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パーティー🎉
「一条くんの快挙を祝して、乾杯!」
グラスが一斉に掲げられ、シャンパンの泡が弾けた。
煌びやかなホテルの一室。営業部の面々と役員たちで賑わう祝賀パーティー。
その中心には、もちろん颯真がいた。
スーツ姿も板についていて、上司やクライアントに囲まれて笑っている。
誰が見ても「成功者」そのものだ。
(…なんで俺まで来なきゃいけなかったんだよ)
俺は隅っこのテーブルで、ひっそりとグラスを握りしめていた。
正直、参加したくなかった。
だけど「篠原も来いよ」と上司に強引に誘われ、断り切れなかった。
(居心地悪すぎる…帰りたい)
颯真の笑顔が、どうしても目に入ってしまう。
華やかな光の下で輝いているあいつを見ると、自分の小ささが際立つ気がして胸が痛んだ。
「……飲むしかないな」
テーブルのシャンパンをぐいっと飲み干す。
ひと口、ふた口。すぐに空になって、次はワインに手を伸ばした。
乾いた喉にアルコールが流れ込むたび、心の中のざらつきが少しだけ和らぐ。
気づけば、周りの景色が少し滲んでいた。
「…篠原くん?」
不意に、すぐそばから声がした。
顔を上げると、颯真が心配そうに俺を覗き込んでいた。
「大丈夫? だいぶ飲んでるみたいだけど」
「あんたに、関係ないだろ」
舌がまわらない。声も妙に弱々しい。
颯真は苦笑しながらも、俺のグラスをそっと取り上げた。
「君が来てくれて嬉しかったんだ。無理してるなら、休んだほうがいい」
「……やだ。帰らない。…俺は…っ」
気づけば、言葉が途切れ、体がふらついた。
次の瞬間、肩を支える温かな手。
颯真がすぐそばにいて、俺を抱きとめていた。
「…っ、篠原…」
頬が赤いのは酒のせいか、それとも別の感情か。
朦朧とする意識の中、俺はその腕に体を預けるしかなかった。