テラーノベル
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夜の静けさが満ちる部屋の中、液晶画面の明かりだけが二人を明るく照らしていた。
「あー、またここで引っかかった……! ぐりげん、右から来るのカバー頼める?」 「任せとけって。ほら、抜けたよ。……みるとん、ちょっと焦りすぎ」
キーボードの打鍵音とコントローラーを握る手が擦れる音。息の合ったプレイで画面上の敵を打ち倒した瞬間、みるとんは「よっしゃ!」と声を上げて椅子の背もたれに体を預けた。
「助かったー。流石ぐりげん、頼りになるわ」 「お互い様だろ。ほら、今日の配信枠、そろそろ切るぞ」
視聴者へ挨拶を終え、配信の終了ボタンを押した途端、それまで張り詰めていた空気が一気にゆるむ。部屋には急に静けさが戻り、エアコンの低い動作音だけが響いていた。
「ふぅ……お疲れ様、ぐりげん」 「お疲れ。喉、乾いたろ」
ぐりげんは立ち上がると、冷蔵庫から冷えたお茶を取ってきて、みるとんの隣に腰掛けた。受け取ったペットボトルを口に含み、息を吐き出すみるとんの横顔を、ぐりげんはじっと見つめている。
画面越しやマイク越しでは、いつもの賑やかな相棒。けれど、こうして配信が終わり、ただの二人に戻ったこの距離感のときだけ、胸の奥が少しだけ熱くなるのをぐりげんは感じていた。
「……なに? 俺の顔に何か付いてる?」
視線に気づいたみるとんが、首をかしげて覗き込んでくる。その無防備な瞳と、少し赤くなった耳たぶ。
「……別に。ただ、今日も楽しかったなって思って」 「なんだよそれ、急に真面目だな」
みるとんは照れくさそうに笑うと、ぐりげんの肩にぽんと自分の頭を預けてきた。不意の重みと体温に、ぐりげんの息が止まる。
「俺も楽しかったよ。ぐりげんとゲームしてる時が、一番落ち着くし」
ふっと漏らされた本音。冗談めかしたトーンではなく、少し低く落ち着いた声だった。
ぐりげんはゆっくりと手を伸ばし、みるとんの柔らかい髪に指を滑らせた。みるとんは逃げる様子もなく、心地よさそうに目を細めている。
「……みるとん」 「ん?」 「配信中じゃなくても、もっと頼っていいんだぞ」
そう言って髪を撫でる手に少しだけ力を込めると、みるとんはゆっくりと顔を上げ、至近距離でぐりげんと目を合わせた。画面の光ではなく、お互いの瞳の中にお互いが映っている。
「……じゃあ、今頼ってもいい?」
みるとんがそう呟き、ぐりげんのシャツの袖をキュッと掴んだ。
「……おう。なんだ?」
ぐりげんが問いかけると、みるとんは少しだけ顔を近づけ、悪戯っぽく、でもどこか切なさの混じった笑みを浮かべた。
「もう少しだけ、このままでいさせて」
ぐりげんは何も言わず、ただつかまれた袖ごとみるとんの背中に手を回し、優しく引き寄せた。二人の隙間がなくなると、互いの鼓動がはっきりと伝わってくる。
「……ずっとこうしてても、いいけどな」
耳元で囁くぐりげんの声に、みるとんは肩を揺らして小さく笑い、そっとぐりげんの胸元に顔をうずめた。静かな部屋の中で、二人だけの時間がゆっくりと流れていった。
コメント
1件
お疲れ様です、読み終えました。 配信が終わって静かになった部屋の空気感が、すごく丁寧に描かれていて好きです。画面越しの賑やかさから、二人だけの時間に切り替わる瞬間の温度差が、みるとんさんの耳の赤さや、袖を掴む小さな仕草にじわじわと滲んでいて…。頼っていいと言われて「もう少しだけこのままで」と返すみるとんさんと、何も言わずに背中に手を回すぐりげんさんの、その距離の取り方が本当に素敵でした。 続きがとても気になります。素敵な物語をありがとうございます🌷
らーゆ
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#コウリオ
na_chan
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