「」葛葉
『』叶
ご本人様とは一切関係ございません。
-葛葉side-
あー。もやもやする。
・・・叶の様子がどうもおかしい。どうおかしいかっつーと、なんとなくよそよそしい。
俺と叶は良き相棒、戦友としてこれまでやってきた。くろなんの収録とかの仕事はもちろん、仕事以外も空き時間があれば気軽にお互い誘って遊んだりする仲だった。
なのに、2週間くらい前から、か?叶が急によそよそしくなった。空き時間もスマホばかり見て、仕事終わりもさっさと1人で帰ってしまう。これまでは暇な時間があればうぜえくらい絡んできたのに・・
あ、いや別に絡んでこなくなってむしろ良かったけど!別に全然平気だけど!
でもさ、急に態度が変わっちゃったもんだからさすがに俺なんかしたかなぁって思って。考えるんだけど思い当たる節がありすぎて(遅刻とか)もはやわからないまであるんだよなぁ。。
今日も収録終わりに叶からは特に声もかけられずに1人でスタジオを出てきた。
あー。なんかこのまま帰ってもモヤりそうだから買い物でもすっか。
(1人で買い物中)
・・なんか今日はあんましピンとくるものがなかったな。まぁそんな日もあるっしょ。足も疲れたし、帰るか、、、
ん?あれは、、、
視線の先に小さな花屋っぽい店から出てくる叶。女性の店員からおそらく購入したのであろうずいぶんとデカい花束的なものを渡され笑顔で受け取っている。
俺はあんな店ひとりじゃ入れねぇな、、やっぱ叶ってすげぇよな。
てかなに?あのデカいの。花束っぽいけど、、、
距離が遠くてよく見えないが、心なしか叶の頬が赤くなっているようにも見える。
その時俺は全てを悟った。
・・そうか、叶は好きな人ができたのか、あるいはもうすでに付き合ってる人がいて、もはやプロポーズとか。
あ〜なるほどねぇーなるほど、なるほどね。それで最近、、なるほどなるほど、、、、
・・・あ?・・俺なんで泣いてんだ、?!
知らぬ間に目から涙がこぼれていることに驚く。
あ、そうか、俺は叶に何にも相談されなかったのが残念なんだな。
あいつ、リスナーにも俺にしか話してないことがあるって公言してたのに、、、
叶はこちらに背を向けており俺の存在には気づいていない。よく見ると初めて見るピシッとしたジャケットを着て、、、ん?髪型も違う?もしかして収録終わりに美容院行った?まじ?そこまでする?
「・・かっこいいな、あいつ。」
気づけば声に出ていた。幸い大通りの真ん中で俺の小さな声に気づいた人間はいないだろう。
・・は?俺今かっこいいっつった?確かにたま〜にかっこいいと思う時もあるよ、ライブとかね、でもあの叶がそこまでする相手って、それって、、、それって、、、
何故か涙が溢れて止まらない。
俺はなんでこんな泣いてるんだ?そんなに叶に相談されなかったのがつらかった?ほんとか?ほんとにそれだけか、、?
