ハッピーバースデー物語(短編)

「ハッピーバースデー！私！」

雪のちらつく街の中

一際大きな声が街に響き渡る

今日は私の誕生日！

そんな日に家にいるなんて勿体ないよね！

手袋をして、マフラーを巻いて、コートを羽織る

最後にカイロをポケットに入れたら準備万端だ

「誕生日～♪誕生日～♪」

雪も、街灯も、家の光も

全て私を祝っているようだ

「さいっこう！！

────あいたっ！？」

楽しさに夢現をしていたら、

いつの間にか街灯に頭をぶつけていたらしい

「痛ぁい…。まぁでも、許してあげよう！

なんせ今日の私は誕生日だし！なんでもできるもんねー！」

通りすぎる人々は皆、彼女を避けて通りすぎていく

顔をしかめる者、哀れみの目を向ける者

なぜ、彼女がそんな目で見られているのかって───？

当たり前だ。

街中で大声で独り言を言っていたらヤバイ人だろう