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マルフォイ → 3年生
男夢主(y/n) → 3年生
どちらもスリザリンの生徒
苦手な方は回れ右
ある日のホグワーツ。
この日は天候が悪く、外では雨や風、雷の音が激しく響いていた。
そのため、本来なら外でグリフィンドールとスリザリンの3年生が合同でハグリッドの 魔法生物飼育学の授業を受ける予定が、急遽スネイプ先生の 魔法薬学 に変更となった。
皆が不満気な様子で教室へと向かう中、1人だけは違った。
「ふん。あんな奴の授業を受けるより、魔法薬の知識を身に付けた方が立派な魔法使いになれると僕は思うけどね」
そう言う彼のブロンドの髪からは、高貴な家柄であるイメージを強調させるようだった。いつも彼の傍いる体の大きな男子生徒2人も、その言葉に便乗している。クラッブとゴイルだ。
3人は自分達以外のスリザリン、グリフィンドールの生徒を小馬鹿にしながら気取った態度で廊下を進む。
それから教室に入ると、3人は横並びでクラッブとゴイルが彼を挟むようにして座った。クラッブが話を持ち出そうと口を開いたその時、後ろから聞き覚えのない声が彼の名前を呼んだ。
「マルフォイ、そこ…俺が先に取っておいた場所なんだけど」
マルフォイはその言葉に、ゆっくりと振り向く。そこには、同じスリザリンのローブを着た、黒髪で瞳は茶色味の強い色白な男子生徒が立っていた。その生徒は、机の上を指差すと続けて言う。
「ほら…そこに俺の羽根ペンが置いてあるだろ?」
マルフォイは横目でチラリと机の上に置いてある羽根ペンを見て、再び視線を男子生徒に戻す。
「おや、見えなかったよ。これは悪いことをしたな」
と微かに笑みを浮かべながら言いつつ、席を立つ気配はない。隣ではクラッブとゴイルがくすくすと笑っている。
それに戸惑う男子生徒をしばらく見つめると、マルフォイは突然尋ねた。
「君、名前は?」
男子生徒はその言葉に え? と驚いたように声を漏らすと、少しの沈黙を挟んで答えた。
「…y/n」
その名前を聞くと、マルフォイは立ち上がって席を譲った。クラッブとゴイルは、普段なら絶対にしないマルフォイの行動に驚き、顔を見合わせる。
「y/nか…初めて聞いたな」
低く笑いながらそう言うと、y/nの肩をポンポンと軽く手で叩く。
「これから仲良くしよう。y/n」
マルフォイはそう言い残して、少し離れた空いている席にクラッブとゴイルを連れて移動して行った。
「おい、どうして席なんか譲ったんだよ?」
ゴイルが不思議そうに問いかけると、マルフォイはy/nの方を見ながら言った。
「アイツ…なんだか妙に惹かれるんだよな」
授業後。
y/nは教室を出て、友人と一緒に寮へ戻った。
戻っている最中も、斜め前を歩いていたマルフォイとよく目が合うような気がしたが、特に気にする事もなくこの日は終えた。
だが、その翌朝からやけにマルフォイが絡んでくる。と言っても、y/nの事をからかったり、小馬鹿にするような発言ばかり。
そんな事を繰り返されるうちに、初めは我慢できていたy/nもだんだんと鬱陶しく感じるようになり、次第にマルフォイを避けるように。
マルフォイは、自分がy/nに避けられている事を悟った時、自分でも気が付かないほど苛立ちよりも焦る気持ちの方が大きかった。
y/nがマルフォイを避けるようになって1週間が経った頃の休み時間。マルフォイがクラッブ、ゴイルと共に廊下を歩いていると、そこにはちょうどy/nが居た。だが、目が合うとy/nは友人を連れてその場を離れようとする。その時、マルフォイは咄嗟にy/nの腕を掴み、
「待つんだ」
と言い放った。
y/nが少し驚いたように な、何? と返すと、マルフォイは小さく呟いた。
「…最近、僕を避けているだろう。どうしてだ?」
予想外の言葉に、y/nは目を見開いて硬直する。
「どうしてって…お前が俺の事を馬鹿にするからだろ?」
「毎日そんな事されたら、誰だって避けるに決まってる」
マルフォイはそれを聞いて、唇を噛み締めた。そして、ゆっくりと口を開く。
「だって…そうでもしないと、君と話せないから」
マルフォイが言い終えると、その場には長い沈黙が流れた。
恥ずかしそうに耳を赤くしているマルフォイと、驚きを隠せない様子のy/n。そしてクラッブとゴイル。
「え?それって…どういう…」
y/nが困惑しながら尋ねると、マルフォイは顔を真っ赤にしてy/nの顔を見る。
「っ…こっちに来い!」
そう言うと、足早に人気の少ない廊下へと向かって行った。
y/nはその場に残されたクラッブとゴイルの方を気まずそうに見た後、マルフォイを追いかけるように去って行った。
夕日が差し込み、誰もいない廊下に来ると、マルフォイは深呼吸をした。
それから数秒遅れでy/nもやって来た。
「…なあ、さっきの話…」
y/nが軽く息を切らしながら言いかけると、マルフォイは大きく咳払いをして遮った。そして、ローブを整えながらポツリと話し出す。
「…僕は、ただ君と話したかっただけなんだ。だけど、普段クラッブとゴイルとしか話す相手がいないし、どう話しかけたらいいのか分からなくて」
「だから…ああやって君に絡んでた。…すまない、もう君には話しかけない」
マルフォイがそう言い残して寮へ向かおうと歩き出した時、y/nが呼び止めた。
「そういう事なら、これからは俺の方から話しかけてやる。」
「そうすれば、お前だって話しやすいだろ?」
このy/nの言葉を聞いた時、マルフォイの瞳が驚きで揺れた。
「…いいのかい?」
y/nは静かに微笑むと、マルフォイの手を取って答えた。
「勿論。…これからは友達だ」
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