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夕方。配信の片付けをしていた葛葉のスマホが、机の上で震えた。
画面には“Lauren”の名前。
さっき返信したのは……たしか1時間半前。
「やっべ……」
通話を取った瞬間、聞こえてきた声は低く、少し震えていた。
「……なんで返さないの?」
「ごめんって、いま片付けしてて――」
「片付けは後でよくない? 俺より優先すること、ある?」
静かに刺さる声。
怒鳴りはしないのに、胸の奥を掴まれるような圧がある。
「ち、違うって。お前を優先してないわけじゃ――」
「じゃあ返してよ。
“既読つけて1時間以上” って、俺のことどう思ってんの?」
葛葉は慌ててスマホを持ち直す。
「いやほんとに悪い。返す返す。今返してんじゃん」
「返さないと俺、落ち着かないんだよ。
お前が誰といるのか、どこにいるのか考えるだけで頭おかしくなる」
「誰ともいねぇよ。家だし」
「本当?」
「ほんと」
そこでようやくローレンが短く息を吐いた。
安堵が混じるその音に、逆に葛葉の胸が少し痛くなる。
「……お前さ、そんな心配すんなって。俺、どっか行かねぇよ」
「行くよ。言わなきゃすぐ消える。
俺、葛葉のことになるとマジでダメだから」
笑っているのに笑えていない声。
「他のやつと楽しそうに喋ってんのもムカつくし。
俺のこと後回しにされるのもムカつくし。
“1時間以上返事ない葛葉” とか最悪。心臓が痛くなるレベル」
「……そんな重かった?」
「重いよ。だって、お前のこと好きすぎんの俺だけだろ」
「いや俺だって好きだけど」
その瞬間、ローレンの声色が変わった。
「――言ったな? 今言ったよな?
俺のこと好きって?」
「言ったけど?」
「録音しとけばよかった……いや、今もう一回言って」
「は?」
「言えよ。『ローレンのこと好き』って。
言われないと落ち着かねぇ」
ため息をつきながらも、葛葉は小さく呟く。
「……好きだよ。お前のこと」
通話越しに、ローレンが満足げに息を吐く。
「……あーよかった。
なぁ葛葉、今日さ、うち来いよ。今すぐ」
「今すぐ? もう夜だぞ」
「夜だから来いよ。
お前が来てくれないと、また変なこと考える」
「変なこと?」
「“俺じゃなくてもいいんじゃね?” とか。
そんなの耐えられねぇから、さっさと来て安心させろ」
強引だけど、必死で、ちょっと歪んでる愛情。
でも葛葉は慣れ切っていて、結局断れない。
「……はいはい。行きますよ。ちゃんと鍵開けとけよ」
「ずっと開けてある。早く。
来るまで通話切んなよ? 声聞いてないと不安」
「わかったわかった」
「いい子」
通話越しに優しい笑みが落ちる。
葛葉を独占したくて、気持ち悪いほど愛していて、
依存しているからこそ離れられない。
歩きながら、葛葉は少し顔を赤くしながら呟く。
「……ほんと、お前が一番めんどくせぇよ」
「でも好きなんだろ?」
ローレンの声は、静かに確信していた。
「俺も葛葉以外どうでもいいから。
ちゃんと俺だけ見てろよ?」
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ローレンの家につくと、ドアは本当に開けっぱなしだった。
部屋の奥から、低い声が落ちてくる。
「……遅かったな」
葛葉が靴を脱ぐより早く、ローレンが腕を掴んで引き寄せた。
胸元に抱き込まれるように押し当てられ、息が詰まる。
「ちょ、近……」
「近くしてんの。誰と話してた?」
「誰とも。お前と通話してただろ」
「ほんと?」
「ほんと」
ローレンは葛葉の顔を覗き込む。
指先が顎を持ち上げ、逃がさせない。
「……さっき配信でさ」
「ん?」
「お前、ふわっちと楽しそうに喋ってたよな」
空気が一瞬で重くなる。
「あれ嫉妬したんだけど。めっちゃ」
「配信中なんだから普通に話すだろ」
「俺より楽しそうに見えた」
「見えただけだって」
「でも俺、ムカついてさ。
そのあと既読つかないし、返事もねぇし……」
言いながら腕の力が強まる。
葛葉の背中を回り込むようにして抱きしめ、逃がさない。
「……不安で死ぬかと思った」
その声があまりにも本気で、葛葉は胸がちくりとした。
「悪かった。そんなつもりじゃ――」
「わかってる。でも無理なんだよ。
お前が誰かと仲良くするの見たら、理性消える」
ローレンは葛葉の首元に顔を寄せる。
