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喧嘩

(千葉×埼玉)

(南関東のお話)






「はぁ〜?!?!

まじお前のそういうとこだるいんだけど!」

「お前が言ったんだろ!?

つーか俺のせいにすんなよ!!」

「別にしてませ〜ん

都会の落ちこぼれの実力くらいわかりま~す」

「っんだとてめぇ!!!!」

言い合い相手に胸ぐらを掴まれる

そのくらい酷いことを言った自覚はあった

「すぐ暴力に訴えんのだっさ〜」

悪いと思いながら口から出てくる言葉は気持ちとは真逆だ

「っ…勝手にしろよ」

呆れたのか…疲れたのか…

千葉は手を離すと部屋を出ていった

「……」

心にあるのは罪悪感と自己非難の気持ちだけ

それなのに追いかけたり謝ろうとは思わなかった

きっと思っている以上に俺って子供なんだろうな…

関東家で千葉と埼玉が喧嘩するは通常運転であるが、今日は一段と酷かった

というより、仲直りは無理と思うほど悲惨なものだった

きっと神奈川と東京が帰ってきたら仲直りさせられんのかな

めんどくさいとか嫌とか以前に自身の小さなプライドの問題だった

幸い、今2人は仕事である

残業で遅くなってほしい…帰ってきたらなら何も言わないで欲しい…察してほしい…

ごちゃごちゃ考えていると頭が痛くなる

気分転換に外に出かけよう

埼玉はカバンに最低限の荷物を詰めて家を出ていった

外は冬場の気温

言い争いのせいで暑くなっていた気持ちは冷たい風によって冷やされる

どこいこっかな…

とりあえず遠くまで

帰るのが夜になるほど遠くまで

そう思いながら1歩ずつ歩いていく

家から離れる足は軽いが気持ちは重いままだ






どこまで歩いただろうか

海岸の砂浜まで来ていた

帰るまでにはきっと1時間はかかる

そのくらい歩いた

「ここの夕日…こんな綺麗なんだ」

“ピロリ”

一通のメッセージに嫌な予感がした

きっと関東のやつからだろう

わかっていた

既読をつけないように長押しで画面を開く

神奈川からだった

“また喧嘩したの?随分酷くやったね

千葉も家に居なくて、連絡もつかないんだよね”

「え…」

“千葉も家に居なくて”

という言葉が目に焼き付いて離れない

文章の続きを読まずにスマホを閉じる

家出…

きっとそうだ…!でも、

あの東京をあそこまで慕う千葉が関東の家を、離れたことが今までにあっただろうか……

反射的に体が動く

一体どこに…?!

俺と一緒で帰らないつもり…?!

そもそも俺がこんな所まで来たから、!!

喧嘩なんてしなかったら…、

もっと仲良くできたら…

隣県として……ライバルとして…

後悔が頭を駆け巡りながら目尻が熱くなる

走っているから頬をつたることはなかった

どこ…!どこ……どこ!

心で叫びながらも辺りを見渡す

落ち着こう…そもそも近くに居るわけないじゃん…

家出ならどこか遠いとこまでいくのが普通だ

それに元はと言えば自分も家出をしている

同じ考えならきっと帰ってくる…はず…

それでも焦る気持ちは止まらなかった

整理がつかない感情を押し殺しながら海を見つめていると

どこからか自分の名前を呼ぶ声が聞こえる

“埼玉ーーー!!”

「?!」

声からしてわかる

千葉だ

今会うのはなんだか気まづい

すぐにその場を離れようとするが何故か足は動かない

「埼玉っ!!」

声がすぐ後ろで聞こえた

振り返るのが怖くて前を向いて”何”とだけ答える

「”何”じゃねぇだろ!勝手に家飛び出しやがって!」

「それは千葉も同じじゃん」

「はぁ!?俺はお前を探しに来たんだよ」

「え」

探しに来た

予想外の言葉に振り向く

千葉は真っ直ぐ見つめてきた

「え…は?

お前…わ、わざわざ?」

カタコトになりながらも聞くと千葉は少しうつむき加減に言った

「…居場所、神奈川に聞いたら…拗ねた埼玉なら多分ここら辺だって……」

「さすが神奈川さんだわー」

そう言いながらも今にも逃げ出したい

千葉はさっきから様子が変だし、行動がバレバレなのも恥ずかしい

「…心配すんだろ………なんか言ってから出てけよ」

「は?!」

確かにそう言った

小さすぎる声だったけど

「べ、別に心配されたくて家出てきたんじゃないけど?!普通に居心地悪かっただけ!」

「…そうかよ」

いつものように喧嘩になると思ったが千葉から返ってきたのは一言だけだった

「……」

「……」

なんとも言えない空気が潮風によって流れていく

こいつなんでさっきからこんな感じなの!?

まじ意味不明…

でも………………

「ごめん…俺も…言い過ぎ…た」

やっと正直な気持ちが話せる

「…いや俺こそごめん」

互いに素直に謝罪する

「…あ、そーだ!今度千葉の観光地連れてってよ新しい施設できたって聞いたし…!」

話を逸らそうと必死になるがそれはきっと目の前の相手も同じであった

「そ、…うだな!お前が行きたいなら仕方ねぇな…!!」

…このままじゃ間がもたない!!

そう思っていると後ろからまたも名前を呼ぶ声がする

振り返ると心配そうに駆け寄ってくる東京とやれやれと言う顔でその後ろを追う神奈川だった

「ふ、2人とも…わざわざ…」

「さ、さいっ…たま!よかっ…た……はぁ…」

相当走ってきた事が全く整う気配がない呼吸から分かった

ごめんと言う代わりにその背中をさする

「で、仲直りした?」

それに比べ神奈川は落ち着いていて、喧嘩の事情を千葉に聞く

こいつある意味気遣いできてんのか…できてないのか…

「まぁ…」

いつもならここで”東京さんに迷惑かけんなよ”と突っかかってくる千葉も今日は何も言わなかった

「そう

じゃ、帰ろっか」

そうして4人揃って歩き出す

しばらく行った所で東京がおずおずと口を開けた

「あの、…そういえば喧嘩の原因って…」

「それは…」

「それは…」

千葉と埼玉は息ぴったりだ

“お千葉が俺のねぎ食べたから!!!”

“ダ埼玉が俺のプリン食べたんっすよ!!”

神奈川と東京が顔を合わせる

「へ?」

2人の声もまた息ぴったりだった



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