・・・いや、ちげぇな。俺、あいつのこと好きだったんだ、、、
ハハッ、、こんな形で自分の好きなやつに気づいて、しかももうすでに振られてるって、、笑えるよ、ガチで、、、
ふと周りの視線を感じ、自分が大通りの真ん中で静かに涙を流していることに気づいた。
やべっっ
慌てて涙で濡れた顔を隠すように下を向き、近くの公園に逃げるように入り、ベンチに腰を下ろす。夕暮れ時で遊んでるちびっこどももおらず、公園には幸い俺1人だった。
叶、めちゃくちゃ幸せそうな顔してた。俺といる時よりも遥かに幸せそうな顔。
あいつをあんな顔にさせるやつがいるのか、すげぇな、、、
どんなやつなんだろう、、やっぱりはちゃめちゃに美人なんだろうか、、
そりゃそうだよ、こんなヒモ希望のニート吸血鬼よりよっぽどいいだろ。当たり前だ。
わかってるのに涙が止まらない。
あー。俺、こんなにあいつのこと、、
叶は優しいし責任感も強いから、明日も笑顔でスタジオに来るだろう。
なんなら明日聞かされるんだろうか、、、
好きな人ができたとか、プロポーズしたとか、、
俺どんな顔で明日聞いたらいい、なぁリスナー教えてくれよ。
俺、「おめでとう」って笑顔で言えるかな、、、
どれくらい経ったのか、気づけばあたりは真っ暗になっていた。公園の街灯が泣いている俺を慰めるように弱々しく照らしている。
・・さみぃし帰るか、、また家で考えよう。
帰り道も俺の目は壊れちまったのかと思うくらいに涙は止まらず、なんなら鼻水も出てきてぐしゃぐしゃだった。あいにくハンカチとかティッシュとか俺持ってねぇんだよな、、最悪。
まぁもう少しで家だからいっか、、、
マンションにつき、エレベーターに乗る。エレベーターのドアに映る俺は涙と鼻水でぐしゃぐしゃで、死ぬほどブサイクだった。
自宅の階に着き、エレベーターのドアが開く。歩き出そうとして異変に気づく。
・・俺の部屋の前に誰かいる、?
暗くてはっきり見えないが、人影らしきものがおそらく俺の部屋のドアの前に立っている。
・・は?不審者?ストーカーとか、?
え、こわっ、、警察か?違うか、ああこんな時どうしたらいい?!
叶に連絡か?、あ、違う叶はもう、、、
ごちゃごちゃの感情のままゆっくり進む。俺の部屋まであと数メートル、つまり不審者ともあと数メートル。その時だった。
『葛葉?』
馴染みのある声で名前を呼ばれた。
『葛葉!遅いよ〜何時間待ったと思ってんの、、、って葛葉泣いてる?!どうしたの?!なにかあった??おいで、くずh』
「触んなっ!!!!」
『・・っ葛葉どうしt』
「お前、その、相手ができたんだろ、相手に悪いとか思わねーのかよ」
『相手ってなn?』
「だから!!!好きなやつだかなんだか知らねぇけど、できたんだろ!!お前がでかい花束持って歩いてるとこ見たんだよ!最近よそよそしいし、あんまり俺と遊んでくれないし、そういうことだろ、、だから、お前もう帰れよ、、」
言いながら涙が溢れて最後の方はうまく言えなかった。
なんで俺は叶にキレてるんだ、、ほんとは笑顔で「おめでとう」って言いたかったんじゃなかったのか、、
ああもう、なにもかも上手くいかない、、こんな言い方しかできなくて、本当に最低だ、俺は。。
『花束ってこれ?』
そう言われ顔を上げると数時間前に叶が抱えていた花束が目の前にある。あれ、なんでまだそれ持って、、
困惑していると叶が少し怒ったような口調で続けて言った。
『・・僕の話聞いてくれる?たしかに好きな人ができた、それは合ってるよ葛葉。』
「そうだろ、だかr」
『僕の好きな人はお前だよ』
「・・はっ?!」
『だから、僕が好きになったのは葛葉だって言ってんの!最近よそよそしかったのは謝る、葛葉にバレそうで嫌だった』
「は、えっ意味わかんねぇんだけど」
『ほんとに意味わかんないって思ってる?ほんとのほんとに?』
「・・・わかります」