ぬるい息がかかって、葛葉の肩がびくりと跳ねた。
「……っおい、近いって」
「近くしないと落ち着かない」
ローレンの声が甘く沈む。
「嫉妬した分、埋め合わせろよ。
俺だけに甘えろ。今だけじゃねぇ、ずっとな」
言い終わる前に、葛葉の耳の後ろへ指が触れる。
優しく撫でる、けれど逃げられないように固定する触れ方。
「ロ、ローレン……」
「ん、もっかい呼んで?」
「……っ、ローレン」
「いい子。
葛葉が俺だけ見てる声、ちゃんと出てる」
抱きしめられたままソファに押し倒される。
上から覆いかぶさるようにしがみつかれて、息が熱い。
「なぁ葛葉」
目が合う。嫉妬で赤く染まった瞳が、少し潤んでいた。
「俺のこと、不安にさせんなよ。
そしたら……こんくらい甘やかして、離れられなくするから」
「甘やかすって、これ……」
「甘やかしてんの。
葛葉はただ俺に抱きついて、俺だけ呼んでればいい」
ローレンの手が頬を包み、額にそっと触れる。
「俺だけの声、俺だけの目、全部俺に向けて。
嫉妬した分、ぜんぶ返してもらう」
葛葉の喉が震える。
「……重いよ、お前」
「重い方がよくね? 葛葉、そういうの嫌い?」
「……嫌いじゃないけど」
「だよな。
ほら、もっと甘えて?」
ローレンの腕がぎゅっと締まる。
葛葉の胸に顔を埋めながら、落ち着いたように甘え返してくる。
「葛葉……俺のことだけ見てろ。
他はいらねぇから」
その声音に逆らえるわけもなく、葛葉は静かにローレンの背を抱き返した。
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ソファに押し倒されたまま、ローレンは葛葉を逃がす素振りすら見せない。
腕は背中に回され、脚まで絡められて、体温が逃げる隙間がない。
「なぁ、ローレン……そろそろ離れない?」
息を整えながら葛葉が言うと、ローレンは顔だけ上げ、無表情に近い声で答えた。
「……やだ」
「即答かよ」
「さっき嫉妬して苦しかったんだから、埋め合わせしてもらう。
最低でも今夜は離さない」
最低でも、の時点で葛葉は察する。
「今夜どころじゃすまねえだろ、お前」
「よく分かってるじゃん」
ローレンは葛葉の首元に額を押し当て、ゆっくりと息を吸い込んだ。
「……匂い。落ち着く。
葛葉の匂い、俺以外に嗅がれたくない」
「誰も嗅がねぇよ」
「配信で近くにいたふわっちだって、距離近いとムカつく」
「あれ仕事――」
「仕事でもムカつく」
葛葉が言葉を失った瞬間、ローレンは葛葉の腰を抱き寄せた。
そのまま膝の上に抱き上げるように座らせる。
「っ、おい近いって……!」
「近くないと、また不安になる」
ローレンの声は低くて甘く、焦げついた匂いがするほど独占的だった。
葛葉の頬に指を添え、撫でながら続ける。
「なぁ葛葉。
お前が俺以外の名前呼んだり、笑ったり、気ぃ遣ったりしてるの……全部嫌だった」
「そんなん言われても」
「だから今、取り戻すの。
俺のことだけ見て、俺の名前だけ呼んで、俺に甘えて……」
囁くような声が耳を掠める。
「寝かせないから」
葛葉の心臓が嫌な意味で跳ねた。
「え、いや、寝るけど」
「寝かせないって言ってんのに?」
ローレンが顔を上げた。
嫉妬の余韻で赤くなった目が、狩人みたいに光る。
「お前、俺の手の中で眠れると思ってんの?
……無理無理。今日は甘やかす日なんだから」
「甘やかすって言うか……監禁じゃね?」
「監禁でもいいけど?」
ローレンは葛葉の肩に唇を落とし、そのまま耳元に囁く。
「俺の腕から逃げられないって安心しろよ。
今日だけじゃない、明日も明後日も。
嫉妬したら……こうやって一晩中抱きしめて、離さない」
「……ローレン、お前ほんと重い」
「重いくらいが好きなんだろ?」
葛葉は返せない。
否定する言葉が喉で溶けてしまう。
ローレンは満足げに笑い、葛葉を胸に抱き込んだ。
「ほら、もっとくっついて。
落ち着かない。足りない。まだ足りない」
「どんだけだよ……」
「葛葉が一番悪い。
俺に嫉妬させるくらい、可愛い声で笑うから」
ローレンは葛葉の髪を撫で、指を絡め、喉元にそっと触れる。
「眠る気なんてさせてやんねぇよ。
俺だけ見させるから」
その言葉は脅しにも甘やかしにも聞こえて、
葛葉は結局ローレンの腕の中で、逃げられないまま朝を迎えた。
コメント
2件
pixivでも読みましたが最高です!!🙏🏻💞😭