駅の前で、俺の名前を呼ぶ声がした。
そっちの方を見ると、おんりーが俺を見ていた。
「久しぶり、おらふくん。」
大学生のおんりーは、まだまだ真面目そうだ。
俺は将来の夢が全く決まらなくて、大学へは行かないことにした。
「久しぶり。」
会うのは、高校卒業以来だ。高校を卒業してから3年も経っている。
「どこか行きたいところある?」
おんりーがスマホを見ながら、俺に話しかけてきた。
おんりーが、スマホを見ながら行きたいところを聞くときは、大体行きたいところがあるときだ。
俺は「ないよ。」と返すと、おんりーは一瞬チラッと俺の方を見る。
「ふぅん。」と言いながら俺に背を向けて「俺は行きたいところあるから着いてきて。」と言う。
やっぱ、行きたいところあったんだ。
おんりーが行きたかったのは、昔よく一緒に遊んでいた公園だった。
県外の大学に通っているからか、公園が懐かしく見えるのだろう。
「ここでさ、雪だるまくんと会ったよね。」
おんりーは、サビだらけのブランコに座って話し始めた。俺も隣のブランコに座ると、ギィッとサビた音をたてる。
「懐かしいね。そういえば、そんなこともあったなぁ。」
「そういえばって(笑)忘れたなんて言わせないからね。大変だったんだから。」
雪だるまくんや、奇病の思い出話をしていて、ふと空を見上げると、雲が雪だるまみたいな形を作っていた。ジーっと眺めていると、急に「ふふっ。」という笑い声が聞こえた。ちょっとキーの高い声。おんりーじゃない。
この声に懐かしさを感じる。そうだ、雪だるまくんだ。
「今、雪だるまくんの声が聞こえた気がした。」
そういうと、おんりーは「嘘でしょ?」と笑う。
だけど、俺は必死に本当だ、と伝える。
「俺にしか聞こえないんだよ。」
その言葉でおんりーは「じゃあ、雪だるまくんと秘密の話もできるね。」となんだかロマンチックなことを言い始める。
その言葉にギクッとしてしまう。
確かに、していた。流石におんりーには言えないけど……。
ただ、まだ俺の近くには雪だるまくんがいるんだな、という感覚があった。
コメント
6件
いいね! ねーねー!ドズル社知ってるなら俺の物語に入らない?!