『だよね?とりあえず家に入れてくれない?凍えて死にそうだよ』
「・・わかりました」
ガチャン
『はぁー。ほんとはもっとロマンチックに言いたかったのに、、誰かさんのせいで台無しだよ』
「・・その、悪かったよ、早とちりしt」
『ほんとに悪かったって思ってる?』
「・・思ってます」
『じゃあ返事聞かせてくれる?』
「・・返事?」
『そりゃ、僕からの告白に対する答えに決まってるじゃん』
「・・・だよ」
『ん、、葛葉なんて??』
「・・だからぁ!!俺も好きだっつってんの!!!!!」
恥ずかしくて溶けそうでぎゅっと瞑った目をそろっと開けると、見たことないくらい笑顔の叶が目の前にいた。
『嬉しいっ!!!!』
そういう声が聞こえると突然ぎゅっと抱きついてくる。
普段なら引き離すが、今はこのままでいいかと思う。抵抗しない俺を見て、叶はもっと強い力で抱きしめてくる。
「・・苦しい」
『あっごめん!葛葉!』
ぱっと離し、ふわっと笑う叶。
「・・てかまだちゃんと言われてないんですけどー?」
『何回でも全然言うよ、葛葉愛してr』
「だあぁ!!やっぱり言わなくていい!!!」
『なんでだよ、葛葉が言えって言ったんでしょ』
「なんでもだ!」
そう言いながら今度は俺から叶を抱きしめる。叶は驚いたようで、一瞬動きが止まったが、優しく包み込むようなハグをしてくる。
『ねぇ今日美容院も行ってきたの』
「知ってる」
『服も新しく買ったよ』
「知ってる」
『ふふ、似合ってる?』
「・・・正直かっこいいと思った」
『・・えっ葛葉?!』
「なんだよ、お前が言えっつったんだろ!」
そこまで言い合いながら、目が合い、我慢できずに互いに笑ってしまう。
『葛葉、今日泊まっていい?』
「泊まらせてください、だろ?」
『はいはい、どうせ僕が起こさないとくーちゃん起きれないもんね』
「んなことねーし、てかちゃん付けやめろ」
『照れちゃって。お風呂一緒に入ろうね?』
「入らねーよ!」
そんな会話をしながら、俺は頭の中で叶に貸せる部屋着があったかどうか考えていた。
「てか叶お前、よくこんなでけぇ花束持ってきたな?」
『だって多い方が気持ちが伝わるかなって思ったんだもん』
「・・あー。てか俺ん家花瓶とかねぇけど。」
『知ってる、だから花瓶も買ってきた』
「天才だな、お前」
『でしょ』
どうやら俺はこの人間に愛されちまったらしい。
『お風呂浸かりたいなぁ〜葛葉入浴剤あるー??』
浮かれたような声で風呂場からあいつの声が聞こえる。
俺は聞こえないふりをして花瓶に水を入れる。
今日は俺にとって間違いなく人間界に来て1番良い日だ、人間はこういうのを幸せって呼ぶんだろう。まぁあいつには絶対言ってやんねーけど。
「・・これからよろしくな、叶。」
と小声でつぶやいてみる。
『んー?なんか言ったぁ?葛葉』
とせっせと風呂の準備をしているやつの声が聞こえる。
「なんも言ってねーよ!勘違いすんな」
『なんだよ〜、葛葉バスタオル借りていい?』
「あーはいはい、行くわ」
今日くらいは少し正直になってもいいのかもな、なんて思いながら俺も風呂場に向かう。もう涙は止まり、かわりに頬が緩んでいるのが自分でもわかる。
『くーちゃん、今日一緒に寝ようね?』
「・・まぁ、良いけど」
『・・?!くーちゃん?!』
「なんだよお前が言い始めたんだろ!!」
『・・そんな素直なの葛葉じゃないみたい』
「なんなんだよお前、、」
『でも僕めちゃくちゃ嬉しいし、幸せだよ』
「・・っお前はすぐそういうことを言うな、頼むから」
『えー?』
こうして夜は更けていく。
翌日二人して寝坊し、マネージャーから互いのスマホに鬼電が来るのはまた別のお話。
おしまい
コメント
4件
好きすぎてハートめっちゃ押しちゃいました…ありがとうございます😭
すき…………
ありがとうございます✨そう言って頂けてとても嬉しいです😭