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中学3年生の冬。

縋る思いで買ってもらった綺麗なドレッサー。

大きな鏡にたくさんのコスメが収納された棚。

この空間が大好きだった。

今はここに座るだけで顔を見なければならないという嫌悪感がある。

嫌々、自己満足のメイクを完成させ制服を着た。

海に行く前に彼女と共に学校へやらなければならない事がある。

これはただの遊びであって本気にしている訳では無いのだけれど。

リュックに必要な荷物を詰め込み背負う。

ローファーに足を入れ姿見の前に立った。

そこに写っていたのはただただ綺麗なだけの人間だった。

ただ私はその人物がとても憎くて堪らなかった。

玄関の戸を開け自転車のかごにリュックを置く。

どさっという音が静まった街に響く。

鍵を開けサドルに股がる。

少しだけ動かして隣の家の前に止まった。

しばらくして彼女が家から出てきた。

私と同じ制服を身にまとった彼女。

「行こっか!」

と誇らしそうに言う。

私は無言でペダルを漕ぎだした。

朝の風は夏であろうと涼しかった。

何処へでも行けそうなほどの爽快感。

私の背中に羽が生えているようだった。

夏の匂いが私の身に纏う。

ふと振り向くと彼女は上を見上げている。

私も真似して上を向くとそこにはただ青い空が永遠の彼方までにも広がっているようだった。

絶対に終わることの無い空の青さ。

無限の空間にいるかのような気分になる。

彼女は私に問う。

「なんで地球は丸いのかな、」

私は答える。彼女の興味をそそるように。

「なんでだと思う?」

彼女は少し考える素振りを見せた。

懸命にペダルを漕ぎながら。

「やっぱり世界は無限に広いことを知らせたかったのかな。」

そうしてまた空を見上げる。

「私は誰も端に行かないようにだと思うけどね。」

少しの寂しさを胸に浮かべながら俯いた。

彼女は覚えていないのだと悲しくなる自分がいるみたい。

「答えなんて無いんだろうけどね。」

私は付け足すように彼女を見た。

「そうだろうね、」

じっと前を見ている彼女が少し大人に見えた。

世界の全てを知っているみたいにただ遠くを見つめて。

そんなことある訳ないのに。

愛という名のいにしえよ

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