「真似っ子」
(神奈川×東京)
「ん…」
目を開けるといつもの部屋の天井だった
「っ…」
身体を起こすと、腰の辺りが痛い
そういえば、昨日は仕事で疲れてそのまま寝たんでした…
東京は記憶を遡りながら状況を把握する
まだ重だるい身体を引きづりながら部屋を出る
下の階からは、いつもの賑やかな関東メンバーの声は聞こえなかった
階段を降りてドアを開ける
「………」
みんな仕事…ですか、
普段は千葉や埼玉の喧嘩を止めるのが大変だが、それが無いのも少し寂しい
台所に向かい、冷蔵庫からお茶を出す
冷たい容器は寝起きの体を起こしてくれた
お茶を注ぎながら、明日の予定が頭を巡る
明日は……
関西に資料届けて、会社で書類作成……あ、祖国さんから預かったパソコン返さないと……
それから海外都市とミーティング……
考えるだけでも頭が痛くなるほど忙しい
せめて今日はゆっくりしないと、
結露がついているコップを持ち、ソファーに座る
これだけ部屋が静かだとなんだか落ち着かない
東京は立ち上がるとシャワーを浴びに洗面所へ向かう
服を脱いでお風呂場に入る
「冷たっ」
お風呂場のタイルは冬場の気温ですっかり冷えていた
軽く身体を洗い、タオルで拭く
「…あ」
目に入ったのは神奈川がいつも着ているパーカーだった
洗濯して綺麗に畳んで置いてある
「……」
下着を身につけ、置いてある服を見つめる
東京は基本的に仕事が日常なため、ワイシャツにネクタイが通常である
だからかラフな服装に少しだけ憧れがあった
少しだけ…
そうして手に取ったパーカーの袖に腕を通した
ネックホールから頭を出すと、持ち主である神奈川の香りがした
着てみてすぐに体格の違いを実感する
袖はブカブカで、丈が膝まである
…わかってましたけど
鏡の前に立ってみるとダボダボとしていてなんだかだらしが無い
着心地は言いものの、全くもってサイズが合わない
もう脱ごうと思い、服をたくしあげた時だった
「俺の真似っ子?」
急に発せられた声にびくっとはねる
後ろを向かなくても何となくわかる
今の状況において1番会いたくなかった人物…
振り返るといつも通りの仕事帰りの神奈川が立っていた
「えっと…」
訳を話さないと…!誤解されます、!
このままだとただただ自分の服を勝手に着ている隣県として他県に知れわたってしまう
「ち、違うんです、!あの…、ちょっとこういう格好をしたかったっていうか…その…」
あたふたと話す東京を前に神奈川はご機嫌である
「それで俺の服を?」
「…すみません、そこに畳んであったので、つい……」
穴があったら入りたい東京とにこにこの笑顔の神奈川
「ほんとごめんなさい…洗濯して返しますから、」
深々と謝罪する
「いいよ
そんな事しなくてもそれより似合ってるね」
しゃがんで顔を覗き込む神奈川
「え」
意外な言葉に東京は顔を上げた
彼はどこをどう見てそう思ったのかとても不思議だというように神奈川の顔をまじまじと見る
「ほんとお前はかわいいね」
「へ?」
意味がわからない
東京の頭の中は混乱状態だった
「それよりさ…」
そう言って神奈川はしゃがんだままパーカーの裾を持ち上げる
「!?
ちょっと、!」
まだズボンを履いていなかった事を思い出し、その腕を掴んだ
「これ下履いてるの?」
「………し、下着は…一応…」
恥ずかしさのあまり東京は俯く
「へぇ」
神奈川はそれだけ言うと掴んでいる東京の手のことはお構い無しにお腹の辺まで服をめくった
「!??!!?」
急な行動に東京は固まる
「ほんとだちゃんと着てる」
そう言うだけで離そうとしない神奈川に東京は焦るし、何より恥ずかしさが勝つ
「っ…もう脱ぐので、手離してください」
「え?」
「え?」
東京の頭はますます混乱した
なんで嫌そうな顔するんですか…!
しゃがんだまま見上げてくる神奈川は脱ぐなという目で見つめてくる
そしてすっと立ち上がると東京が着ている神奈川の服の袖口を引っ張った
「わっ
か、神奈川、?」
何も言わずに袖を引っ張り連行してくる神奈川は何を考えているか東京にはわからない
連れてこられたのは彼の部屋だった
「…あ、の?」
後ろからそっと声をかける
もしかして怒ってるのでしょうか、
ゆっくり振り向いた神奈川はいつもの笑顔で東京に言った
「そんな姿見て、何もしないと思った?」
「え…?」
神奈川は部屋の中に東京を連れ込むとゆっくりと扉を閉めた
コメント
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神奈川×東京ぅぅぅぅ!待ってましたぁぁぁぁぁぁあ!