていくが10回～15回位は耐えてくれるじゃろう。なぜそうまでして魔纏を使うのかじゃが、Sクラスの魔獣ともなると通常の武器はおろかミスリル合金でも歯が立たん。そこで魔纏なのじゃ。つかい熟すにはそれなりの修行をせにゃならんが、この魔纏ならドラゴンの鱗ですら切り裂くことができるんじゃ。……まぁ、そういうことじゃな」

ガンツはそう締めくくった。

「ありがとう勉強になったよ。それで魔纏の練習はどうやってするんだ？」

「鋼鉄にミスリルを20％混ぜた棒を作るんじゃ。それにじわじわ魔力を這わす訓練をするんじゃが……、今となっては持ってるとしても上級貴族ぐらいじゃろうな。もし有ればなんじゃがオリハルコンなら5％も混ぜればいけるじゃろうが」

そのようにいろいろと話してくれた。ホントに有難い存在なのだ。

日も傾いてきたので、「また来る」と言って工房近くに転移に適した場所を見つけ、そこからモンソロの町に戻った。

夕刻までには少し早いが俺とシロは部屋に戻ってきていた。

木窓を開け空気を入れ替える。

ここ数日は豚魔獣のおかげで何かバタバタしてしまったなぁ。明日からはいつもの暮らしに戻るだろう。

ベッドに寝そべってぼ～と天井を眺める。

ひさしぶりにステータスを確認しておくか。――鑑定！

ゲン　Lv18

年齢　17